心洗われる静かな祈りや
透明なハーモニー
ブログの更新がしばらく途絶えてしまいました…。
昨日はクリスマス。
そこで、今回はクリスマスにふさわしい音楽をご紹介したいと思います。それは20世紀のフランスの作曲家、モーリス・デュリュフレの『グレゴリオ聖歌による4つのモテット』です。
デュリュフレはオルガン作品をはじめとする声楽作品や宗教音楽を書いた作曲家で、作品数こそ多くはありませんが、その音楽は真摯な祈りや清新な味わいに満ちています。デュリュフレといえば、現在では何といっても『レクイエム』ですが、この作曲家を知るという意味では『4つのモテット』のほうがむしろ親しみやすく、入りやすいかもしれません。
タイトルどおり、全体は4曲で構成されていて、通して聴いてもせいぜい7~8分くらいの短い作品です。しかもグレゴリオ聖歌をテーマにするくらいですからドラマチックな激しさや高揚感はありません。その代わり心洗われる静かな祈りや透明なハーモニーが音楽全体に充満しているのです。
前奏なしで始まる第一曲の『いつくしみと愛のあるところ』は穏やかで、まさに慈愛に満ちた合唱の美しいハーモニーが静かに広がっていきます。
第二曲の『すべてに美しく』は女性パートが中心で、第三曲の『あなたはペテロである』は力強く、決然とした表情が印象的です。
第四曲の『かくも寛大な』は喜びや哀しみの感情が珠玉のように溶け合いながら、様々な表情を照らし出しつつ消え入るように曲を閉じていきます……。
どれもこれも、クリスタルのような透明な響きが魅力的で、時の流れを忘れさせる豊かなハーモニーに魅了されることでしょう。
演奏はゲイリー・グラーデン指揮、聖ヤコブ室内合唱団(BIS)が高い完成度と美しい響きで作品の魅力を心ゆくまで堪能させてくれます。
先ほど述べた透明感のある美しいハーモニーを、これほど実感させてくれる演奏は他にはないでしょう。心洗われるとは、このような演奏を指して言うべきなのかもしれません。