2014年10月21日火曜日

モンドリアン 「赤・青・黄・黒のコンポジション」











宇宙の調和は
抽象でなければ表現できない

 絵から無駄な要素をすべて取り除いていったら、いったい最後には何が残るのでしょうか…。
 一見、無謀とも思えるこのような試みを実際に絵で実現しようとした人がいます。それがピエト・モンドリアンでした。彼はアムステルダム国立アカデミー卒業後、ゴッホやスーラの点描画に大きな関心を抱き、色彩と線の持つ力を実感するようになります。
 その後、ピカソやブラックらのキュビスム絵画が幾何学形態への展開や発展を絵のテーマとすることに大きな衝撃を受け、一気に抽象絵画へと向かうようになります。しかしそれも後年の極めてシンプルな絵画へと移行する過程でしかなかったのでした…。

 「宇宙の調和を絵画で表現しようと思えば、どこまでも単純明快になるし、不要な線、色彩を排除していかなければならない」。 このようなポリシーのもとに、彼は年を追うごとに幾何学的で抽象的な表現を突き詰めていくようになります。初期は抽象的なかたちの集合体で羅列されていたものが、晩年には「これは記号なのか……」と見間違うほどに一つ一つの事物に大きな意味を持たせるようになっていくのでした。
 
 1920年頃からは黒い枠線と限られた色彩で構成された絵がモンドリアンのスタイルとして定着するようになります。そのような中で生まれた「赤、青、黄、黒のコンポジション」は彼自身における真実、秩序、ルールを構築する一つの理想の実現だったのでしょう。



有機的な線と空間表現

 したがって人によっては「何を描いても同じ」とか、「パターンの組み替えをその都度行っているだけ」とか揶揄する人も少なくなかったでしょうし、そのことゆえに様々な苦悩を背負わざるえない状況に陥ったことは察して余りあります。
 しかし力強く安定感を漂わせる黒い枠線や枠内に彩色された赤、青、黄、黒のヴィジュアル表現からは絶妙なバランス感とともに、優美で端正な空間が拡がっていきます。
 単純な線、色彩の配列、組み合わせによって様々なメッセージを伝達することが可能になり、多くの示唆を与えてくれることを端的に絵として示した稀有な例と言えるでしょう。
 ここまでくると、もはや絵画の領域というよりはすでに20世紀以降のデザインの色面分割・色面構成に通じるものがありますね。
 「真実のものは抽象的な表現からしか出てこない」という彼の理念とスタイルはデザインや建築等の様々な分野で多大な影響を与えていますし、先見の明を持った巨人だったのかもしれません…。