2012年12月31日月曜日

テレマン 2つのフルート、2つのオーボエと弦楽のための協奏曲変ロ長調 TWV54:B2






 テレマンはバロックを代表する大作曲家であり、その音楽の魅力ははかり知れません。実際テレマンが活躍していた当時の名声はかなりのものだったようで、事実上当代最高の作曲家と言っても過言ではなかったのでした。しかし、今「テレマン」と言ってもどれだけの人がその作品を知っているのでしょうか?

 今やバッハやヘンデルの後塵を拝し、ヴィヴァルディやスカルラッティに比べても知名度ではかなり後れをとるようになってしまったのですが、作品そのものは素晴らしく本当の意味でバロック音楽の真髄を伝えてくれる作曲家なのです。
 テレマンの特徴としてはバッハにやや似たドイツバロック的な毅然とした雰囲気もあり、ヘンデルに似た大らかで自由な曲のスタイルを持っていたりもするのですが、彼らほどストイックではなく、真に音楽を聴く喜びを素直に伝えてくれるのです。

 テレマンの作品では何と言っても「ターフェルムジーク」が別格的に有名です。この「ターフェルムジーク」は様々な独奏楽器が活躍し、しかも自由な音楽形式で成り立っており、その多様な曲のバリエーションと発想の豊かさには驚かされます!

 今回とりあげるのは「2つのフルート、2つのオーボエと弦楽のための協奏曲」です。これは肩の凝らない良くまとまった逸品ですね!この作品では何と言っても楽器のコラボが優しい対話のように進行し、とても愛らしく親しみやすい雰囲気を作りあげているのです!

 4楽章から成っているのですが、全曲を通してもせいぜい10分少々の作品です。 それでも疲れたときに聴くと、何と優しく懐かしいメッセージとなって語りかけてくれることか……。
 曲の流れ、テンポもよく、テレマンをこれから聴き始めようとされる方にはうってつけの作品かもしれません。

 録音はホリガー(オーボエ)、ニコレ(フルート)、フューリー指揮カメラータ・ベルン他(Archiv)がソリストたちの呼吸の素晴らしさと表情の豊かさ、曲に対する共感の深さで絶品です! 作品の魅力を最大限に引き出した稀有な名演奏と言えるのではないでしょうか!





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2012年12月21日金曜日

ヘンデル オラトリオ「サウル」追加








 「サウル」は以前もお話しましたように、ヘンデルのオラトリオの中でも屈指の傑作ですが、それだけでなく彼のすべての作品を含めても最高傑作の一つと言っていいのではないかと思います。たとえば、冒頭の序曲に続く10分ほどにも渡る民衆の声を表現した壮大な合唱やフィナーレのダビデを讃える合唱等はそれだけでも血湧き肉躍る感じですね! 最近のCDではヤーコブス、マクリーシュ、ブッダイ、リリングと充実した名演奏が相次いで世に出されました。隠れた名曲が再認識される意味でも、これは本当にうれしいことですね!

 ヤーコブスやブッダイの演奏を聴いた時に、当分はこれ以上の演奏は現れないだろうと思っていましたが、そう思ったのもつかの間、今年の後半になってさらに凄い演奏が現れました。それがハリー・クリストファー指揮シックスティーン(coro)の演奏です!

 ヘンデルの「サウル」は音楽的にもストーリー的にも内容が濃く充実した作品ですので、上っ面を撫でたような演奏では到底満足することは出来ません。クリストファーズとシックスティーンの演奏はこれまで「エステル」や「サムソン」、「メサイア」(いずれもHyperion)等のヘンデルのオラトリオの録音があり、たびたび聴いたりもしました。
 クリストファーズの端正な指揮やシックスティーンの抜群の音楽性とテクニックは誰もが認めるところでしょうが、正直言って今まで彼らの演奏で感動したことはほとんどありませんでした。表現があっさりしているというのか、「もっと作品の魂の部分に迫ってほしい……」、という物足りなさをいつも感じていたのです。

 しかし2000年以降録音された最近のディスクはこれまでとは違い、一皮も二皮も剥けた素晴らしい演奏を繰り広げるようになったのです。その代表例がビクトリアの「聖週間のレスポンソリウム集」やヘンデルの「メサイア」、「シャンドス・アンセム」(いずれもcoro)なのですが、かつての録音とは比べものにならないくらい深みを増し、表現にも磨きがかかってきました。

 ところでこの「サウル」は何が凄いのかというと、まず楽器をしっかり鳴らし、豊かで堂々たる響きを生み出していることでしょう!しかも奇を衒わない正攻法なスタイルがとても心地よく、「サウル」の演奏によくありがちな重苦しい雰囲気がまるでありません。基本的にクリストファーズはむやみやたらに大音量で圧倒するのではなく、作品をよく理解した上で自然に導き出された実在感のある響きを実現しているのです。

 「サウル」は決して深刻なドラマではありません。したがって演奏が暗くなってしまうと最後まで聴き通すのが辛くなってしまいます。特に「サウル」は大作だけに、劇中に出てくる様々な音楽的要素がうまく処理されないと音楽の流れが緩慢になってしまうのではないでしょうか。そのような点でクリストファーズの解釈や演出は最高で、最後まで胸をワクワクしながら聴き通すことができるのです!

 そして、シックスティーンの合唱の素晴らしさ! 特に第一部の最後の合唱「栄光に満ちたあなたの名のため」のゾクゾクするような神秘的で透明感の際立つ歌声!! こんなアプローチがあったのかと感心してしまいますが、おそらく中世やバロックのミサ曲や聖歌を真摯に研究し歌ってきた彼らだからこそ、こんなに崇高でしっとりとした表現が可能だったのかもしれません。
 ここだけに限らず、第二部の最後の合唱「ああ、怒りを抑えられずに」、フィナーレの「権力ある英雄よ」等、変幻自在な歌唱スタイルと虹のように溶け合う至純のハーモニーが合唱の奥深さと醍醐味を実感させてくれます!
 また、通常カウンターテナーで歌われることの多いダビデですが、ここではアルトのサラ・コノリーが歌っています。コノリーは繊細で奥ゆかしい表情を見事に表現しており、カウンターテナーではもの足りないと思われていた方にとっても最高の贈り物となったのではないでしょうか。
 とにかく録音、歌、雰囲気どれをとっても最高で、音楽を聴く喜びを改めて実感させられたひとときでもありました。






2012年12月15日土曜日

「森と湖の国フィンランド・デザイン」 



生活に密着したデザイン

Candlestick 6405 FRANCK, KAJ



 最近、北欧のデザインが元気ですね!雑誌やカタログ、街中でよく見かけたりと、日々の生活で眼に入らない日がないと言ってもいいのではないでしょうか? 特にフィンランドのデザインは生活に密着しているというか、デザインやフォルムに無理がなく飽きが来ないように思います。
 フィンランドと言えば、皆さんは何を思い起こされるでしょうか? 「年中寒い国」、「ムーミンの生まれ故郷」、「携帯ブランドNOKIAの国」、「ビレンやニッカネンのようなスーパーアスリートが輩出される国」、「森と湖の国」、「オーロラの美しい国」等々、どれもフィンランドの特徴の一つであることに変わりありません……。

 でも今、間違いなく注目されているのが、「生活に溶け込むデザイン」を生みだし続けているプロダクトデザインにあるのではないでしょうか。中でも「機能性に優れ、シンプルでかつ美しい」というデザインの理想形を実現しているのがフィンランドのガラス食器ではないかと思います。カイ・フランクを筆頭としたフィンランド・グラスアートの伝統は厳しくも豊かな自然と人間性が溶け合って誕生し、今に受け継がれているのです!

 決して強烈な個性をアピールするわけではないのだけれど、ここに確かな存在感、時代を超えて語り続けられるようなモノ作りの原点があるのではないでしょうか。 この展覧会「森と湖の国フィンランド・デザイン」は18世紀後半~1920年代を黎明期、1930年代を躍進期、1950年代を黄金期、196070年代を転換期、その後~現代と時系列で区切り、その時代を代表する作品を紹介しています。

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 フィンランドのガラスや陶磁器、家具の数々は、機能性を重視しつつ、美しさも兼ね備えています。なかでも“timeless design product(時代を超えた製品)”をコンセプトに作られてきた生活用品は、私たちの暮らしに洗練されたデザイン性をもたらし、まさに「生活の中の美」といえるでしょう。20世紀前半から台頭したフィンランドのデザインは、アルヴァル&アイノ・アールト夫妻、カイ・フランク、タピオ・ヴィルッカラ、ティモ・サルパネヴァら優れたデザイナーを輩出し、特に1950年代からは国際的な評価を得て、現在に至ります。彼らを取り巻く美しい自然と風土は、時に創作のインスピレーションとなり、作品や製品の色となり形となって溶け込んでいきました。 本展は、こうしたフィンランド・デザインの魅力を、18世紀後半から現代に至るガラス作品を中心にご紹介します。森と湖の国のデザインが繰り広げる世界を、クリスマスの到来とともにお楽しみください。[美術館サイトより]


会場    サントリー美術館 
      東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3F
会期    2012年11月21日(水)~2013年1月20日(日)
入場料   一般=1,300(1,100/1,200)円
      高大生=1,000(800/900)円
      *( )内は前売/20人以上の団体料金
      *中学生以下は無料
休館日   火曜日、12/30~1/1
開館時間  10:00~18:00(金・土および12/23(日)、
      1/13(日)は20時まで開館、12/28と12/29は年末のため18時まで開館)
      *入館は閉館の30分前まで
問い合わせ tel. 03-3479-8600(ハローダイヤル)
主催    サントリー美術館、朝日新聞社




2012年12月9日日曜日

企画展「田中一光とデザインの前後左右」



クリエイティブに対する深い認識とポリシー





   早いものでグラフィックデザイナー田中一光が亡くなってからちょうど10年になりました。田中さんが広告、グラフィック界に与えた影響ははかりしれませんが、今まさにその功績が再評価されようとしています。
  現代はキレイに洗練された感覚でデザインをしたり、モノを作るテクニックに冴えた人が多い時代です。しかし、センセーショナルな感性や独自のポリシーを訴えることのできる人が少ない時代でもあります。

  戦後のグラフィック界に大きな足跡を残した田中さんの作品は、シンプルで洗練されているけれど見る人の心に深く刻まれるようなメッセージ性のある作品を残してきました。それもきっと田中さんのクリエイティブに対する深い認識とポリシーから生まれたからなのでしょう……

  この展覧会はすでに9月から開催されていますが、このコーナーであえて紹介させていただきました。田中さんのクリエイティブへの愛情や想いを受け止めるためにも貴重な展覧会になるかもしれません。


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日本を代表するグラフィックデザイナー 田中一光(1930~2002)は、伝統の継承から未来の洞察、東と西の国々との交流など、田中自身の言う「デザインの前後左右」を見すえたアートディレクターでもありました。

本展では、田中と仕事を共にしたクリエイティブディレクターの小池一子を展覧会ディレクターとし、琳派、浮世絵、伝統芸能など、市民の文化を熟知し、それらを視覚表現の主題として現代の創作に活写した田中の発想の広がりと表現の着地するさまを多彩にとりあげます。残された膨大な数の作品や資料を検証し、仕事の主軸となるグラフィックデザイン作品を中心に、原画や写真、記録資料など、活動の実際を示す貴重なアーカイブも紹介します。それらを通して、田中一光というクリエイターの人と仕事に迫り、デザイン思想がどのように展開し、表現されたかを探ります。

戦後からの激しい時代を伸びやかに生き抜いた田中一光の創作の軌跡をたどる本展は、現代社会へのメッセージに満ち、これからのクリエイションの新しい方向性と可能性を示唆するものとなるでしょう。(展覧会サイトより)


会場               21_21 DESIGN SIGHT 
                     東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
会期              2012921日(金)~2013120日(日)
入場料          一般=1,000800)円
                     大学生=800600)円
                     中高生=500300)円
                     *( )内は15人以上の団体料金
                     *小学生以下は無料
                     *障害者とその介護者1名は無料(要障害者手帳)
休館日           火曜日(ただし10/3012/25は開館)、年末年始(1227日~13日)
開館時間      11002000
                     *入館は閉館の30分前まで
問い合わせ   tel. 03-3475-2121
主催              21_21 DESIGN SIGHT
                     公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団



中村由利子 ディア・グリーン・フィールド(ピアノソロ・ベスト)








 いつの頃からなのか覚えていませんが、ニューエイジ・ミュージックという音楽のジャンルをこの20年あまりの間、頻繁に耳にするようになりました。 ニューエイジ・ミュージックとは自然や宇宙の調和を促す環境音楽的なイメージであったり、聴く人を癒やすヒーリング効果のある音楽を指すのだそうですね。おそらく、それだけ多くの人が癒やしを求めているということにもなるのでしょう……。
 しかしニューエイジミュージックに明確な音楽スタイルの定義があるわけでもなく、ポップス、クラシック、フュージョン、ボサノバ、ジャズ等、どんなジャンルであっても人を癒やす音楽であるならば、それが即ちニューエイジミュージックということになるのかもしれません……。
 
 ともすれば、ニューエイジで時代を築いたジョージ・ウィンストンやウィリアム・アッカーマン、エンヤといった洋楽のアーティストばかりに目が向けられることが多いのですが、日本にも加古隆、倉本裕基、久石譲、西村由紀江、中村由利子等…、素晴らしいアーティストはたくさんいます。
 今回取り挙げたいのは、写真家の前田真三さんの北海道・美瑛の自然をテーマにした映像作品『四季の丘』に曲を提供したことで話題になった中村由利子さんです。中村さんは最近では韓流ドラマに曲を提供したり、作曲で大変に好評を博しているようです。中村さんの作品には少しウエットな味わいがあり、心のひだに直接触れるような情緒が印象的です。『四季の丘』でも日本人の感性にピッタリな繊細で四季折々の移ろいゆく情感が最高でした。とにかく映像との相性がいいんですよね……。何か映像から詩が生まれてくるような独特の雰囲気を持っているんです。

 中村さんの作品との出会いは20年も前のことになると思います。テレビのCMのイメージ映像が流れてきたのですが、その時流れていたのが「パストラル」だったのです…。何てピュアな世界なんだろう……。そう思いました。眼をつぶっているだけで様々な情景が浮かんできますし、瞑想や回想のシーンが音楽によってゆるやかに心に描き出される体験をしたのです! 
 時にヨーロッパ的な洗練された感覚の楽曲があったり、クラシカルなモチーフを使ったりするのですが、それらが何の違和感もなく曲と溶け合っているところに抜群の音楽センスを感じます。

 今回推薦したいCD「ディア・グリーン・フィールド」は彼女の作品のベストチョイスをピアノのソロをメインに構成しアルバム化したもので、いわゆるアレンジによるベストアルバムと言っていいでしょう。
  驚かされるのは、心の洗われるようなピアノソロの素晴らしさです。ピアノでこれ以上ないくらいに歌っているために、展開部でオーボエやチェロ等の伴奏が出てくると懐かしさや音楽の素晴らしさを実感できるのです!

 もう1枚、「アトリエの休日」のラストに収録されている「賛歌」が本当に見事な出来栄えです。オルガンをバックに幻想的な雰囲気で導き出されるピアノのタッチは時間が止まったような感覚と自分の内面を見つめるような瞬間を与えてくれるのです。そして至福の時を約束してくれることでしょう……。





2012年12月3日月曜日

シューマン 交響曲第1番変ロ長調作品38「春」





 人生で最も幸福な時期に書かれた作品が不朽の名作を生み出すということは昔からよく言われていることです。やはり希望や喜びの想いが創造のエネルギーを奮い立たせる力となるからなのでしょうか? 
 ロマン派の大家、ロベルト・シューマンの交響曲第1番「春」の場合もそれに当てはまると考えていいでしょう。特に1840年は彼にとって歌の年と言われるように、『詩人の恋』、『リーダークライス』、『女の愛と生涯』と続々と歌曲の名曲を生み出したのです。この年はクララ・ヴィークと結婚した年でもあり、公私ともに充実し幸福の絶頂期だったのでした。前記の歌曲集がロマンティズムの昇華と言えるような甘く麗しい作風であることからも、それがよく伝わってきますね!

 そして、その余韻が醒めやらぬ1841年に作曲されたのがシューマンの最初の交響曲第1番「春」なのです。シューマンはロマン派を代表する交響曲の作曲家なのですが、ともすればピアノ曲や歌曲ばかりに目が向けられやすい傾向があります。「シューマンの最高の魅力作は歌曲集」と定説のように言われる中で、ある意味仕方のないことなのですが、交響曲作曲家としての力量も相当なものであったことは間違いありません。

 シューマンの交響曲第1番「春」はきりりとした古典派の体裁を持っています。その古典的なスタイルに清涼なロマンティズムが色濃く流れ、独特のオリジナリティを醸し出しているのです。この作品は「春」とタイトルがあるように、早春のロマンの香り漂う情緒がとても印象的です。
 ドイツ的な剛毅さや前進する迫力を持つ作品ですが、それよりも明るい楽器の響きや色彩豊かなハーモニーがワクワクするような楽しさを伝えてくれるでしょう。

 金管楽器のファンファーレで開始される第1楽章の序奏部分は大きなうねりを伴いながらどんどん発展していきます。そして音楽のピークで現れる第1主題は強いエネルギーを放射するリズムの祭典のようです! そこから響き渡る楽器の音色はさまざまな春の風物詩を表出しているかのようにも思えます。

 第2楽章の響きは薄明かりの春の日の余韻を思い起こさせ、ぐっと心に残ります。第3楽章や第4楽章の希望にあふれたエネルギーは次々と主題の装いを変え発展しながら歓喜のフィナーレを迎えます!
 この作品の最大の魅力はスケールが大きく立派な造型を誇っているにもかかわらず、決して深刻になったり難しさが無いところでしょう。終始滞ることなくグイグイと前進する爽やかなエネルギーに溢れていることが大きな魅力なのだと思います。

 おすすめのCDは格調高くロマン派的な情緒を表出する指揮をしたら右に出る者がないクレンペラー盤(EMI)が最高です! この演奏はもしかしたら彼がフィルハーモ二ア管弦楽団を振った演奏の中でも屈指の名演奏かもしれません。第1楽章の微塵も薄っぺらなところがない立体感と深さを併せ持った迫力! 第4楽章の輪郭をくっきりとさせつつ一切表面的にならない凄み! まさに有無をも言わせない素晴らしい演奏を繰り広げています。





2012年11月28日水曜日

「チョコレート展」



チョコの魅力に迫る展覧会


「チョコーレート展」公式サイトより



チョコレート好きな私としては、妙にこの展覧会気になります…!? 「食べ過ぎると鼻血が出るよ」と言われたり、「いくら何でもカロリーの摂り過ぎ」と言われることもしばしば……。 でも、何と言われようとやっぱりチョコレートは美味しい! 「ポリフェノール効果って風邪にいいんだよね!」とか「気分転換、疲労回復にバッチリ!!」と無理やり自分を慰め、苦しい切り返しをしながら、またチョコレートを頬張るのでした!

チョコって不思議な魔力(…じゃない魅力)を持った食べ物ですよネ! チョコの言葉の響き、チョコのあの形、あの口当たり…。本当に好物の人にはたまらないと思います! そしてこの「チョコレート展」! 徹底的にチョコの魅力を探り、体験する展覧会とあって、チョコーレート好きには生唾もののイベントになりそうです……。

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みんなが大好きなチョコレート!その魅力や秘密に迫る展覧会が、上野の国立科学博物館で開催中です。
エントランスでは、チョコレートで作られた「蒸気機関車」と「シロナガスクジラ」が お出迎え。そして、「チョコレート製の国立科学博物館」の門をくぐって入る会場内は、6つのゾーンで構成されています。原料のカカオについて学んだり、海外のチョコレートの歴史をそれぞれの時代の道具や食器で知ったりできます。
「チョコレートと日本」のゾーンでは、人気のチョコレート商品に関する懐かしいテレビコマーシャルや歴代のポスター、パッケージなども大集合。また、チョコレートができあがるまでの複雑な工程を、映像や音、匂いや風、温度の差などの演出効果で、まるで来場者自身がカカオ豆になった気分で疑似体験できるコーナーや、他では買えないチョコを販売しているチョコレートショップなどもあり、子供から大人までたっぷりと楽しめる盛り沢山の展覧会です。(design pocket news トレンド情報より)

国立科学博物館(東京・上野公園)
11月3日(土)~2013年2月24日(日)



2012年11月26日月曜日

ベートーヴェン ピアノソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」







ベートーヴェンの交響曲は素晴らしいのだけれども、いざ聴こうと思うとかなりの心の準備や集中力が必要……と思ったことはありませんか? 確かにベートーヴェンの曲は傑作揃いなのは間違いないのですが、とっつきにくさでも1級品……。
 ピアノソナタの「月光」、「熱情」や田園交響曲、ヴァイオリン協奏曲のようにあまりにも有名で絶えず耳にする作品はいいのですが、それ以外の作品は音楽の美しさ以上に精神的な緊迫感が気になってしまいます。

 芸術的な完成度や圧倒的な昂揚感において秀逸なオペラ「フィデリオ」が不人気なのも、エンターテインメント性(サービス精神と言ってもいいかも…)に乏しいことが最大の原因ではないかと思ってしまうのです!?
 しかし、そんなベートーヴェンの作品にもポピュラーな音楽はもちろん存在します。その代表例がピアノソナタ「悲愴」ではないでしょうか!

 「悲愴」ソナタは全体の音楽の流れも良く、スムーズに純音楽的な美しさを実感し堪能できる数少ない作品なのです。特に第2楽章アダージョの美しさは格別で、これまで様々なジャンルの音楽にアレンジされたりしています。このアダージョは、おそらくベートーヴェンでしか表現できない崇高なロマンと人間的な優しさを持った永遠の名旋律といえるでしょう!

 この頃のベートーヴェンは、いい意味での古典的な格調を軸にした音楽スタイルを持っており、後年の疾風怒濤、気宇壮大的な作品にはない純粋な魅力がふんだんに詰まっているのです。そして随所にベートーヴェンの誠実さがにじみ出た愛すべき作品と言っていいでしょう。

 演奏はバックハウスのステレオ盤(DECCA)の演奏が深い味わいを伝える名演奏です。スケールが大きく、格調高いピアノの響きはこの曲の本質をくまなく引き出している感じです。何度聴いても飽きない、ベートーヴェンの音楽の魅力に極め尽くされた演奏と言っていいかもしれません!










2012年11月17日土曜日

恒例の第九コンサート・注目のコンサート(東京編)



 年末恒例の第九シーズン到来!

早いもので、気がついたら今年ももうあと1ヶ月半ほど…。時のたつ早さに改めて驚いたり、慌てたりする昨今ですが皆様はいかがでしょうか? この頃になると年末恒例のベートーヴェン第九コンサートが何故か気になってきますね!?
 
とりあえず今シーズン東京で開催される聴いてみたい第九コンサートや気になるコンサートを思いつくままにとりあげてみました。(サントリーホール、NHKホール、東京文化会館のみになってしまいました。悪しからず…)指揮者はロジャー・ノリントン、大植英次、小林研一郎と実力者揃いで非常に楽しみです!

また大晦日の恒例となったベートーヴェン交響曲の全曲演奏会はスポーツで言うならばフルマラソンに挑戦するようなエネルギーが必要かと思ったりもします……。とにかく1日でベートーヴェンの全曲を演奏するということは並々ならぬ情熱とパワーがなければ不可能でしょう。今年も小林研一郎さんが指揮を担当されるということで、熱いライブになることは間違いなさそうです!

東京・渋谷 NHKホール



【サントリーホール】

12月18日(火)

TOKYOイギン<歓喜・笑顔>第九コンサート
曲目 ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」
指揮 大植英次
演奏 東京フィルハーモニー交響楽団
開演 19:00
料金 S9,000 A7,500 B6,000 (9月3日発売)
問合せ イギン広報室 03-5495-1911 


12月19日(水)

読響第555回名曲シリーズ
曲目 ベートーヴェン: 交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」 
指揮 シルヴァン・カンブルラン
出演 木下美穂子(S)、林美智子(M-s)、高橋淳(T)、与那城敬(Br)
合唱 新国立劇場合唱団
開演 19:00
料金 S9,000 A7,000 B5,000 C4,000
問合せ 読響チケットセンター 03-3562-1550


12月20日(木)

日本フィルハーモニー交響楽団「第九」特別演奏会
曲目 J.S.バッハ: 主よ、人の望みの喜びよ 
     J.S.バッハ: トッカータとフーガ ニ短調 
     ベートーヴェン: 交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」 
指揮 小林研一郎
出演 長井浩美(Org.)、菅英三子(S)、金子美香(A)、錦織健(T)、青戸知(Br)
合唱 東京音楽大学
開演 19:00
料金 S8,500 A7,500 B6,500 C5,500 Ys3,500 Gs4,500
問合せ 日本フィル・サービスセンター 03-5378-5911


12月21日(金)

読響 第九 特別演奏会
曲目 ベートーヴェン: 交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」 
指揮 シルヴァン・カンブルラン
出演 木下美穂子(S)、林美智子(M-s)、高橋淳(T)、与那城敬(Br)
合唱 新国立劇場合唱団
開演 19:00
料金 S9,000 A7,000 B5,000 C4,000
問合せ 読響チケットセンター 03-3562-1550


12月22日(土)

LG Electronics Japan クラシック・スペシャル
日本フィルハーモニー交響楽団「第九」特別演奏会
 
曲目 J.S.バッハ: 主よ、人の望みの喜びよ 
      J.S.バッハ: トッカータとフーガ ニ短調 
     ベートーヴェン: 交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」 
指揮 小林研一郎
出演 長井浩美(Org.)、菅英三子(S)、金子美香(A)、錦織健(T)、青戸知(Br)
合唱 東京音楽大学
開演 14:00
料金 S8,500 A7,500 B6,500 C5,500 Ys3,500 Gs4,500
問合せ 日本フィル・サービスセンター 03-5378-5911

東京フィルハーモニー交響楽団 ベートーヴェン『第九』特別演奏会
曲目 モーツァルト:オッフェルトリウム「主の御憐れみを」 K. 222
     ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」
指揮 大植英次
出演 アンナ・ガブラー(S)、スザンネ・シェファー(A)、ヨセフ・カン(T)、
      アンドレアス・バウアー(Br)
合唱 東京オペラ・シンガーズ
開演 19:00
料金 S9,000 A7,500 B6,000 C4,500 D3,000
問合せ 東京フィル・チケットサービス 03-5353-9522


12月23日(日・祝)

サントリーホール クリスマス オルガンコンサート
曲目 14世紀のクリスマス・キャロル:天使がひそかに
     メシアン:羊飼いたち~『主の降誕』から
     リュリ/ダングルベール編曲:シャコンヌ(オペラ『アシスとガラテア』から)
     デュプレ:古いノエルによる変奏曲 op. 20、他
出演 高橋博子(Org)、市瀬陽子Scenes et Salons(バロック・ダンス)、他
合唱 東京少年少女合唱隊
開演 16:00
料金 S5,000 A4,500 B3,500
問合せ サントリーホール 0570-55-0017
 

12月24日(月・休)

サントリーホール クリスマスコンサート 2012
バッハ・コレギウム・ジャパン 聖夜の「メサイア」
曲目 ヘンデル: オラトリオ『メサイア』HWV56 
指揮 鈴木雅明
出演 ヨハネッテ・ゾマー、藤崎美苗(S)、クリント・ファン・デア・リンデ(Ct)、
   櫻田亮、谷口洋介(T)、ロデリック・ウィリアムズ(Bs)
開演 15:00
料金 S9,000 A7,500 B6,000 P3,500 学生1,000
問合せ サントリーホール 0570-55-0017


12月25日(火)

<スターツ ハートフルコンサート>
新日本フィルハーモニー交響楽団「第九」特別演奏会
曲目 レーガー: 7つの宗教的民謡から「おおいとしきみどり児、やさしきイエス」 
   ベートーヴェン: 『エグモント』序曲 op.84 
   ベートーヴェン: 交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」 
指揮 リュウ・シャオチャ
出演 天羽明惠(S)、加納悦子(M-s)、永田峰雄(T)、キュウ・ウォン・ハン(Br)
合唱 栗友会合唱団
開演 19:15
料金 S8,000 A7,000 B5,500 C4,000


12月26日(水)

都響スペシャル「第九」
曲目 ベートーヴェン: 序曲『レオノーレ』第3番 : 交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」 
指揮 カール=ハインツ・シュテフェンス
出演 澤畑恵美(S)、竹本節子(M-s)、福井敬(T)、福島明也(Br)
合唱 二期会合唱団
開演 19:00
料金 S8,000 A7,000 B6,000 C5,000 P2,200
問合せ 都響ガイド 03-3822-0727


12月27日(木)

N響「第九」Special Concert
曲目 ギルマン: ヘンデルの主題によるパラフレーズ 
     J.S.バッハ(デュリュフレ編曲): コラール『主よ、人の望みの喜びよ』 
     ヴィエルヌ: ウェストミンスターの鐘 
     ベートーヴェン: 交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」 
指揮 ロジャー・ノリントン
出演 クラウディア・バラインスキ(S)、ウルリケ・ヘルツェル(A)、トーマス・モア(T)、
   ロバート・ボーク(Br)、勝山雅世(Org)
合唱 国立音楽大学
開演 19:00
料金 S16,000 A13,000 B10,000 C7,000 ユースチケットC(25歳以下)6,000
問合せ N響ガイド 03-3465-1780


12月28日(金)

東京交響楽団特別演奏会 第九と四季
曲目 ヴィヴァルディ: 協奏曲集「四季」から「春」「冬」 
     ベートーヴェン: 交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」 
指揮 秋山和慶
出演 小林美樹(Vn)、文屋小百合(S)、清水華澄(M-s)、カルステン・ズュース(T)、
   アッティラ・ユン(Bs)
合唱 東響コーラス
開演 14:00
料金 SS15,000 S10,000 A8,000 B6,000 C4,000 SS(ペア)25,000
問合せ Tokyo Symphony チケットセンター 044-520-1511



【NHKホール】

ベートーヴェン「第9」演奏会
2012年12月22日(土)  
曲目 ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」
指揮 ロジャー・ノリントン
出演 クラウディア・バラインスキ(S)、ウルリケ・ヘルツェル(A)、トーマス・モア(T)、
ロバート・ボーク(Br)
合唱 国立音楽大学
開演 18:00 

チケット購入 チケットぴあ ローソン


ベートーヴェン「第9」演奏会
2012年12月23日(日・祝)  
曲目 ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」
指揮 ロジャー・ノリントン
出演 クラウディア・バラインスキ(S)、ウルリケ・ヘルツェル(A)、トーマス・モア(T)、
ロバート・ボーク(Br)
合唱 国立音楽大学
開演 15:00

チケット購入 チケットぴあ ローソン


ベートーヴェン「第9」演奏会
2012年12月25日(火)  
曲目 ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」
指揮 ロジャー・ノリントン
出演 クラウディア・バラインスキ(S)、ウルリケ・ヘルツェル(A)、トーマス・モア(T)、
ロバート・ボーク(Br)
合唱 国立音楽大学
開演 19:00

チケット購入 チケットぴあ ローソン


ベートーヴェン「第9」演奏会
2012年12月26日(水) 7:00pm
曲目 ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付き」
指揮 ロジャー・ノリントン
出演 クラウディア・バラインスキ(S)、ウルリケ・ヘルツェル(A)、トーマス・モア(T)、
ロバート・ボーク(Br)
合唱 国立音楽大学
開演 19:00

チケット購入 チケットぴあ ローソン



【東京文化会館】



ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2012
日時 12月31日(月) 13:00開演(12:30開場/23:45終演予定)
曲目
ベートーヴェン:
 交響曲第1番(13:00~)
 交響曲第2番(13:35~)

  休憩(30分)

 交響曲第3番(14:45~)
  お話(15分)
 交響曲第4番(16:00~)
  お話(30分、16:35~)

  休憩(30分)

 交響曲第5番(17:35~)
 交響曲第6番(18:15~)

  大休憩(90分、19:00~)

 交響曲第7番(20:30~)
 交響曲第8番(21:15~)
  お話(30分、21:45~)

  休憩(15分)

 交響曲第9番(22:30~)

※各交響曲の開始時刻は、上記より早まることはございません。
上記スケジュールは予告なく変更される場合がございます。予めご了承の程、お願い申し上げます。

指揮 小林研一郎
演奏 岩城宏之メモリアル・オーケストラ(コンサートマスター:篠崎史紀)
料金 S:20,000 A:15,000 B:10,000 C:5,000 D:2,000(7月14日発売)
チケット 東京文化会館チケットサービス 東京芸術劇場チケットサービス
お問合せ メイ・コーポレーション 03-3584-1951.



2012年11月8日木曜日

バッハ  ブランデンブルク協奏曲第6番 変ロ長調






 ブランデンブルク協奏曲はバッハの管弦楽曲の中では最も人気が高く、演奏頻度の高い作品です。しかし、その中で今回とりあげる第6番は唯一演奏頻度が少ない作品ではないでしょうか。

 演奏頻度が少ない理由としては圧倒的に地味で演奏効果があがりにくいというのが通説になっているようです。でもよく耳を澄まして聴いてみてください。この曲ではヴィオラやチェロ等が終始活躍し、モノトーンを基調にした何とも穏やかで温もりのある響きが生み出されているではありませんか! 確かに全体のトーンは渋くて華やかさこそありませんが、これこそ低弦楽器の音色に精通したバッハならではの深い味わいと言っていいでしょう!
 この作品は「ブランデンブルク協奏曲の中で一番聴き疲れしない」とおっしゃる方も意外と多いのです。

 おそらく、弦楽四重奏やチェロソナタあたりが好きな人であれば、一度で好きになってしまう曲なのでしょう。6番は美しいメロディも随所にありますが、メロディの美しさよりは響きの美しさや奥深さが印象的な曲なのです。
 それだけにヴィオラが奏でる可憐な主題はストレートに心の歌となって響き、深い癒しを与えてくれるのです。ヴァイオリンには出せない艶やかでまろやかな音の拡がりが何ともエレガントですね!

 この曲は演奏効果というよりも、しっとりとした情緒を味わう曲なので最近の古楽団体の演奏より往年の名盤がやはり優れています。特にパウムガルトナーとルツェルン弦楽合奏団(DENON)の演奏はじっくりと音楽に浸り、隅々まで曲の良さを堪能できるでしょう。パウムガルトナーにはそれより古いアルヒーフ盤(1962年録音)がありますが、そちらの演奏も素晴らしく甲乙つけがたい名演です。
 一言付け加えておくならば、パウムガルトナーの新旧両盤は全集としても大変優れていて、どの曲も水準の高い演奏で魅了されます!











2012年11月2日金曜日

野生のエルザ






 ずいぶん前のことになりますが、かつてテレビで大自然や動物の生態を描いた「野生の王国」や「驚異の世界」等のドキュメンタリー番組がたくさん放映されていました。これらの番組はどれも面白くて、毎回胸をワクワクしながらテレビに釘付けになって見ていたのを思い出します!考えてみればあの時代は今ほど簡単に情報を手に入れることなどできなかったし、ましてや遠い異境の地の映像を見るなど簡単ではなかったのでした……。
 それだけに毎回放映される自然の出で立ちはとても新鮮かつ驚きの連続で、「人間の常識を超えた世界が確実にあるんだな」ということをひしひしと感じたりもしたのです!

 野生のエルザ(1966年制作)はちょうどそのような動物の生態系に関心が注がれる時代に封切りされた作品でした。この映画はジョイ・アダムソンの自伝「Born Free」に基づく人間とライオンの心の交流を描いた作品で、リアリティあふれる映像は深い感動を呼び起こします。動物と人間の交流を描いた映画はたくさんありますが、「野生のエルザ」は今もって最高の感動作と言ってもいいでしょう。

 この映画の成功は全編ケニアロケを決行し、作り物ではない真実味にあふれた映像を獲得できたことが大きいのではないかと思います。特に子ライオンのエルザを育てたあげく、「自然の中で生まれたものは自然に帰すのが一番」と決心するところは大きな苦悩を伴い胸をうちます。その後、何度も挫折しながら野生に帰す試みをするアダムソン夫妻の姿はまるで実の子どもを一人立ちさせる親の姿のようです。エルザを野性に戻すことが成功し、数年後にアフリカを訪れた二人は感動の再会を果たすのでした……。

 この映画で何よりも印象に残るのは主演のビル・トラヴァースとヴァージニア・マッケナの自然な演技でしょう。二人はライオンを抱っこしたり撫でたりするのですが、どのシーンもスタントマン無しでやりきっており、その役者魂には感服いたします!
 彼らは実生活においても夫婦で、この映画を機に野生動物保護運動を精力的に始めたというのですから、役作りやアダムソン夫妻の生き方への共感の度合いも並大抵ではなかったということなのでしょう。

 ジョンバリーの音楽も壮大かつ余情の伝わってくる音楽で画面を暖かく満たします。この映画にこそふさわしい最高のスタンダードナンバーと言えるでしょう。


2012年10月29日月曜日

巨匠たちの英国水彩画展



英国水彩画の魅力を探る「巨匠たちの英国水彩画展」






 水彩画は親しみやすく描きやすい絵の道具であることは誰もがご承知のことと思います。油彩の下書きとして描かれたり、建築や室内インテリアの完成予想図として描かれることも多いですよね!
 しかし実際に描いてみると水彩は結構難しい材料なんですよね。特に透明水彩で描くとそれは顕著に現れます。にじみやかすれ、おもしろい表現を狙ったりと水彩独自の効果が出やすいのですが、失敗するととても見られない(!?)状況になってしまいます。(^_^;

 とにかく油彩のように塗り直しが一切効かないし、一発勝負の感じが強いため確かなデッサン力が要求される場合が多いのです。
 でも水彩画の心安らぐ、あの手触り感の強いタッチや優しいイメージはやっぱり捨てがたいですね……。
 前置きが長くなってしまいましたが、現在東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで「巨匠たちの英国水彩画展」が開催されています。誰もがよく知っているターナー、ウィリアム・ブレイク、ロセッティ等の水彩画が一堂に集った展覧会で、その内容は改めて水彩画の素晴らしさと可能性を示してくれるものになっています。
 かつては「国民的美術」と言われた英国の水彩画。英国の自然のように繊細でありながら独創的なスタイルを模索した輝かしい水彩画の数々が目白押しです!
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 英国マンチェスター大学ウィットワース美術館は、近代美術を中心とした作品を所蔵していますが、中でも4,500点以上の英国の水彩画と素描のコレクションは世界的に有名で、高い評価を得ています。
本展では、ターナーをはじめとする英国水彩画を代表する多くの画家たちの作品を展覧します。
さらにラファエル前派の画家であるロセッティ、ミレイ、ハントやバーン=ジョーンズら日本でもよく知られる人気の画家たちにも焦点をあてます。18世紀から19世紀の英国の巨匠たちの水彩画を中心とした約150点の作品により、繊細かつ緻密な彩色がほどこされた気品と優しさあふれる英国水彩画の全盛期をご紹介します。(公式サイトより)

【巨匠たちの英国水彩画展概要】
会場     Bunkamuraザ・ミュージアム 
       東京都渋谷区道玄坂2-24-1
会期     2012年10月20日(土)~12月9日(日)
入場料    一般=1,400(1,200)円
       高大生=1,000(800)円
       小中生=700(500)円
       *( )内は前売/20人以上の団体料金
       *障害者手帳をお持ちの方は割引制度有り
休館日    会期中無休
開館時間   10:00~19:00(金・土曜日は21まで開館)
       *入館は閉館の30分前まで
問い合わせ先 tel. 03-3477-9413
主催     Bunkamura、マンチェスター大学ウィットワース美術館、
       朝日新聞社



2012年10月26日金曜日

モーツァルト ピアノソナタ第8番イ短調K.310









 モーツァルトはピアノをとても愛していました(ピアノというよりもフォルテピアノというほうが正しいのかも…)。 そして彼とピアノの関係は切っても切り離せない重要な作曲の源泉だったということはほとんどの方がご存知ではないかと思います。中でもピアノソナタk310は短調の曲ではありますが、昔から日本ではとても人気がありました。

 この作品はモーツァルトのピアノソナタの中でも特別な位置にある作品といっていいでしょう。それは人を喜ばせたり楽しませるよりは自分の心に忠実に、そして心の張り裂けるような想いを素直に音楽に託したといっていいかもしれません。

 有名な交響曲第40番や交響曲第25番のイメージをそのままピアノソナタに置き換えたような雰囲気があります。しかし、ピアノソナタという性格上、管弦楽曲や交響曲よりもっと自由な表現が可能で、デリカシーに満ちた表情が出やすいジャンルであることも間違いありません。それがはっきりと確認できるのが第3楽章プレストでしょう。

 とにかくこの第3楽章はいつ聴いても凄いですね! モーツァルトの数多くのソナタの中にあってもとりわけ豊かさにあふれ至高の輝きを放つ傑作と言えるでしょう。一音符ごとに様々な想いや感情が込められており、繊細で透明感に満ちた旋律が心を揺さぶります。
 涙に濡れながら駆け抜けていくテーマではありますが、メロディはたおやかな表情を保ちながら忘れ難いニュアンスを残していきます。そして中間部での天国的な優しさ……。それは永遠の母性とも言えるような安らぎが顔を覗かせる瞬間でもあるのです! 

 第2楽章アンダンテ・カンタービレも凄い音楽です。そして恐ろしい音楽でもあります。多くのピアニストの方々にとってもその感情表現はかなり苦心されることでしょう。とにかく音楽が純粋無垢であるがために却って感情表現が難しいのです。
 出だしは穏やかで平静を装っているように見えるのですが、既にとめどもなくあふれる涙をどうすることもできないモーツァルトの姿が瞼に浮かんでくるのです。吐息や諦観が絡み合いながらしみじみとした味わいを醸し出していくあたりは筆舌に尽くせません!中間部の激しい慟哭の中で、心がどうにかなってしまうのでは……という寸前でまた現実に引き戻されます。

 もちろん第1楽章も有名な悲劇的なテーマをはじめとして充実し変化に富んだエピソードが無垢な魂の中で次々に展開されます。この作品からもわかりますが、モーツァルトの偉大なところはドラマティックな曲といえども決して感情に溺れることなく、高い次元で結晶化された響きや澄み切った表情を生み出しているところでしょう。

 K310は演奏が難しく、CDの名演奏は現在のところかなり限られているように思います。その中ではディヌ・リパッティの最後の録音リリー・クラウスのCBS盤が双璧でしょう。
 リパッティの演奏は1950年ブザンソン音楽祭でのライブ録音で彼の最後の録音です。もちろんモノーラルで決して良好な録音状態ではありませんが、本質をしっかり捉えた演奏は今でも深い感動を与えてくれます。何よりも飾らず外連味のない清廉な語り口がモーツァルトにはぴったりです。

 クラウスの演奏はリパッティに比べると演奏の振り幅が大きく、この曲にモーツァルトが託した思いがどのようなものであったかが伝わってくるような演奏です。特に第2楽章、第3楽章の深い感情移入と引き締まった表現は他のピアニストからはなかなか聴けません。クラウスは1956年のEMI盤(モノーラル)もありますが、そちらも即興的で深い表情が印象的な素晴らしい名演奏です。