2017年11月6日月曜日

ロジャース&ハマースタイン 「南太平洋」










ロジャース&ハマースタインの
傑作ミュージカル

先日の「王様と私」に続き、今回もロジャース&ハマースタインのミュージカル「南太平洋」をあげてみたいと思います。この作品はブロードウエイでの初演が1949年ですが、1958年には映画化もされたミュージカルの傑作です。

太平洋戦争の最中に南太平洋のとある島を舞台に従軍看護婦ネリーと島に住むフランス人エミール、そして海兵隊と島の娘の恋を様々な視点で描いた切ないラブストーリーです。

但し、映画のほうはハワイで長期間のロケを敢行したにもかかわらず、フィルム全編にカラーフィルター効果をかけてしまったために、風光明媚なロケ地の美しさを台無しにしてしまったという曰く付きの映画です。それでもエミールを演じたロッサノ・ブラッツィやネリーを演じたミッツィ・ゲイナーの魅力、名曲「バリ・ハイ」を歌ったファニタ・ホールの存在感は映画史に長く記憶されるものでしょう……。

音楽は生き生きとしてヴァリエーションに富んだ名曲揃いなのですが、映画のサントラ盤は録音の古さが目立ち、全体的に歌唱法の古さもやや気になるところです。

そこで、ここではブロードウェイの舞台を収録したCDをとりあげてみたいと思います。
「王様と私」が比較的、現代のミュージカルスタイルに対応できる曲のテイストをもっているのに比べると、「南太平洋」はどことなく古き良きアメリカを想わせる懐かしいサウンドで充ち満ちていますね……。
名曲「魅惑の宵」、「バリ・ハイ」に聴かれるように、一昔、いや二昔も何十年も前のような古色然とした味わいを持っているのです。

音楽はとにかく楽しく魅力に満ちた名曲の宝庫です! コミカルでユーモアいっぱいの「ブラディー・メアリー」や「あの人を洗い流そう」。子供たちが歌う可憐な「わたしに告げて」。珠玉の輝きを放つ「魅惑の宵」、「バリ・ハイ」、「春よりも若く」。気が利いている「ア・ワンダフル・ガイ」、「ハッピー・トーク」等々、音楽を聴くだけでも舞台の雰囲気が彷彿として、充分に満足できることでしょう!


音楽的に洗練され充実している
2008年ブロードウェイ盤

お勧めしたいのは2008年ブロードウェイ上演盤です。
これは2008年のトニー賞を7部門独占した名演の記録ですが、音楽全体が生き生きとしているし、古き良き時代の雰囲気を醸し出しながら、洗練されていて音楽的に充分美しいのです。

特に素晴らしいのが、ネリーを演じたケリー・オハラですね! 
往年の名歌手ジュディー・ガーランドやドリス・デイのような、いかにも古き良き時代のアメリカ的な歌唱法で雰囲気満点なのですが、もちろんそれだけではありません。ささやくような発声と自然に心に溶け込むような語り口の歌が最高なのです。「ア・ワンダフル・ガイ」や「あの人を洗い流そう」はまるでケリー・オハラの持ち歌のように自然で、表情豊かで、柔らかな歌唱に引き込まれてしまいます!

トニー賞の最優秀男優賞を受賞したエミール役のパウロ・ゾットの歌やその他のナンバーも良くまとまっていて、聴き応え充分です。このCDを聴くと、舞台が無性に見たくなるかもしれませんね…。