家族を描いた
幸福感に満ちた名画
家族を描いた名画というのは美術の歴史を紐解いても意外に少ないものです。そもそも芸術的な深さとか、絵で革新的なスタイルを探求するということは家族の幸福なイメージを描くこととは相容れない何かがあるようです…。まずもってモデルになった家族の一人一人が描かれた絵を気に入らない限り、絵としては成立しないのですから……。
しかし例外もあります。その代表例がここで紹介するオーギュスト・ルノワールの「シャルパンティエ夫人と子どもたち」です。この絵は印象派展やルノワールの個展が開催されると必ずと言っていいほど、ポストカードやポスター等の販売アイテムになったりします。それだけ絵柄としても表情としても申し分ない作品だからなのでしょう。
ルノワールといえば、色彩の独特の発色の美しさや豊満で輝くような肌色をした人物画を描いた画家としてもあまりにも有名ですね。この絵は後年ほどの特徴は明確には表れていませんが、彼の持ち味である温かく美しい色調と見事な構図がバランス良く溶けあった代表作と言っても過言ではありません。
夫人はこの絵を大変気に入ったということですが、それはそうでしょう! 子供たちの愛らしく生き生きとした表情、それを優しく見守る夫人の姿は、考え得る限りの最高のシチュエーションですし、何より愛情を持って見つめ、描かれていることが画面からひしひしと伝わってくるのです。この絵の満ち足りた雰囲気を見る限り、よほどシャルパンティエ家とルノワールの信頼関係は厚かったのでしょう。
三角形の安定感のある構図も見事ですが、何より柔らかで温かみのある色調と家庭的な和やかな雰囲気に魅了されます。