2010年7月3日土曜日

国立西洋美術館常設展5




ギュスターヴ・クールベ 「波」1870年頃


  クールベはミレーやコローとほぼ同じ頃に活躍した画家の一人です。ミレーやコローが抒情派詩人だとしたら、クールベはリアリズム派職人ということになるのでしょう。ミレーやコローが甘美な夢や理想を描いたのに対し、クールベは迫力に満ちたリアリスティックな絵を描いたのです。
   この絵の説明はもはや不要でしょう。今まさに見る人に向かって打ち寄せる波は生きているかのように圧倒的な存在感を持って迫ってきます。クールベは海の色彩の美しさを描こうとはさらさら思っていません。彼は海の持つ底知れぬ恐ろしさや自然の偉大さのみを描きたかったのでしょう。またこの絵には無駄なモチーフがまったくありません。そのことが益々、波の荒々しさを際立たせるのだと思います。波が持つ特有の勢いや雄大さを余すところなく描き出した見事な作品といえるでしょう。

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