創造的な試みが充満している
セザンヌの絵
この絵を見て瞬間的に感じるのが、「何て絵心を刺激する絵なんだろう!」ということです。私は絵筆を置いて久しいのですが、この絵を見ると、どういうわけかもう一度描いてみたいという気持ちが少なからず起こってくるのです……。
そんなこと言ったら、「この絵がどうして絵心を刺激するの?」、「そうかな?」と言う声も聞こえてきそうですね…。
どうしてなのかと言えば、この絵のあらゆる部分に様々な創造的な試みが充満しているからでしょう。つまり絵としての魅力が見れば見るほどに伝わってくるのです。
もしかしたら自分もこの絵の端くれみたいなものが描けるかもしれない?(まず無理なことでしょうけれど…)という親近感を抱かせることも大きいかもしれません。
皆様がご存知のようにセザンヌはあたりまえのように風景を描写したのではありません。
セザンヌの絵を見ていつも思うのが、無造作に積み重ねられた色彩面が醸し出す美しさが際立っていることです。彼は自然から感知した規則性や法則を自身の感性のフィルターを通して絵の中に抽出してみせているのです。
特に印象的なのは画面全体の3分の2を埋め尽くそうかという木々の緑です。
何度も塗り重ねられた緑は多様な表情を映し出し、色彩の変化や陰影の面白さをみせてくれます。また、セザンヌ独自の幾何学形態的な描写法と絵の具を塗り残す筆のタッチが、時として風がそよぎ、揺らいでいるように見え、大気の流れのように感じさせてくれたりもするのです。
緑に挟まれる形で配置されているクリーム色とオレンジを基調にした暖色系の家屋は周囲の緑との色彩の響き合いや対比の中で強い存在感を放っています。
その他、創造的な試みがあれやこれやと結集した、見れば見るほどに味わいが増してくる絵といっていいでしょう!