2013年12月30日月曜日

ベートーヴェン 第九演奏会



ベートーヴェン「第九」の難しさ


NHK交響楽団・ベートーヴェン第九演奏会のカタログ




 昨年末は聴き逃してしまったN響のベートーヴェン・第九演奏会(渋谷・NHKホール)に行ってきました。今年はエド・デ・ワールトの登場です。この指揮者の演奏会は初めてですが、最近はワーグナーの演奏等で評判になっているようですね。
 ただ、いつも第九を聴く時に憂鬱になるのが鬼門とさえ言える第1楽章の出来栄えです。とにかく「第九」は第1楽章の出来が大きなポイントとさえ考えている私にとって、演奏の良し悪しを決める試金石なのです。

 「第1楽章」といえば、どうしてもフルトヴェングラーのあの不滅の名演奏が頭をよぎってしまい、無意識のうちに比べてしまうのですね……。悪い癖だとは思っているのですが。それほどあの演奏が頭にこびりついて離れないということになるのでしょう。
この日のデ・ワールトは第1楽章では管楽器から存在感のある意味深い響きを引き出していました。中間部の嵐の咆哮の部分では壮絶な表情を作り上げて、私も思わず身を乗り出してしまいました。第2楽章のテンポも早くもなく遅くもなく楽器の特徴を生かした有機的な響きに貫かれ、 迫力満点でした。
 第3楽章は速いテンポで旋律線をくっきりと表現しているのはいいのですが、いかんせん歌に乏しく、内面から湧き上がるような情感は残念ながら伝わってきませんでした。一昨年に第九を振ったスクロヴァチェフスキーの第3楽章が素晴らしかっただけに、フィナーレを迎える橋渡しとなる大事な楽章が物足りなかったのは残念でなりません。

 しかし、第4楽章になるとうって変わって自信と共感にあふれた響きが続出します。特に素晴らしかったのは第4楽章の冒頭の序奏に続く低弦の迫力と味の濃さですね!これでこそ有名な第1主題が意味を持つことになりますし、曲の魅力が生きてきます。4人のソリストも安定しており、国立音大の合唱も集中力を切らさず奥行きのある立体的な響きを表出していました。第九の合唱は少々ハイテンションでもまったく違和感がありません。
第3楽章はちょっと残念でしたが、全体的に充分に満足できる素晴らしい演奏会だったと思います。