印象派の画家は色彩の明度や光の表現に関しては敏感だが、マチエールの扱い方や構図、精神的な深さが今ひとつ……。という意見を聴くことがたまにあります。もちろん、印象派の画家の良さを充分に認めつつあえて苦言を呈したのでしょうが、確かにそのような傾向がまったくないわけでもありません。しかし、このモネの絵はそのような不満も払拭する大変密度の濃い絵です。 印象派というとモネ、モネ=印象派、印象派=モネのように扱われることが多い画家ですが、彼が美術史に与えた影響はとてつもなく大きいことは言うまでもありません。
グランド・ジャット島はパリのセーヌ川河畔の約2キロに及ぶ中州です。印象派の画家たちが風光明媚な行楽地としてこよなく愛した場所で、絵の題材としても度々扱われています。特に点描画の代名詞とも言われるスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」は有名ですね!
モネが描いた「グランド・ジャット島」の絵からはコローのような樹々を揺らす風を感じますし、刻一刻と表情を変えつつある雲の存在感が印象的です。そして辺りを覆う空気感が素晴らしく、その時の状況が視覚だけでなく、心や身体的な感覚としてビビッドに伝わってくる感じです! これはモネ自身がいかに風景の中に入り込んでいるかの証拠ですし、描かれたタッチの見事さが画家の生気や息吹を伝えていますね!
また遠くの工場の煙が雲と重なるような形で描かれているのが特徴ですが、モネはこの絵を通して失われつつある自然の姿を告発したかったのでしょうか……?いずれにしてもその真意は明らかではありませんし、その理由いかんによって価値を失う絵でないことは間違いないでしょう。