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2016年11月3日木曜日

ゴッホ「星月夜」











ゴーギャンとの決別と
幻覚に悩まされつつの創作

 これはゴッホが晩年に残した偉大な傑作であるとともに、何かと議論の対象になることが多い作品のひとつです。
 1888年、ゴッホは芸術に対する考え方の違いからアルルでのゴーギャンとの共同生活に終止符を打ち、パリへ戻る決心をします。その後、極度に精神を病むようになり、サン=レミ(フランス)にあるカトリックの精神病院に入院することになったのでした。
 
 「星月夜」はちょうどその頃、ゴッホが病院の窓から見える夜景を描いたものです。力強く独創的な画風は多分に何かを暗示する意味合いや神秘的な要素を含んでおり、そのことは当時のゴッホが置かれていた状況とあいまって様々な憶測を生む要因になっているのかもしれません。この時代に描かれた絵画はアルル時代に描かれたあふれるような光と黄金色に輝くような色彩がすっかり影を潜めてしまったのでした。

 晩年ゴッホは繰り返される幻覚や幻聴との闘いの苦悩に明け暮れつつ、筆を執っていたことは間違いありませんし、そこには生命を削りながら絵に向かっていく姿が彷彿とされるのです……。


イトスギと夜空
ゴッホが描く永遠のテーマ

 ここに描かれた夜空は暗い闇に覆われているとか、静まり返った情景という印象はありません……。ゴッホが星空を眺めるときに「吸い込まれるようで、どこまでも夢見心地だ」と語っていたように、それは普通の人が眺めるような感覚ではなく、幻想的で限りなく心を鼓舞する神秘的なものとして写ったのかもしれませんね……。

 月の光や星の輝きは厚塗りの線とタッチで、あたかもさんさんと太陽の光があたりを照らし出すように画面上に強烈なエネルギーを放射しています。
 しかもグルグルと渦巻き状に拡がる夜空の運行は緊張感と流動感にあふれていて、そこには尽きることのない神秘性とロマンが醸し出されるのです。

 晩年ゴッホが好んで描いたイトスギ(画面の左、前方の尖った樹木)は、花言葉によると「絶望や死」という意味があり、またゴッホ自身もイトスギがキリストの十字架を象徴するものとして意識したり、イトスギを自身になぞらえたりすることもあったようです。 ゴッホは糸杉に様々な想いを投影することで、苦境に喘ぎながらも描き続ける自分自身の心の拠り所として捉えていたのかもしれません。

2012年4月6日金曜日

ゴッホ 「ラ・クローの収穫風景」






 西洋絵画史上、最も強烈な印象や足跡を残した人としてゴッホの名前を挙げる人は多いかもしれません。しかもその偉大な足跡は晩年の2年間の作品群を除いては決して語ることができないのです。その2年はゴッホ自らがユートピアと謳ったアルル滞在時代でした。
 この時代にゴッホは彼の代表作と言われるほとんどの作品を描いたのです。アルル時代はゴッホにとってすべてが新鮮で創作のエネルギーが湧き上がる最も充実した時代だったのでしょう。

 ここで紹介する「ラ・クローの収穫」もアルル時代の最大の功績のひとつです。まず驚かされるのはその色彩です。黄金色に輝きを放つ田園風景は生命力に溢れ、豊かな実りをもたらす自然のエネルギーを強く印象づけるのです!
 画面を構成する田園風景と山並みは一切曖昧なところがなく、気持ちがいいほど明快にくっきりと描かれています。その事によって絵は驚くほどのシンプルさと様式化された形の強靭さを獲得しているのです。

 そして、様々なタッチや色彩のコントラストから生まれる絵としての根本的な強さや存在感、豊富な情報量がこの絵を一段と魅力あるものにしているのです。

 農村を愛し、南フランスの風景を愛したゴッホの息づかいが直接聴こえてくるような名画ではないでしょうか!