2015年1月7日水曜日

「ホイッスラー展」








四半世紀ぶりの日本公開
「ホイッスラー展」

 ホイッスラーは19世紀イギリスとフランスを舞台に活躍した画家です。彼の名前は「ジャポニスム」を絵のスタイルに採り入れた画家ということで有名になっているようですが、決してそれだけではありません。西洋の画家には珍しいモノトーンに近い色彩と考え抜かれた構図、優れた描写力は日本人の感性にも強く訴えかけます!
 今回の「ホイッスラー展」は昨年の京都展に引き続いて開催されているもので、日本公開は四半世紀ぶりとのこと……。きっと様々な発見とホイッスラーの絵の素晴らしさを認識する展覧会になることでしょう。



展覧会概要

 ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(18341903)は、アメリカ・マサチューセッツ州に生まれ、幼少期をロシアで過ごした後、1855年、21歳の時に画家になることを志しパリに渡りました。パリでは、シャルル・グレールのアトリエに通う一方で、ギュスターヴ・クールベと出会い、レアリスム(写実主義)に感銘を受けます。そのため、ホイッスラーの初期の油彩画やエッチングなどの主題の選択や表現には、クールベの影響が色濃く表れています。

 19世紀欧米の画壇において、最も影響力のあった画家の一人であるホイッスラーは、ロンドンとパリを主な拠点として活躍し、クロード・モネなど印象派の画家たちとも親交がありました。また、構図や画面空間、色彩の調和などに関して、日本美術からインスピレーションを得て独自のスタイルを確立したジャポニスムの画家として世界的に知られています。 ヴィクトリア朝の英国では、道徳主義を反映した、教訓的意味が含まれる絵画が隆盛を極めていましたが、ホイッスラーは、絵画は教訓を伝えるために存在するのではないと考え、「芸術のための芸術」を唱えた唯美主義を主導しました。

 音楽は音の詩であるように、絵画は視覚の詩である。 
そして、主題は音や色彩のハーモニーとは何のかかわりもないのである” 

 ホイッスラーはこう語り、1865年以降シンフォニーハーモニーノクターンといった音楽用語を用いて、絵画の主題性や物語性を否定しました。同時代の潮流である、レアリスム(写実主義)、ラファエル前派、古典主義、象徴主義、ジャポニスムなど、さまざまな要素を取り入れて、唯美主義者として独自のスタイルを確立し、同時代、そして次世代の芸術家たちに広く影響を与えました。

 本展は、新たな芸術誕生の牽引者となった、ジャポニスムの巨匠・ホイッスラーの全貌を紹介する、日本では四半世紀ぶりとなる大規模な回顧展です。(公式サイトより)



展覧会基本情報

会場    横浜美術館
      〒220-0012 神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目4-1 
      横浜ジャックモールウエスト棟 
会期    2014126日(土)~201531日(日)
休館日   木曜日 
開館時間  10時~18時(入館は1730分まで)
主催    横浜美術館、NHKNHKプロモーション
観覧料   一般1,500円(前売1,300円、団体1,400円)
      高校・大学生1,100円(前売900円、団体1,000円)
      中学生600円(前売400円、団体500円)
      小学生以下 無料
      ( )内は前売ならびに、有料20名様以上の団体料金(用事前予約)
      毎週土曜日は、高校生以下無料(要生徒手帳、学生証)
      障がい者手帳をお持ちの方と介護の方(1名)は無料
      観覧当日に限り「ホイッスラー展」の観覧券で
      横浜美術館コレクション展も観覧可
公式サイト http://www.jm-whistler.jp
 


2015年1月4日日曜日

モーツァルト ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453












 新年あけましておめでとうございます。
 日頃、私のブログを訪問していただき、本当にありがとうございます! 昨年は更新頻度が少なく、皆様には何かとご迷惑をおかけしてしまったかもしれません…。 申し訳ありませんでした。^_^; 今年はできるだけ頻度を上げて参りたいと想っておりますので、なにとぞよろしくお願いいたします。





心に溶けこむ
モーツァルトのピアノ協奏曲

 モーツァルトのピアノ協奏曲って他の作曲家のピアノ協奏曲とは何かが違うと思ったことありませんか?
 たとえばベートーヴェンやブラームス、チャイコフスキーの協奏曲を聴く前には身構えたり、最後まで集中力を切らさずに聴けるだろうかと考えてしまいがちなのですが、少なくともモーツァルトのピアノ協奏曲にはそれがありません。つまり、曲の意味を考えたり、無理にイメージを浮かべたり……と「思考」の部分に気をとらわれずに音楽に浸ることができるのです。

 モーツァルトの音色にはパステルカラーのような無限の色調の変化があり、純粋無垢な輝きがあるため、聴く人の心にスーッと溶けこんでくるのですね。 このような変幻自在な表情は聴く人のイマジネーションを高めてくれますし、聴く人の心にぴったり寄り添った音楽といっていいでしょう。
 次々と現れるメロディやリズムに心が踊り、音楽を聴くだけで人を幸せにできる作曲家ってそうそういませんね。



虹のような幸福感が
全編を包む

 ピアノ協奏曲17番K.453はモーツァルトが心身共に充実していた頃に書かれた作品で、予備知識を持たないで聴いたとしても、たちまちメロディの楽しさや美しさに魅せられることでしょう。

 第1楽章冒頭は大らかで上機嫌、かつ爽やかな情緒が印象的で、ピアノの音色は穏やかな光や風を彷彿とさせます。ピアノと管弦楽の間も絶妙ですし、感性豊かに応える楽器の響きが最高で、曲が進むにつれて気持ちもどんどん晴れやかになっていくのを感じますね!

 第2楽章アンダンテも心の内面を映し出すような音楽で、様々な情景が浮かんでくるのです。
 ムクドリの鳴声を主題にした第3楽章はユーモアと人生の悲哀がさりげなく同居している感じで、この卓抜した感性はモーツァルト独特のものなのでしょう。第1楽章同様にピアノと管弦楽の掛け合いがセンス満点で、生き生きとした流れの中に無限の色彩が彩られ、虹のような幸福感が全編を包み込みます。


ペライアとグードの名演


 ペライアは1980年代にモーツァルトのピアノ協奏曲集を録音していますが、このK.453も名演のひとつです。自然な音の美しさや陰影に満ちた繊細な表現が最高です。モーツァルトのピアノ協奏曲に対する愛情がにじみ出ているのもうれしい限りですね。ちょっと残念なのは第3楽章のムクドリのテーマがリズムを弾ませようとするあまり、ちよっと固くなってしまったかな……と感じる程度でしょうか。

 グードのピアノは硬質で時折ベートーヴェンを想わせますが、演奏はあくまでも自然体で、有機的な流れの中に見事な音楽が展開されていきます。音色には深さやコクがあり何回聴いても飽きることはないでしょう。オルフェウス室内管弦楽団の演奏も柔軟で端正な響きが心地よく、その抜群の推進力に魅せられます。