2015年5月7日木曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2015「熱狂の日々」の公演を聴いて








普段聴けない
魅力のプログラム満載の
クラシックイベント

 ゴールデンウイークは皆様いかがお過ごしだったでしょうか……。私は今年もラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2015「熱狂の日々」の公演を聴きに東京・有楽町の国際フォーラムに行ってきました。
 このイベントのいいところはたくさんあります。まずクラシックだからといって気どらずに普段着で入場できること!そして入場料がリーズナブルなこと!そして国内外の一流アーティストが集結していることでしょう。

 今回は3日と4日の公演を聴いたのですが、強烈な印象が残ったのは4日の午後のプログラムでした。
 それはダニエル・ロイスさんが指揮するローザンヌ声楽・器楽アンサンブルとのバッハのミサ曲ト短調とヘンデルのディキシット・ドミヌス(主は言われた)です。
 ロイスさんといえば思い出すのが、ヘンデルのオラトリオ『ソロモン』(ハルモニア・ムンディ)で示した名演奏です。この録音はガーディナー盤(フィリップス)やマクリーシュ盤(アルヒーフ)の名演奏で一躍評価が高まった『ソロモン』をさらに新鮮な感覚でアプローチしたもので、作品の充実度を改めて印象づけたと言ってもいいほどの素晴らしい演奏でした。

 ロイスさんの演奏を聴くのは今回が初めてですが、見るからに地味な印象の人でちょっとビックリしました。まるで職人さんか、研究に没頭する学者さんのような風貌で、とても「音楽、情緒、感動」のようなキーワードがあてはまるタイプには見えなかったのです……。(失礼(^^;;)



感動的だった
ダニエル・ロイスの
バッハとヘンデル

 しかし、音楽はとても生き生きとしていて感動的でした!   指揮姿はカリスマ的な凄みはないものの、非常にしなやかで無駄がなく、その音楽性の素晴らしさからなのか楽員の心をしっかりと掴んでいるようにも見えます。
 プログラム前半のバッハのミサ曲ト短調は短い作品ですが、ロイスさんの指揮は合唱にも管弦楽にも実に細やかに神経を行き渡らせていて、終始バッハを聴く醍醐味と満足感で満たしてくれました。合唱の響きが豊かに溶け合い、内声部も立体的で充実していましたね。久しぶりに聴いたバッハの精神と本質を捉えた見事な演奏だったように思います。

 後半のプログラム、ヘンデルのディキシット・ドミヌスは宗教曲ですが、変化に富んでいるために様々な解釈や表現が可能な作品です。この作品は指揮者や演奏家に深い洞察力や音楽センスがないと平凡でつまらない演奏になりやすいものです。しかし、ロイスさんの指揮はそんな不安を一気に消し去ってしまいました。
 精緻で内声部が豊かな合唱のハーモニー、管弦楽の絶妙の音色のバランス感等、すべてのパート、曲が意味を持って鳴り響いたのがうれしかったです。
 
 本当にあっという間の70分で、音楽を聴く楽しさ、歓びを再認識した至福の時間でした。今後ますますダニエル・ロイスさんの活動から目が離せなくなりそうです。