2018年4月14日土曜日

METライブビューイング プッチーニ『ラ・ボエーム』








粒ぞろいの歌手たちが
織りなす饗宴

ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場のオペラを映画館で上映するという試みのMETライブビューイングシリーズを映画館で見てまいりました。

METライブビューイングシリーズは映画館にいながら、現場で鑑賞するような感覚を想起させる新しいオペラの楽しみ方のひとつとして開始されましたが、今では随分と音楽ファンに浸透しているようですね。

今回見たのは2017~2018シーズンのラインナップの中で見逃せない上演のひとつ、プッチーニの『ラ・ボエーム』です。この公演で最も注目されるのが、主役のミミを演じたソーニャ・ヨンチェヴァでしょう。もはやプッチーニやヴェルディをはじめとするイタリアオペラには欠かせない存在となった彼女ですが、この「ラ・ボエーム」でもその存在感は絶大です。
 有名な「私の名はミミ」では豊かな声質と情感が一層この名曲に花を添えます。そしてロドルフォを演じるマイケル・ファビアーノ、ムゼッタ役のスザンナ・フィリップス等、それぞれにふさわしい人物像を巧みに描き出してくれたのでした。


ゼフィレッリの
舞台の美しさに感動!

この作品はプッチーニの中でもオーケストレーションが特に美しく、夢のような情感を与えてくれる傑作の一つです。したがって伴奏の領域ではではとどまらず、管弦楽次第では作品の感銘の度合いや印象さえ大きく変わってしまうという…ある意味厄介な作品です。

指揮のマルコ・アルミリアートはすべてにおいてイタリアオペラの基本を忠実に再現してくれる人ですが、もっともっとロマンチックで繊細な情感を醸し出してくれても良かったような気がします。特に第1幕で主人公二人が出会う場面の最も感動的な音楽が意外にあっさりすすめられていたのはちょっと残念ですね……。

それに対して、フランコ・ゼフィレッリの舞台演出は最高です! この舞台はメト用に考案されたもので、40年が経とうとする現在も変わらないということですが、作品の本質をしっかり捉えた高い芸術性や感性が、無理なく『ラ・ボエーム』の世界観を私たちの心に焼きつけることに成功しているのです! 
第1幕の屋根裏部屋のシーンからはじまり、第2幕の盛り場カフェのシーン、第3幕の雪の情景のシーンと、どれもこれも非常に凝っていて、舞台という限られた空間の中で様々なイメージや情緒が大きく膨らんでいくのです。

オペラはキャスティングに多くのスタッフが関わるので、すべてが満足とはなかなかいかないものですが、総合芸術としての観客との意思の疎通や面白さ、感動は他の芸術ではなかなか味わえないものかもしれませんね……。