2017年10月23日月曜日

ロジャース&ハマースタイン  『王様と私』











ブロードウェイの
古典的傑作

『王様と私』は1951年に公開されたブロードウェイミュージカルですが、5年後に公開された映画は、ブロードウェイと同じ王様役を演じたユル・ブリンナーの独特の個性と存在感で、このミュージカルが持つ魅力と知名度を一躍世界に知らしめたのでした。
現在でもブロードウェイではたびたび上演されていて、その人気の高さがうかがえますね。

ミュージカルは演技や振付も大変重要な要素の一つですが、それと同じかそれ以上に重要な要素が音楽や歌です。
『王様と私』はリチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン2世のゴールデンコンビによって制作されたミュージカルの傑作ですが、この作品の成功は音楽抜きにはまず考えられないでしょう。 巧みなストーリー展開や登場人物の性格づけがオリエンタルムードをテーマにした音楽によってうまく引き立てられているのです。

またオリエンタル調のテーマと叙情的なバラード、コミカルな歌とのさじ加減が絶妙で、いい意味で均衡がとれているのです。しかも音楽が無理なく心に溶け込んできて、聴く喜びで満たされていきます。

印象的な曲をざっとあげると次のようになるでしょうか……。

純真な乙女心が瑞々しく漂うタプティムの『My Lord And Master』。しっとりとした情感が忘れ難いアンナの『Hello, Young Lovers』。アンナが子供たちに寄り添うように歌う『Getting To Know You』。ルンタとタプティムの美しいバラード『We Kiss In A Shadow』、『I Have Dreamed』。そして今やスタンダードナンバーとして名高く、粋なセンスや夢が拡がる『Shall We Dance?』等々、それぞれに時が経つのを忘れてしまうような味わい深い名曲が目白押しです。


忘れ難い1992年の
スタジオキャスト盤

『王様と私』で真っ先におすすめしたいのが、1992年のスタジオキャストレコーディングによるCDです。
ミュージカルのCDは出来るだけ舞台のイメージを膨らませてくれたり、ストーリーの展開が伝わってくるようなレコーディングこそ相応しいのではないでしょうか…。
映画や舞台のイメージを美しく甦らせる効果があるとするならば、このCDは最高の一枚と言っても決して過言ではないでしょう。

何といっても素晴らしいのがアンナを演じたジュリー・アンドリュースです。アンドリュースは『王様と私』のアンナ役に長年恋い焦がれてきたそうですが、舞台ではなかなかその願いも叶わず、ようやくこのスタジオキャストアルバムで念願が叶ったのでした。

その想いの強さは彼女の歌に溢れ出ているといっていいでしょう! 歌声からこぼれ落ちる気品と聴く者を引き込まずにはおかない豊かな表現力と情感! 中でも『Hello, Young Lovers』は語りかけるような歌い方や一小節ごとに表情が変わる柔軟さが最高で、他の歌手が歌った同曲は、どうしても色褪せてしまいます……。

アンドリュースだけでなく、王様役の名優エドムンド・キングスレーやディズニー映画の歌姫レア・サロンガ、グラミー賞歌手ピーボ・ブライソン、ディーヴァとして難曲に幾度も挑戦してきたマリリン・ホーンと適材適所に豪華なキャストを配していて、その聴き応えや満足度は途轍もなく高いですね!

特にレア・サロンガは素直な歌い方と透明感溢れる声の響きが涼やかな風のように心地よく、心を癒やしてくれます。

ハリウッドボウルオーケストラの、舞台の情景が眼前に浮かんでくるような色彩豊かで情感たっぷりの演奏も素晴らしく、ミュージカルの真髄を心ゆくまで味わせてくれます。間奏部分でのヴァイオリンのソロ等はちょっと泣かせてくれますね……。

この録音の成功の要因は完成度を高めるために決して妥協せずに、スタッフ、関係者が随所に徹底的にこだわり抜き、誠実な作業を遂行したところが大きなポイントなのかもしれません。

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