2011年7月8日金曜日

モーツァルト ピアノ協奏曲第15番 変ロ長調 K.450



可愛らしく愛嬌のあるピアノ協奏曲





 モーツァルトは何と可愛らしく愛嬌のあるピアノ協奏曲を書いたのでしょうか!
 この作品の持ち味は一言で言えば「親しみやすさ」に尽きます。ピアノ協奏曲15番はおそらくモーツァルトのピアノ協奏曲の中で最も親しみやすい曲なのではないでしょうか。語弊の無いように言い換えるならば、その「親しみやすさ」とは音楽が無理なくすんなり心にとけ込んでくる親しみやすさなのです。

 もちろん、傑作にしようという気負いや飾り気は微塵も感じられません。ただひたすら心の動きに素直に書かれたピアノによるエピソードといっていいかもしれません。第1楽章のテーマのなごやかさはもちろん、第2楽章の柔らかな光の中で綴られる万感の想い、第3楽章の心のゆとりやユーモアに至るまでまったく淀みがなく、飾り気がありません。

 しかも随所に活躍する管楽器の無垢な表情やピアノの感情表現の豊かさは驚くほどです。それはまるでハイハイをする赤ちゃんが人の心をつかんで離さないように、それに通ずる愛おしさがこの曲には漂っているように思えるのです。

 バーンスタインのピアノは自在な表情としなやかなタッチで聴く者をすっかり虜にしてしまいます。何よりも即興的な閃きとセンスが抜群で、あらゆるフレーズがモーツァルトの純粋無垢な音楽の粋を伝えてやまないのです。特に第2楽章の深く透明感あふれるピアノは絶品です。
 
 ここでのバーンスタインはマーラーやショスタコーヴィチで見せる重厚で熱く燃えたぎるパワフルな演奏を成し遂げているのではありません。優しく気どらない演奏がいつもの彼とは違うゆとりと微笑みさをもたらしてくれているのです。







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