2013年11月4日月曜日

ラフマニノフ 交響曲第2番ホ短調作品27(2)
















最高の癒しの音楽・第3楽章アダージョ

 ラフマニノフの交響曲第2番は以前このブログでも取り上げた作品ですが、最近第3楽章がCMやBGMにイメージ音楽として使用されることが多く、改めてこの第3楽章をテーマに書いてみるのも決して無意味ではないと思いとりあげてみました。

 それにしてもこの第3楽章は素晴らしいですね。時間にして約15分ほど。単独で聴くのにもちょうどいい長さで、時間を忘れさせるような雰囲気と魅力に溢れているのです。

 真の癒しの音楽とはこういう音楽を指していうのではないかとさえ思います。「ロシアの広大な大地を思わせる…」とはよく音楽雑誌に書かれる表現ですが、それだけではなく、ここには忘れかけていた時間や記憶の名残りが自然のみずみずしい姿とともに静かに心の中に蘇るのです。
 序奏でメインテーマを吹くクラリネットの響きや遠くでこだますホルンやオーボエの響きは瞑想のように優しく奏でられ、雄大なスケール感を表出していくのです。
言ってみれば、夕映えに佇む美しい瞬間が絶えず音楽として鳴り響いているような感覚になるのです……。

 第3楽章だけでなく、他の楽章もなかなか魅力的です。特に第1楽章第1主題の淡い儚さや悲しみが次第に高潮していく情感は素晴らしく、続く第2主題の雲の隙間から光が顔を覗かせるような清々しい表情も印象的です。


ザンデルリングの真摯な演奏
美しいプレヴィンの演奏

 演奏ですが、やはり前回もご紹介したクルト・ザンデルリング指揮フィルハーモニア交響楽団の演奏が断然素晴らしいです。
 特に第3楽章から受けた様々な感動や印象はほとんどがザンデルリング盤から受けたものです。全編を通じて部分部分をデフォルメしたり、必要以上に歌わせることはなく、ゆったりとした息の長いフレーズや深い呼吸と強固な造型で貫かれていることに驚かされます。スローテンポ過ぎるという声もありますが、真摯に作品と向き合っていることが格調高く深い表情を引き出していることは間違いありません。

 ザンデルリンク盤があまりにも素晴らしいために、どうしても他の盤はそのイメージを追ってしまいがちですが、ザンデルリンク盤のようなスローテンポについていけない方やこれから聴いてみようと思われる方にはアンドレ・プレヴィン指揮ロイヤルフィルハーモニー(テラーク)の演奏が安心してお勧めできます。
 ロマンティックな表情、みずみずしい弦の響きはザンデルリンク盤以上でその響きの美しさに魅了される方も多いことでしょう。プレヴィン自身もラフマニノフ2番の録音は3回目で、いかにこの曲を愛し、共感しているかがご理解いただけるのではないでしょうか。
 映画音楽で磨かれた聴かせる表現やテクニックが見事に生かされている感じです。