第3回 ミレー 春(ダフニスとクロエ)
Spring (Daphnis and Chloë) Jean-François Millet
油彩235.5×134.5 1865年 国立西洋美術館
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この作品は西洋美術館をはじめて訪れた時から、とても好きになり、今も自分にとっては懐かしい心に残る1枚です。
「春」はフランスの実業家から依頼された四季四部作の一つだそうです。この絵の魅力はまず構図が素晴らしいことでしょう。自然の中で静かに展開されていく少年、少女のやりとり、その光景はほほえましく、平和の詩を奏でているかのようです。安定した構図に支えられ、春の穏やかな陽光に映えるダフニスとクロエは周囲の環境からも祝福されているように感じられます。
何よりも素晴らしいのはミレーがこの絵を愛情をこめて丹念に描いていることでしょう。その想いが美しい肌色、柔和な色彩等からよく伝わってきます。ゴッホやセザンヌ、ピカソのようにメッセージ性の強い絵ではありませんが、ミレーの絵に対するひたむきで純粋な思いが感じられる愛すべき絵です。