2013年3月8日金曜日

アルフレッド・シスレー「ルーヴシエンヌの風景」






 この絵は東京・上野の国立西洋美術館でいつもお目にかかれます。絵としてもそれほど大きくなく、技法や表現としても大変地味な部類の作品ではないかと思います。とりわけ個性豊かな絵が並んでいる中で思わず通り過ぎてしまうほど存在を主張しない絵といっていいのではないでしょうか。

 シスレーの絵を見ると純粋に絵が好きだったんだろうなということを感じます。おそらく絵を職業に持たなかったとしても休日になると口笛を吹きながら風景画を描きに出かけるような人だったのではないでしょうか…。「ルーヴシェンヌの風景」はまさにそれを彷彿とさせるような作品ですね!
 
 決して晴天のもとで描かれた絵ではないと思うのですが、自然が醸し出す穏やかな空気感が画面全体に漲り、何ともいえないみずみずしさが伝わってくるではないですか! 静かに絵をじっと見つめていると幸せな気持ちになってくるから不思議ですね…。
   実は構図もとても工夫されています。たとえば中央あたりに配置された人物や丘の小径は丘の向こうに連なる拡がりや未来を予感させる伏線であり、キーポイントになっているのです。とにかくこの作品は疲れたときに眺めると安心できる癒やしの効果抜群の秀作だと思います。




2013年3月6日水曜日

ルーベンス 「栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」







 3月話題の展覧会と言えば何と言っても上野の国立西洋美術館で始まったラファエロ展ですが、それに次いで見ものと言えばやはり「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」展ということになるでしょう。ルーベンスは言うまでもなくバロック絵画を代表する天才画家ですが、それだけでなく何か国語も自在に操る外交官としてヨーロッパ諸国の政府間の交渉でも活躍したのでした。しかも書籍の装丁も手がけたり、人文主義の学者として様々な研究も発表したと言います。
 おそらく何でも見事に仕事をこなすマルチ人間として各方面から引っ張りだこだったのでしょうね! ルーベンスの絵はあらゆる人を唸らせる圧倒的なヴァイタリティとテクニックが印象的ですが、その絵のルーツを辿っていくとミケランジェロ、ダヴィンチ、ティツィアーノ、カラヴァッジョとルネサンス期のイタリアの大画家たちから多大な影響を受けたといいます……。
 こういったことからも、標題にもある「原点のイタリア」はルーベンスがイタリア滞在中にこれらの巨匠たちからどれほど大きな影響を受けたのか……ということがこの展覧会で実感できるのかもしれません。ルーベンスの絵の存在感とエネルギッシュな迫力がどこから生み出されたのか…?そのルーツを辿ると言う意味でもなかなか興味の尽きない展覧会ですね!

 
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 17世紀バロック時代のヨーロッパに名声をとどろかせた画家ペーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)。8年間のイタリア滞在を終えてアントワープに帰郷したルーベンスは、大規模な工房を組織して、数々の傑作を生み出しました。本展では、彼のイタリア時代の作品を紹介するとともに、アントワープ工房の活動に焦点を当てて、彼自身の手になる卓越した作品を軸に、工房作品、専門画家たちとの共同制作作品、彼が直接指導して制作させた版画を展示します。また、彼の工房で活動した画家たちの、独立した画家としての作品を紹介し、アントワープ画派の豊かな芸術的展開を探ります。[美術館サイトより]


会場              Bunkamuraザ・ミュージアム 
                    東京都渋谷区道玄坂2-24-1
会期              2013年3月9日(土)~4月21日(日)
入場料        一般=1,500(1,300)円
                    高大生=1,000(800)円
                    小中生=700(500)円
                    *( )内は前売/20人以上の団体料金
                    *障害者手帳をお持ちの方は割引あり
休館日        会期中無休
開館時間      10:00~19:00(金・土曜日は21時まで開館)
                    *入館は閉館の30分前まで
問い合わせ    tel. 03-3477-9413
主催              Bunkamuraザ・ミュージアム
公式サイト    http://rubens2013.jp/