この絵は東京・上野の国立西洋美術館でいつもお目にかかれます。絵としてもそれほど大きくなく、技法や表現としても大変地味な部類の作品ではないかと思います。とりわけ個性豊かな絵が並んでいる中で思わず通り過ぎてしまうほど存在を主張しない絵といっていいのではないでしょうか。
シスレーの絵を見ると純粋に絵が好きだったんだろうなということを感じます。おそらく絵を職業に持たなかったとしても休日になると口笛を吹きながら風景画を描きに出かけるような人だったのではないでしょうか…。「ルーヴシェンヌの風景」はまさにそれを彷彿とさせるような作品ですね!
決して晴天のもとで描かれた絵ではないと思うのですが、自然が醸し出す穏やかな空気感が画面全体に漲り、何ともいえないみずみずしさが伝わってくるではないですか! 静かに絵をじっと見つめていると幸せな気持ちになってくるから不思議ですね…。
実は構図もとても工夫されています。たとえば中央あたりに配置された人物や丘の小径は丘の向こうに連なる拡がりや未来を予感させる伏線であり、キーポイントになっているのです。とにかくこの作品は疲れたときに眺めると安心できる癒やしの効果抜群の秀作だと思います。