2012年7月14日土曜日

「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」を見て



時代とともに変遷する絵画の特徴。「大エルミタージュ美術館展」

ポール・セザンヌ 《カーテンのある静物》
1894頃-1895年 油彩・カンヴァス



先週、六本木の国立新美術館で開催されている「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」に遅ればせながら行ってきました。確かにこの展覧会はタイトルどおり西洋絵画の流れを大まかに俯瞰できる展示になっていました。ルネサンスから20世紀に至る絵画の変遷や傾向が作品を通じて感じとれるのは面白いと思います! 
バロック期頃までは肖像画が意外に多いのですが、写真の代わりという意味あいも強いのか全体的にリアリズムを追求し細密描写が多く安定した描法という印象が強いですね。

しかし、古典派、ロココ主義の時代あたりになると絵に作者のポリシーが強く反映されるようになります。理想であったり、華美な表情、色彩であったりと……。それが19世紀初頭からのロマン派になると絵に感情やドラマ、動きが注ぎ込まれ、思い切ったデフォルメも用いられるようになります。

でも何と言っても面白いのは19世紀後半から20世紀に至る印象派からシュールレアリズム、フォーヴィズム、キュービズム等の絵画の表現の多様化でしょう! このあたりから人間の眼に変わるカメラが普及し始めたり、映写機が登場したりするのですが、これによって人間の生活そのものが一変します。絵はもはや写実的な描写は必要としなくなっていたのでした。絵の概念や価値観が根本的に激変したのがこの頃だったのです。

さて、この展覧会ではレンブラントの「老婦人の肖像」、レイノルズの「ウェヌスの帯を解くクピド」、セザンヌの「カーテンの静物」、マティスの「赤い部屋(赤のハーモニー)」あたりが印象に残ったのですが、特に印象に残ったのがセザンヌの「カーテンの静物」の果物のただならぬ存在感になるかもしれません。

セザンヌは静物画を描く時に見た目の美しさや形にはほとんど目もくれず、その静物に内在する存在の真実に着目するといいますが…それにしてもこれは見事です! セザンヌの絵としては皿の上にある果物がリンゴなのか?オレンジなのか?そんなことはどうでもいいんです……。周辺のブルーと微妙に響きあいながら絵の核心の部分を形成しているオレンジ色の果物の神々しいほどの美しさは言葉になりません! 主役を支える布やカーテンんの絶妙の配置や形、重厚感もしっかりと絵に馴染んでいるのです。