2014年1月9日木曜日

ブリヂストン美術館コレクション展 「画家の目、彫刻家の手」





卓越した描画力の原点






 毎回、所蔵作品を中心に視点を変えながら興味深い企画展を開催するブリヂストン美術館ですが、今回は「画家の目、彫刻家の手」がテーマです。たとえば、ドガは踊り子や馬の絵を描いた画家として有名ですが、彫刻を絵画の習作として制作していたとは……。

 知らなかったです。クロッキーで「ものを見る目を養ったり腕を磨く」というのはよく聞く話ですが、ドガの場合は彫刻で動きのシュミレーションをしていたのでしょうか……。そのような背景があったからこそ、あの卓越したバレリーナの動きが表現できたのでしょうね!
 またロダンやブールデルは彫刻家として有名ですが、彼らにとってデッサンや絵はどのような意味を持っていたのかとか、絵画と彫刻はどのような関係性を持てるのか…等々を考えるいい機会になるかもしれません。 普段、絵画は絵画、彫刻は彫刻と別の領域として捉えられることが多い2つのカテゴリーを"創作"という視点でリンクさせるというのは意外に面白いアプローチなのかもしれませんね。

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ブリヂストン美術館コレクション展
画家の目、彫刻家の手
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画家と彫刻家。画家は絵画を描き、彫刻家は彫刻を制作します。1889年、パリのジョルジュ・プティ画廊では『モネ・ロダン展』が開催され、クロード・モネの絵画とオーギュスト・ロダンの彫刻が展示されました。そしてその展覧会を見た批評家オクターヴ・ミルボーは、「彼らは絵画と彫刻というふたつの芸術を今世紀でもっとも見事に、究極的に演じてみせた」と絶賛しました。エドガー・ドガのように、絵画だけではなく、彫刻も重要な表現手段とした芸術家もいました。絵画と彫刻をあわせてご覧いただくことで、それぞれの特徴が際立ってきます。
本展では、ブリヂストン美術館の所蔵する絵画と彫刻、合計約160点をご紹介します。ロダンやブールデル、ザツキン、アーキペンコ、ブランクーシなど、当館の彫刻ギャラリーに常設されている作品にもご注目ください。(美術館サイトより)

入館料  個人
     一般          800
     シニア(65歳以上)    600
     大学・高校生      500
     中学生以下       無料
     
     団体(15名以上)
     一般          600
     シニア(65歳以上)    500
     大学・高校生      400
     中学生以下       無料
      上記は、本展の料金となります。展覧会によって入館料は異なります。
      シニアの方、学生の方は証明書が必要です。
      障害者手帳をお持ちの方とご同伴者2名様まで半額となります。

休館日  月曜日
開館時間 10:0018:00(毎週金曜日は20:00まで)

      入館は閉館の30分前まで
      上記の開館時間も不測の事態の際は変更する場合があります。
      最新情報は公式Pおよびハローダイヤル(03-5777-8600)でご確認ください。

住所   ブリヂストン美術館 〒104-0031 東京都中央区京橋1丁目101
交通   東京駅(八重洲中央口) より徒歩5
     東京メトロ銀座線 京橋駅(6番出口/明治屋口) から徒歩5
     東京メトロ銀座線・東京メトロ東西線・都営浅草線 日本橋駅(B1出口/高島屋口)
              から徒歩5
      地図を見る



2014年1月6日月曜日

ヘンデル 「セメレ」 HWV58





Cantillation  Sirius Ensemble  Antony Walker, conductor






John Eliot Gardiner (Conductor),English Baroque Soloists






 新年明けましておめでとうございます。
 このブログを訪問してくださった皆様。2014年が皆様にとって良い年になりますよう心よりお祈りいたします…。気がつけばあっという間に1月も1周間が経とうとしていますね。相変わらず更新がのんびりペースですけれども、今年も何卒よろしくお願いいたします。
 


オペラなのかオラトリオなのか?


 ギリシャ神話を扱った異色の作品、ヘンデルの「セメレ」は彼が最も油の乗り切った1743年の作品です。ヘンデルは前々年に「メサイア」、前年には「サムソン」と続々オラトリオの傑作を発表していたのでした。いかにこの時代のヘンデルの創作力が凄かったかということを再認識させられますね。
 この作品はギリシャ・テーバイの王カドモスの娘セメレが神々の王ジュピターと密かに愛しあうようになるところから始まります。これを知ったジュピターの妻ジュノーは激しく嫉妬するようになるのでした。結局、ジュノーの策略によりセメレの命はジュピターの閃光で絶たれてしまうというストーリーです。
 ところで、ヘンデルの「セメレ」はオペラなのかオラトリオなのかということで、しばしば論議の的になるようです。

 オラトリオと言えば聖書やキリスト教的なテーマを題材にした演技を伴わない音楽劇を指し、それ以外の演技や舞台装置を伴うドラマチックな音楽劇はオペラとして認識されるということらしいのですが、どうもこの境界線も怪しいものですね。そのためなのか、「セメレ」は演奏会形式による上演とオペラ形式による上演の二通りに分けられるのが一般的です。でも同じ上演をするならば、オペラ形式によるものが面白いのは当然でしょう!
 私としてはオペラだ!オラトリオだ!と目くじらを立ててどうするんだろう…という気もするのですが!? そのような学術的な区分けをするよりも、音楽として芸術として優れた作品であるかどうかということのほうがはるかに重要なのではないでしょうか!  それよりも何よりも「セメレ」の名演奏がもっともっと…たくさん出てきてほしいというのが切なる願いですネ。



バロック音楽史に燦然と輝く傑作

 この「セメレ」は旋律、インスピレーションに満ちた楽想、密度の濃さ、劇的な要素等、どれをとっても傑出した作品です。ちなみに序曲を聴いてみてください。緊張感漲るただならぬ気配にアッと驚かれることでしょう!しかも格調高くどこまでも音楽的な魅力に富んでいるのです。合唱はドラマの重要なポイントとして適材適所に置かれており、作品にメリハリを与えているんですよね。
 特に第2幕最後のセメレとイーノがしみじみと歌うアリアに続いて、ニンフと若者たちが歌い交わす合唱は霧が晴れたような瑞々しさや神々しい響きを実感させてくれます!ドラマを盛り上げる手腕は見事で、忘れ難い印象を残してくれるのです。
 アリアも多彩で充実しています!登場人物の性格の違いを巧みに描き分けるヘンデルの音楽性や有無をも言わせぬ表現力には唖然とさせられます。例えば憎しみと嫉妬に燃えたぎるジュノーの歌、底抜けに明るく素直な情感を醸し出すジュピター、心の想いを切々と綴ったセメレのアリア…。

 こんなに素晴らしい名曲なのに、演奏として無条件で推せる絶対的なCDは今のところありません。曲が素晴らしいだけにちょっと残念ですね……。あえて推薦するなら、アントニー・ウォーカー指揮カンティレーションのオペラ形式によるライブ録音ジョン・エリオット・ガーディナー指揮イングリッシュ・バロック・ソロイスツ、モンテヴェルディ合唱団(エラート)の音楽を主体にしたスタジオ録音が挙げられるでしょう。

 ウォーカー盤はライブ録音ゆえの聴きにくさこそありますが、有機的な音のドラマとしての緊迫感や面白さは圧倒的で、通して聴くとこの作品の魅力が生き生きと伝わってくることでしょう。曲の本質を突いたウォーカーの指揮が素晴らしいし、エネルギーに満ちた合唱の素晴らしさも特筆に値します。
 ガーディナー盤は現時点では最もバランスのいい名演奏でしょう。特に序曲の余計なものをすべて剥ぎ取ったような切れ味鋭い響きはこの曲の新たな一面を見せてくれた名演として長く記憶にとどめられるに違いありません。ロルフ・ジョンソンやデラ・ジョーンズの歌は聴き応えがありますし、合唱も例によってキメ細やかで美しいハーモニーが素晴らしく、ドラマティックに盛り上げています。