2013年9月4日水曜日

劇団四季 ミュージカル「夢から醒めた夢」




「夢から醒めた夢」のポスター




年齢、性別を問わず楽しめる、四季オリジナルのミュージカル

 先日、以前から気になっていた劇団四季の「夢から醒めた夢」の公演に行ってきました。公演の20分ほど前に会場(四季劇場・秋)に到着すると、何とスタッフによるロビー・パフォーマンスのお出迎え! 公演を前にして廊下や階段で繰り広げられたミニショータイムは私に素敵な時間を与えてくれ、心地よい気分にさせてくれたのでした。

 この作品は、好奇心旺盛で元気な女の子ピコが、突然の交通事故で命を落とした女の子のマコと一日だけ入れ替わる約束をする話です。なぜそんな約束をしたのかというと……、それはマコと仲の良かったお母さんが今も深い悲しみに沈んでいることに対して、「会ってきちんと最後のお別れを言いたい」ということだったのでした。そこでピコはマコから預かった天国行きのホワイトのパスポートを持って霊界に入っていくのですが、そこで待ち受けていたものは!?……。

 開演するとミュージカル独特の華やかさが全開で、ワクワク感が増す中で舞台は特別な空間に変貌しました。ストーリーはわかりやすいし、劇の流れやテンポも軽快で間延びするところがまったくありません! 次々と展開されるエピソードは笑いあり涙ありでとても楽しいし、心に響きます。キャラクターの描き分けも絶妙で、それぞれが魅力的で愛すべき人たちなのだということがよく伝わってきました。
 噂には聞いていたものの、こんなに楽しい作品だとは思ってもみませんでしたね。結局、片時も舞台から目を離すことができませんでした。「ライオンキング」「キャッツ」のように大掛かりな作品ではありませんが、とてもよくまとまった傑作だと思います。本当にあっという間の2時間20分でした!




多くのメッセージが盛り込まれた作品

 この作品は制作スタッフのきめ細やかな愛情が注がれていることを強く感じました。生きることや人として大切なことをさりげなくエピソードとして盛り込んでいるところが心憎いですね!これを映画やドラマでやると何かと説教臭くなってしまうのでしょうが、そのような雰囲気はまったくありません。これもミュージカルの成せる技であり、素晴らしいところなのかなと思います。

 とにかく感動を盛り上げる要素には事欠かないですね!   振付は見事だし、演出のうまさも光ってるし、思わず鼻歌交じりに歌ってしまいそうな音楽の美しさ等々……、あげればキリがありません。そして何より歌とダンス、台詞が自然に無理なくストーリーにはまっているところが素晴らしいと思います。今回はキャスティングも良かったですね!特にピコ役の岡村美南さん、マコ役の土居愛美さん、夢の配達人役の荒川務さん、デビル役の野中万寿夫さんが印象に残りました。
 テーマや内容からいっても親子連れが多いのは当然なのですが、性別、年齢を問わず心から楽しめるミュージカルだと思います。

 この作品の原作者、赤川次郎さんがトークイベントのインタビューに答えていました。その中で「もし、このミュージカルに手を加えるとしたら、どの部分ですか」という質問がありましたが、これに対して赤川さんは「特にはないけど…世界中でテロや飢餓、内戦の犠牲になって死んでいく子どもたちの現状は今もまったく変わってない」と話し、「このような悲しいセリフを台本からカットできる時代になればいいですね」という内容の感想をおっしゃってました。確かにそのとおりで、科学技術の進歩はめざましいのに、戦争やテロ、飢餓の問題は現在でもほとんど解決されていません。この言葉はとても重みがあるように思いました……。

 「夢から醒めた夢」は文字通り「夢」を、そして「勇気」を与えてくれた素晴らしい公演でした。見終わってからしばらくの間は「二人の世界」や「愛をあげましょう」の歌のナンバーが頭の中で鳴り響いてました。どうやらすっかり舞台に魅せられてしまったようです。舞台終了後には出演された皆さんがロビーでお客様を見送りしたり、握手をしたりと素晴らしい想い出を演出してくださいました……。また機会があれば、足を運んでみたいですね…。