2012年6月7日木曜日

「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」






 サンクトペテルブルクは昔からロシアの文化と経済の中心、発信地として発展してきました。モスクワがロシアの首都であり政治の中心でありますが、サンクトペテルブルクは世界的にみても最高峰の芸術の香りに包まれた都市としての存在感を示してきたのです。地理的にも北欧やポーランドに近く、西洋の文化を吸収しつつロシアの広大な大地に根ざした独特の文化が育まれたのでした!
 ざっとあげただけでも音楽のショスタコーヴィッチ、リムスキー・コルサコフ、指揮者のムラヴィンスキーとレニングラードフィル、文学のドストエフスキー、プーシキン、ツルゲーネフ、マイリンスキー・バレエのマイリンスキー劇場と多種多彩で魅力にあふれています。
 そして何と言っても文化の殿堂と呼ぶに相応しいのが、エルミタージュ美術館です!ここは世界でも有数の圧倒的なコレクション数を誇り、充実した世紀の名品が多数展示されています。そして、その優美な建物は世界遺産にも特定されています。
 現在開催中の「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」は選りすぐりの名品を集めて開催されています。お馴染みの絵もたくさん展示されているので、西洋絵画史を一通り俯瞰するるような感じでご覧になれば、さまざまな発見があるかもしれません!

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 エルミタージュ美術館はロシアのサンクトペテルブルクに位置し、ロマノフ王朝の歴代皇帝の宮殿からなる建物と、300万点を超える所蔵作品とが見事な調和を織りなす、世界有数の美術館です。本展覧会では同館の優れた所蔵品の中から、16世紀から20世紀における西洋美術の「顔」ともいうべき名作を、その世紀を象徴するキーワードを軸に紹介します。

 16世紀=人間の世紀、17世紀=黄金の世紀、18世紀=革命の世紀、19世紀=進化する世紀、そして20世紀=アヴァンギャルドの世紀。各世紀を彩るのは、ティツィアーノ、ルーベンス、レンブラント、ブーシェ、レノルズ、モネ、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソら83作家の作品、全89点です。まさに400年にわたる西欧絵画の歴史をたどる豪華ラインナップです。特に注目されるのは、マティスの最高傑作の一つである《赤い部屋(赤のハーモニー)》。東京では実に約30年ぶりの展示となります。
「大エルミタージュ美術館展 世紀の顔・西欧絵画の400年」にご期待ください。
(公式サイトより)


会期     2012年4月25日(水)~7月16日(月・祝)
       毎週火曜日休館(ただし5月1日は開館)
開館時間   10:00〜18:00 金曜日は20:00まで。
       入場は閉館の30分前まで。
会場     国立新美術館 企画展示室2E(東京・六本木)
       〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
観覧料    1,500円(一般) 
       1,200円(大学生)
        800円(高校生)
主催     国立新美術館、日本テレビ放送網、読売新聞社、  
       エルミタージュ美術館
後援     外務省、在日ロシア連邦大使館、ロシア連邦交流庁
特別協賛   大和ハウス工業



2012年6月4日月曜日

J.S.バッハ 平均律クラヴィーア曲集第2巻(BWV870~893)












平均律第2巻を作曲した頃のバッハは創作環境として恵まれたケーテンを離れ、才能と手腕を見込まれてライプツィヒの教会のカントル(教会の合唱指揮者・音楽監督)を任された頃でした。
第1巻はケーテン時代の置き土産のように作曲されたのですが、第2巻を作曲した時、前作よりすでに20年の歳月が過ぎていました。

これほどの歳月の隔たりがあれば当然の如く、気持ちの変化や創作意欲の欠如等が如実に出てくるものなのですが、この曲に関する限りバッハは少しも変わっていなかったのでした。
第1巻に勝るとも劣らない祈りに満ちた雰囲気と豊かな叙情が全編を一貫しており、しかも第1巻にはない行書的な自由さが随所に現れているのです。

中でも第1番プレリュードはバッハのこの作品に賭ける想いを感じとることができます。少しずつ装いを変えていく美しさに満ちた前作のプレリュードはとても魅力的でした。これに並ぶか超えるとなるとバッハといえど、決して容易な話ではありません。しかし、本作のプレリュードでも無限に広がる地平を想わせる確信に満ちた響きが、充実した世界観を描き出していくのです。 朝露を浴びた木々の葉がキラキラと輝き出すような希望に満ちた第2番のプレリュードも新鮮に響きます。

 第1巻ではオルガン的な響きや神聖な雰囲気が深い瞑想と静寂の境地を表していました。しかし、この第2巻では第1巻にはなかったゆとりと自由な曲想が作品の融通性を引き出し、より普遍的な感動と発見をもたらしてくれるのです!

平均律クラヴィーア曲集は曲の形式や構成の素晴らしさによって、あらゆる音楽を愛する人のピアノ演奏の源泉になっていることは間違いありません。しかし、それ以上にひとつひとつの曲の芸術的な品格や味わい深さが無類であることが、いつの時代でも愛される大きな要因となっているのでしょう。

  この第2巻で最も素晴らしい演奏として記憶されるのがグレン・グールドのCDであることは間違いありません。
第1巻では表現自体は抜群であるにもかかわらず、禁欲的なバッハの作品の性格に対して少々違和感があることが否めませんでした。しかし、この第2巻ではあらゆる部分の表情が生き生きとしながら作品の本質と無理なく溶け込んでいることがわかります!
 もちろん、グールド特有の寂寥感やデフォルメした表情も作品の魅力を引き出す上でプラスに作用しており.その表現力と音楽性に圧倒されます!

特に素晴らしいのは第1番プレリュードとフーガで、このプレリュードとフーガはともすれば平均律という作品のステータスに押される格好の萎縮した演奏になってしまいがちです。しかし、グールドの演奏はプレリュードの出だしから彼の感性のフィルターによって炙り出された抜群の雰囲気を湛えた音楽となっており、寂寥感とともに心の奥底に強く印象付けられる音楽になっているのです。また第16番ト短調のフーガも委細構わず突き進む硬質な音の迫力が独特の魅力を醸し出します!

エフゲニー・ザラフィアンツのCDは第1巻で紹介した通り、第1巻と第2巻から同じ調のプレリュードを12曲ずつ選び、計24曲を収録したものです。
ゆったりとしたテンポで情感豊かに歌われる演奏ですが、細部までよく彫琢された美しい演奏です。他の演奏でもの足らないという方には様々なインスピレーションを与えてくれる名演といっていいでしょう!