センスあふれる色彩や線
自由な着想
ラウル・デュフィの絵を見ると、いつも洗練された典雅な世界を感じます。
彼の絵はいつも無味乾燥な日常に潤いを届けてくれますし、センスあふれる色彩や線、自由な着想はクリエイティブな感覚を刺激します。仮にそれがデザインや挿し絵として用いられたとしてもたぶん違和感なく、すんなりと媒体に溶けこむのでしょう……。
いつも言うことですが、ボナールやマルケと同様にデュフィの絵を家の壁に飾ったら、どれほど部屋が明るくなることか……。
堅苦しい表現を極力抑えた画風や感覚的な絵の特徴はそのまま彼の絵の魅力そのものなのです。
少なくともデュフィの絵にはユトリロやモディリアーニの絵に見られるような壮絶極まりない表現は似合いませんし、見当たりません。そのかわり何とも言えない五感を優しく刺激する色彩のハーモニーや柔らかな線のリズムが私たちを何とも言えない幸福感で満たしてくれるのです。
『ドビュッシーへのオマージュ』は画家の晩年の作品ですが、絵がまったく枯れていません。それどころか形式にとらわれず、感性や閃きを具体化したような響きあう色彩のイメージは若々しい感性に満たされています。
デュフィの絵をよく見ると形や線は色彩のイメージを引き出すための補助的な役割しか果たしていないことに気づかれることでしょう。なのに、柔らかくリズミカルなタッチで描かれた線は多くのことを語り、様々な表情を見せてくれるのです。