2017年2月18日土曜日

「東京・春・音楽祭 2017」












13回目を迎える
上野の森の音楽祭

今年も上野の森を音楽で彩る「東京・春・音楽祭」のシーズンがやってまいりました。この音楽祭も今年で既に13回目だとか……

多くの方々に愛されているイベントなんですね! 
プログラム全体をざーっと見渡したところ、目玉は何と言ってもマレク・ヤノフスキが振るワーグナーのニーベルングの指環から最終章「神々の黄昏」に尽きるでしょう!
ヤノフスキはワーグナー音楽の聖地バイロイトでもリングを振っていて、その叩き上げの実力と経験は実証済みです。今回の「神々」も凄いことになりそうですね。

3月から4月の長期に渡って開催されるこのイベント、思わぬ発見がありそうです。思い切って、これからは毎年の自分の恒例行事のひとつに加えてみようかな……。

2017年2月12日日曜日

ヘンデル メサイア2























無限の力と潤いを宿す
「メサイア」

BGMとしても有名で、天にも届けとばかりに高らかに歌い上げるヘンデルの「ハレルヤコーラス」。これを耳にすると何故か胸が高鳴り、思わず聴き入ってしまいますね……。

その「ハレルヤコーラス」を有するヘンデルのオラトリオ「メサイア」は彼のすべての作品で最も有名な作品といっていいでしょう。しかもあらゆるオラトリオの中で最も魅力的な作品と言えば、それはやはり「メサイア」ということになるに違いありません。

メサイアが類い稀な作品であることに変わりはありませんが、バッハのマタイ受難曲やベートーヴェンのミサソレムニス、モーツァルトのレクイエムあたりと比べると、軽い感じがするとか、あっさりとした感じがしてしまうのは私だけでしょうか?

いや、これは決して比べるべきではないのですよね。
メサイアの最大の魅力は長編の作品としては異例の簡潔さとメロディの口ずさみやすさがあげられます。音楽はあくまでもシンプルに徹していて余計な肉付けはまったくされていません。それなのに聴き手に与える感銘と演奏効果は絶大という驚くべき作品なのです。

あまり話題にはなりませんが、ヘンデルの作曲能力の高さは尋常ではありません。
冗長になったり、気が抜けたり一切しないところもメサイアの音楽としての完成度の高さを示しています。アリアや合唱、オーケストレーション、どれをとっても単純明快でシンプルなのですが、いずれも優美で気品が漂います。しかもそれだけでなく、堅固な建築物のように微動だにしない強さと輝きを誇っているのです。


作品のほうから
歩み寄ってくる

バッハのマタイやミサ曲ロ短調を聴く時は深刻な気持ちになったり、心を落ち着けないと作品に入れない感じがするのに、メサイアはちょっと違います! 作品のほうから私たちに歩み寄ってきてくれるのです。しかも音楽が進むにつれて何ともいえない幸福感で満たしてくれるのです。


私が大好きなのは 第2部 第30曲の合唱曲「門よ、お前たちのかしらを上げよ 」です。
このナンバーはヘンデル自身の二重協奏曲から転用したもので、とにかく合唱の美しさが際立っています。イエスの復活を告げる驚きや感動がソプラノパートを3部に分け、問いかけや応答という対比的な技法を用いることにより、麗しく気品に溢れた情感が鮮やかに浮かび上がってくるのです。

前述のハレルヤは合唱曲の名曲であることは言うまでもないでしょう! 広々とした空間を創出する音楽の展開や多様なパートの構成、音楽の要素がどんどん生成され発展していくエネルギーの高揚等々、どれをとっても合唱曲の粋を結集させた大傑作と言っても過言ではありません!



演奏が難しく
演奏によって豹変する作品


さて演奏ですが、とにかくメサイアだけは演奏がよくなければ話になりません。なぜかといえばメサイアほど演奏の良し悪しによって受ける印象が様変わりする作品はないからです。
演奏次第で空前の名作だと実感することもあれば、冗長な凡作に聴こえてしまう恐れも多分にあるのです。

推薦盤として最初にあげたいのはアントニー・ウォーカー(指揮)カンティレイション、アンティポデーズ管弦楽団(ABCクラシック)です。これは現代楽器、古楽器の演奏を問わず、メサイア演奏の常識にとらわれない実に新鮮な演奏です。特に合唱は秀逸ですね。ソプラノを前面に押し出した伸びやかで明るい発声、バランス感覚に優れ、なおかつ美しい情感が漂うセンス満点の歌唱に惹きつけられます!
ソリストもそこそこ粒ぞろいですし、ウオーカーの指揮は作為的な表現や演出がかった効果が皆無で、自然に音楽を歌わせているところに好感が持てます。


この演奏こそ、メサイア演奏の新しい可能性を切り開いた演奏と言えるでしょう!
30年以上経った今でも演奏は古さを感じさせませんし、突出した音楽センスやヘンデルの音楽への深い造詣が成し得た技なのかもしれません。合唱の無垢でみずみずしいハーモニーやカークビーのヴィブラートを排した透明感に満ちた歌は今なお最高です。


トレヴァー・ピノック指揮イングリッシュ・コンサート&コーラス、アーリーン・オジェー(ソプラノ)、アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(メゾソプラノ)、マイケル・チャンス(カウンターテノール)、ハワード・クルック(テノール)、ジョン・トムリンソン(バリトン)(アルヒーフ)は何と言っても歌手陣が豪華で凄いの一言に尽きます。いずれ劣らぬ歌心の持ち主で、特にオジェーやオッターのアリアやレチタティーヴォは全編の華と言っていいでしょう。合唱はこれという特徴こそないものの、フレーズに心が通い安心して聴くことが出来ます。

 ポール・マクリーシュ指揮ガブリエルコンソート&プレイヤーズ(アルヒーフ)の演奏は快活でスピーディー、少々デフォルメを加えた大胆な演奏であるにもかかわらず、聴こえてくる音楽は透明感にあふれた純正のメサイアです。ガブリエルコンソートの合唱が最高で、高度なテクニックで意味深く豊かなハーモニーを綴っています!ソプラノのロッシュマン、グリットンらをはじめとする歌の味わいも最高です!