2010年12月17日金曜日

METライヴィングビュー



新しいオペラの楽しみ方
映画館で観れるオペラシリーズ

今、日本をはじめ、世界中の映画館でニューヨークのメトロポリタン歌劇場がオペラの公演を上映する「METライヴィングビュー」というシリーズが続けられています。タイトルだけ聴くと「どうせDVDやホームシアターの延長、拡大版なんだろう」と思われる方もさぞかし多いのではと思います。しかしこのシリーズはライブには敵わないものの音質や映像の臨場感が素晴らしく、出演歌手の表情や感情移入が見事に伝わってくる等、貴重な映像体験となるに違いありません。これまでオペラはなかなか日本では上演されず、上演されたとしてもチケットがかなり高額で足踏みをしていた方も多かったことと思います。でもご安心ください。このライヴィングビューは気軽に映画館でオペラを楽しめるかなりいい方法かもしれません。ここでは2010年から2011年のシリーズの今後の予定をご紹介します。上映劇場、チケット料は下記のサイトでご確認ください。


Don Pasquale /Gaetano Donizetti The Metropolitan Oper 





【第4作】
ヴェルディ / ドン・カルロ(伊語5幕版・新演出)
上映期間|2011年1月8日(土)〜1月14日(金)
上映時間|4時間47分/休憩2回

【第5作】
プッチーニ / 西部の娘
上映期間|2011年1月29日(土)〜2月4日(金)
上映時間|3時間36分/休憩2回

【第6作】
アダムズ / ニクソン・イン・チャイナ(MET初演)
上映期間|2011年2月26日(土)〜3月4日(金)
上映時間|3時間56分/休憩2回

【第7作】
グルック / タウリスのイフィゲニア
上映期間|2011年3月19日(土)〜3月25日(金)
上映時間|2時間47分/休憩1回

【第8作】
ドニゼッティ / ランメルモールのルチア
上映期間|2011年4月9日(土)〜4月15日(金)
上映時間|4時間4分/休憩2回

【第9作】
ロッシーニ / オリー伯爵(新演出)
上映期間|2011年5月7日(土)〜5月13日(金)
上映時間|3時間8分/休憩1回

【第10作】
R.シュトラウスニ / カプリッチョ
上映期間|2011年5月14日(土)〜5月19日(木)
上映時間|3時間11分/休憩なし

【第11作】
ヴェルディ / イル・トロヴァトーレ
上映期間|2011年5月28日(土)〜6月3日(金)
上映時間|3時間11分/休憩1回

【第12作】
ワーグナー / ニーベルングの指環 第1夜『ワルキューレ』(新演出)
上映期間|2011年6月11日(土)〜6月17日(金)
上映時間|5時間20分/休憩2回

※すべて日本語字幕付きです。
※キャストおよび作品、上映時間、スケジュールは余儀なく変更されることがございます。

MET ライブビューイング http://www.shochiku.co.jp/met/
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2010年12月15日水曜日

セザンヌ サント=ヴィクトール山と大きな松の木







普遍的な内面性を描き刻む芸術性

  セザンヌはキュービズムやフォービズムの画家達に大きな影響を与えたと言われています。ありのまま、見たままを描くのではなく、あくまでも見たものを自分の感性のフィルターに置き換えて、そこから形や色彩を再創造しているからでしょう……。
 こんなことを言ったら失礼かもしれませんが、セザンヌは決して上手な絵描きさんではないと思います。特に人物画は違和感がありますね……。何かカチッとした硬質な感じがつきまとって仕方ないのです。しかも決して美人でもないし、スタイルがいいわけでもないし、笑顔が魅力的なわけでもない……。

  それでも彼の絵は魅力的です。モチーフに内在する存在感や普遍的な内面性を描き刻む芸術性は素晴らしいと思います。セザンヌの場合、あらかじめ自然界や宇宙には見えない法則があって、そこから人間の目に映る視界はさまざまな法則や真理を鏡のように映し出していると捉えていたのではないのでしょうか。セザンヌが自分で再創造した描法や色彩は非常に新鮮で、絵画の世界に新しい可能性を切り開いたことは間違いありません。

 『サント=ヴィクトワール山と大きな松の木』は晩年の傑作です。とにかく、ありきたりのタッチや表情はここには一切ありません。モチーフに内在する生命力、エネルギーや詩情を丹念に注ぎ込み、自分流の翻訳で表現したこの作品は何度観ても飽きない魅力を持っています。

 水彩画のような趣を伝える色面のわずかな塗り残しの新鮮さ。画面全体を円を描くように覆う緑の調和と響き合いが織り成す空気感。そして木の枝を揺らす風や空気や光がさまざまなタッチで溶け込み、奥行きのある表情が生み出されているのです。自信と確信に満ちたタッチはさまざまな要素と共に画面の中で渾然一体となり、風格と気品すら感じさせるのです。

 もし、心にゆとりを持って純粋に素直にセザンヌの絵を観るならば、きっと多くのインスピレーションが与えられるのではないでしょうか。


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