2014年11月18日火曜日

レハール ワルツ「金と銀」







愛らしいメロディと
可憐な響きで心がいっぱいに

 レハールが作曲した「金と銀」。このワルツ、どこかで聴いたことありませんか? かつては小学校の音楽の教科書に鑑賞曲として紹介され、多くの人たちに愛されていた曲でした。この曲を聴くと、古き良き時代の懐かしい香りが甦ってきますし、愛らしいメロディで心がいっぱいになります……。
 その名のとおり、キラキラと輝くような旋律やエレガントな気品が魅力のワルツですが、それだけではありません。大らかで情感あふれる曲調や御伽の国に遊ぶような雰囲気が夢のようなひとときを届けてくれるのです。

 オペレッタやミュージカルの始まりのように颯爽とした装飾音の提示で序奏が開始され、ハープのカデンツァ、ピッコロの経過句と続き、可憐な第2ワルツの後半の主題が出てくると……そこはもう「金と銀」の世界でいっぱいになります! その後の第1ワルツ、第2ワルツ、第3ワルツと続くあふれるようなメロディと見事な転調に胸はワクワクしますし、一気に心が童心に戻っていくような気がいたします。

 レハールはよほど楽器の扱い方に精通していたのでしょうか、グロッケンシュピールやタムタム、ハープ、木管楽器、それぞれが生き生きとした表情で微笑んでるではありませんか。 特に印象的なのが、哀愁に彩られた第2ワルツとそれを受ける後半の愛らしいワルツの対比です。本当に見事としか言いようがありません!
 


ケンペの理想的な名演  

 この曲はなかなか名盤に恵まれませんね……。ウインナーワルツだからとか短い曲だからとか、またレハールの曲ということで、もしかしたら軽く見られているところがあるのかもしれません。音楽はとても魅力的なのに、演奏がサラリと流すような感じだとやはり感動とはほど遠いものになってしまうでしょう。

 しかし唯一といっていいほど、この曲を大まじめに生き生きと演奏してくれる人がいました! それがルドルフ・ケンペです。
 「金と銀」はウィンナ・ワルツ・コンサートと題するアルバムの中に納められているのですが、ケンペ指揮シュターツカペレ・ドレスデン(DENON)の演奏さえあれば他はいらないといってもいいかもしれません! 何よりも軽く流す演奏にしていないところがいいですし、全編に楽器の表情が生き生きしています。
 したたるような弦楽器の魅力、エレガントな雰囲気、深い呼吸、絶妙なリズム、楽器のメリハリ等、どれをとっても理想的で、この一曲だけでもケンペの名前は永遠に記憶されるのではないかと思います。

 実際ケンペはこの曲を得意にしていて、ウイーンフィルと入れた録音もありますし、実演でもよくとりあげたという話を聞きます。やはり曲に大きな愛情を抱いているということは演奏家にとって必要不可欠条件なのでしょう。