2012年4月21日土曜日

僕達急行ーA列車で行こう



いい味出してる映画「僕達急行ーA列車で行こう」






 最近3D映画が急増してきました。映画館に足を運ばせる人が減る傾向に歯止めをかけるためなのかもしれませんが、決して気分がいいものではありませんね…。なにしろ3Dメガネを通した映像が映画の感動の質を高めるものであれば大歓迎なのですが、そうでもありません。映像も無理矢理3Dにした感が強くて興ざめなのです。
 もしも映画の内容を3Dでカバーしようという動きがあるとしたら本末転倒もいいところでしょう。

 しかし、それ以上に残念で問題なのは3Dメガネのかけごこちの悪さです。顔が圧迫されるような感覚はとても辛く、最後までかけ通すことすら至難の技です。今後もどうしても3D映画を作るというなら、このメガネだけは何とかして頂きたいものです。

 そんな中、生粋の(?)2D映画を観てきました。それは先日亡くなった森田芳光監督の遺作、「僕達急行ーA列車で行こう」です。鉄道オタクの主演の2人(松山ケンイチ、瑛太)が偶然の出会いで意気投合するという話です。他愛の無い話なのですが、その語り口やストーリーの展開は軽妙洒脱でテンポが良く、まったく肩が凝りません。それでいてユーモアがいたるところに散りばめられ、何とも言えない空気感を出しているのです!何だか古き良き時代の映画を見ている感覚があるような無いような…!?。

 登場人物はみな一癖も二癖もあるような曲者ばかりで、不思議と言えば不思議な映画です。けれども、「どうだ」と言わんばかりの作為的な自惚れや演出のようなものが感じられず、その分肩の力を抜いてリラックスした状態で観ることができるのがとてもうれしいのです!
 深刻なストーリーの映画、CGバリバリの映画、内容がぎっしり詰まった映画を見疲れたあなた! この映画を観てください。案外いい気分転換にもなり、時間を忘れて楽しめるかもしれませんよ。


2012年4月17日火曜日

ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18








  胸を熱くさせる郷愁とロマン…。忘れていたものを蘇らせてくれる叙情性。ラフマニノフの音楽を聴くと、いつもこのようなイメージが浮かんできます。その作風は彼が活躍した時代の中では、確かにロマン的な情緒が強いのですが、それこそがラフマニノフのラフマニノフたる所以なのでしょう!
 映画の中でもしばしば使われる彼の哀愁をおびたメロディの数々は、さまざまな場面で忘れ難い記憶を与えてくれるのです。

 ところでピアノ協奏曲第2番は昔から非常に人気の高い曲であることは皆さんご承知の通りだと思いますし、それは現在もまったく変わっていません。何と言ってもメロディの宝庫ですし、ピアニストのヴィルトゥオーゾ的な演奏効果も充分に期待できる曲ということが大きいのでしょう! そのような意味でもこの曲はCDで聴くよりも演奏会で生の演奏を聴いた方がずっと感動的かもしれません! ごひいきのピアニストがこの協奏曲を弾く機会がありましたら、ぜひ実演に接してみられることをお勧めしたいですネ!

 この曲で傑作なのは何と言っても第1楽章でしょう!冒頭では大地の底から唸りを上げるようなピアノの和音に始まり、それに続く壮大で哀愁に満ちた第1主題が心の嵐やロシアの厳しい自然を想わせ曲を盛り上げます。静寂感を湛えた第2主題の甘く切ないメロディも非常に印象的です。曲調はドラマティックなのですが、メロディラインはとても親しみやすく、この曲に接した人ならば誰もが第1主題、第2主題のテーマを容易に口ずさめるのではないでしょうか。

 第2楽章の物思いに耽るような情緒も素晴らしく、おそらく1度聴くと忘れられない音楽になるでしょう!ピアノの三連音符から静かに導き出される心の癒し、なぜか懐かしく郷愁に満ちたメロディ…。時間の概念の枠が取り外されたような心に染みる音楽です。テーマはあるようでないような不思議な魅力を持った曲調なのですが、こういう音楽を書かせたらラフマニノフは天下一品です!

 第3楽章も第1楽章のように壮大で華やか、叙情的なメロディが次々と現れ、心と耳に強く語りかけてきます!ピアノと管弦楽は次第に力強く合奏し、やがて圧倒的なフィナーレを迎えるのです。

 演奏はエレーヌ・グリモーがピアノを担当したアシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団(テルデック)の演奏が素晴らしいできばえです!グリモーのピアノはニュアンス豊かでありながら、力強い表現や停滞しないピアニズムにも優れ、ラフマニノフの音楽の魅力を最大限に引き出しています。また、アシュケナージの指揮も情緒たっぷりでスケール豊かです。しかもドラマティックな表現や色彩感にも溢れ、グリモーのピアノを実にうまくサポートしています。