2012年12月15日土曜日

「森と湖の国フィンランド・デザイン」 



生活に密着したデザイン

Candlestick 6405 FRANCK, KAJ



 最近、北欧のデザインが元気ですね!雑誌やカタログ、街中でよく見かけたりと、日々の生活で眼に入らない日がないと言ってもいいのではないでしょうか? 特にフィンランドのデザインは生活に密着しているというか、デザインやフォルムに無理がなく飽きが来ないように思います。
 フィンランドと言えば、皆さんは何を思い起こされるでしょうか? 「年中寒い国」、「ムーミンの生まれ故郷」、「携帯ブランドNOKIAの国」、「ビレンやニッカネンのようなスーパーアスリートが輩出される国」、「森と湖の国」、「オーロラの美しい国」等々、どれもフィンランドの特徴の一つであることに変わりありません……。

 でも今、間違いなく注目されているのが、「生活に溶け込むデザイン」を生みだし続けているプロダクトデザインにあるのではないでしょうか。中でも「機能性に優れ、シンプルでかつ美しい」というデザインの理想形を実現しているのがフィンランドのガラス食器ではないかと思います。カイ・フランクを筆頭としたフィンランド・グラスアートの伝統は厳しくも豊かな自然と人間性が溶け合って誕生し、今に受け継がれているのです!

 決して強烈な個性をアピールするわけではないのだけれど、ここに確かな存在感、時代を超えて語り続けられるようなモノ作りの原点があるのではないでしょうか。 この展覧会「森と湖の国フィンランド・デザイン」は18世紀後半~1920年代を黎明期、1930年代を躍進期、1950年代を黄金期、196070年代を転換期、その後~現代と時系列で区切り、その時代を代表する作品を紹介しています。

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 フィンランドのガラスや陶磁器、家具の数々は、機能性を重視しつつ、美しさも兼ね備えています。なかでも“timeless design product(時代を超えた製品)”をコンセプトに作られてきた生活用品は、私たちの暮らしに洗練されたデザイン性をもたらし、まさに「生活の中の美」といえるでしょう。20世紀前半から台頭したフィンランドのデザインは、アルヴァル&アイノ・アールト夫妻、カイ・フランク、タピオ・ヴィルッカラ、ティモ・サルパネヴァら優れたデザイナーを輩出し、特に1950年代からは国際的な評価を得て、現在に至ります。彼らを取り巻く美しい自然と風土は、時に創作のインスピレーションとなり、作品や製品の色となり形となって溶け込んでいきました。 本展は、こうしたフィンランド・デザインの魅力を、18世紀後半から現代に至るガラス作品を中心にご紹介します。森と湖の国のデザインが繰り広げる世界を、クリスマスの到来とともにお楽しみください。[美術館サイトより]


会場    サントリー美術館 
      東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア3F
会期    2012年11月21日(水)~2013年1月20日(日)
入場料   一般=1,300(1,100/1,200)円
      高大生=1,000(800/900)円
      *( )内は前売/20人以上の団体料金
      *中学生以下は無料
休館日   火曜日、12/30~1/1
開館時間  10:00~18:00(金・土および12/23(日)、
      1/13(日)は20時まで開館、12/28と12/29は年末のため18時まで開館)
      *入館は閉館の30分前まで
問い合わせ tel. 03-3479-8600(ハローダイヤル)
主催    サントリー美術館、朝日新聞社




2012年12月9日日曜日

企画展「田中一光とデザインの前後左右」



クリエイティブに対する深い認識とポリシー





   早いものでグラフィックデザイナー田中一光が亡くなってからちょうど10年になりました。田中さんが広告、グラフィック界に与えた影響ははかりしれませんが、今まさにその功績が再評価されようとしています。
  現代はキレイに洗練された感覚でデザインをしたり、モノを作るテクニックに冴えた人が多い時代です。しかし、センセーショナルな感性や独自のポリシーを訴えることのできる人が少ない時代でもあります。

  戦後のグラフィック界に大きな足跡を残した田中さんの作品は、シンプルで洗練されているけれど見る人の心に深く刻まれるようなメッセージ性のある作品を残してきました。それもきっと田中さんのクリエイティブに対する深い認識とポリシーから生まれたからなのでしょう……

  この展覧会はすでに9月から開催されていますが、このコーナーであえて紹介させていただきました。田中さんのクリエイティブへの愛情や想いを受け止めるためにも貴重な展覧会になるかもしれません。


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日本を代表するグラフィックデザイナー 田中一光(1930~2002)は、伝統の継承から未来の洞察、東と西の国々との交流など、田中自身の言う「デザインの前後左右」を見すえたアートディレクターでもありました。

本展では、田中と仕事を共にしたクリエイティブディレクターの小池一子を展覧会ディレクターとし、琳派、浮世絵、伝統芸能など、市民の文化を熟知し、それらを視覚表現の主題として現代の創作に活写した田中の発想の広がりと表現の着地するさまを多彩にとりあげます。残された膨大な数の作品や資料を検証し、仕事の主軸となるグラフィックデザイン作品を中心に、原画や写真、記録資料など、活動の実際を示す貴重なアーカイブも紹介します。それらを通して、田中一光というクリエイターの人と仕事に迫り、デザイン思想がどのように展開し、表現されたかを探ります。

戦後からの激しい時代を伸びやかに生き抜いた田中一光の創作の軌跡をたどる本展は、現代社会へのメッセージに満ち、これからのクリエイションの新しい方向性と可能性を示唆するものとなるでしょう。(展覧会サイトより)


会場               21_21 DESIGN SIGHT 
                     東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
会期              2012921日(金)~2013120日(日)
入場料          一般=1,000800)円
                     大学生=800600)円
                     中高生=500300)円
                     *( )内は15人以上の団体料金
                     *小学生以下は無料
                     *障害者とその介護者1名は無料(要障害者手帳)
休館日           火曜日(ただし10/3012/25は開館)、年末年始(1227日~13日)
開館時間      11002000
                     *入館は閉館の30分前まで
問い合わせ   tel. 03-3475-2121
主催              21_21 DESIGN SIGHT
                     公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団



中村由利子 ディア・グリーン・フィールド(ピアノソロ・ベスト)








 いつの頃からなのか覚えていませんが、ニューエイジ・ミュージックという音楽のジャンルをこの20年あまりの間、頻繁に耳にするようになりました。 ニューエイジ・ミュージックとは自然や宇宙の調和を促す環境音楽的なイメージであったり、聴く人を癒やすヒーリング効果のある音楽を指すのだそうですね。おそらく、それだけ多くの人が癒やしを求めているということにもなるのでしょう……。
 しかしニューエイジミュージックに明確な音楽スタイルの定義があるわけでもなく、ポップス、クラシック、フュージョン、ボサノバ、ジャズ等、どんなジャンルであっても人を癒やす音楽であるならば、それが即ちニューエイジミュージックということになるのかもしれません……。
 
 ともすれば、ニューエイジで時代を築いたジョージ・ウィンストンやウィリアム・アッカーマン、エンヤといった洋楽のアーティストばかりに目が向けられることが多いのですが、日本にも加古隆、倉本裕基、久石譲、西村由紀江、中村由利子等…、素晴らしいアーティストはたくさんいます。
 今回取り挙げたいのは、写真家の前田真三さんの北海道・美瑛の自然をテーマにした映像作品『四季の丘』に曲を提供したことで話題になった中村由利子さんです。中村さんは最近では韓流ドラマに曲を提供したり、作曲で大変に好評を博しているようです。中村さんの作品には少しウエットな味わいがあり、心のひだに直接触れるような情緒が印象的です。『四季の丘』でも日本人の感性にピッタリな繊細で四季折々の移ろいゆく情感が最高でした。とにかく映像との相性がいいんですよね……。何か映像から詩が生まれてくるような独特の雰囲気を持っているんです。

 中村さんの作品との出会いは20年も前のことになると思います。テレビのCMのイメージ映像が流れてきたのですが、その時流れていたのが「パストラル」だったのです…。何てピュアな世界なんだろう……。そう思いました。眼をつぶっているだけで様々な情景が浮かんできますし、瞑想や回想のシーンが音楽によってゆるやかに心に描き出される体験をしたのです! 
 時にヨーロッパ的な洗練された感覚の楽曲があったり、クラシカルなモチーフを使ったりするのですが、それらが何の違和感もなく曲と溶け合っているところに抜群の音楽センスを感じます。

 今回推薦したいCD「ディア・グリーン・フィールド」は彼女の作品のベストチョイスをピアノのソロをメインに構成しアルバム化したもので、いわゆるアレンジによるベストアルバムと言っていいでしょう。
  驚かされるのは、心の洗われるようなピアノソロの素晴らしさです。ピアノでこれ以上ないくらいに歌っているために、展開部でオーボエやチェロ等の伴奏が出てくると懐かしさや音楽の素晴らしさを実感できるのです!

 もう1枚、「アトリエの休日」のラストに収録されている「賛歌」が本当に見事な出来栄えです。オルガンをバックに幻想的な雰囲気で導き出されるピアノのタッチは時間が止まったような感覚と自分の内面を見つめるような瞬間を与えてくれるのです。そして至福の時を約束してくれることでしょう……。