2013年5月17日金曜日

メンデルスゾーン 劇音楽「真夏の夜の夢」








 メンデルスゾーンは情景描写に因む音楽を作曲したら天下一品でした。同じようにメルヘンの世界を作曲しても右に出る者がいないほどの生粋のロマンティストでした。
 たとえば陶酔するようなメロディやロマンの香りにあふれたヴァイオリン協奏曲、叙情的な無言歌などはそのような傾向をふんだんに持った作品と言っていいでしょう。同じように劇付随音楽「真夏の夜の夢」もそのような流れを汲んだ傑作です。特に「真夏の夜の夢」ではファンタジックな要素に加え、無垢な感性や優雅な気品もミックスされて輝くような夢の世界を満喫できるのです。

 クラシック音楽は数々あれど、この「真夏の夜の夢」のようにメルヘンの世界が生き生きと美しく描かれたことはなかったのではないでしょうか。メンデルスゾーンの無垢な感性と卓抜な音楽センス、音楽や文学への深い造詣があってこそ可能になったと言わざるを得ないでしょう!

 「真夏の夜の夢」は序曲のみ18歳の時に作曲されていますが、才気に富んでいますし色彩豊かな響きはすぐにメルヘンチックな世界に誘ってくれます。そしてスケルツォに入るとメンデルスゾーンの個性が全開になり、神秘的で彩り豊かな楽器の響きや表情がますますメルヘンチックな雰囲気を引き立たせていくのです。
 その後の妖精の歌のお茶目なメロディも心に残りますし、夜想曲のデリカシーに満ちたロマンチックな美しさも一度聴いたら忘れられません。間奏曲や結婚行進曲ももちろん魅力的です。

 誰もが知っているポピュラーな作品ですが、決して飽きられることがないのはとにかく全編に散りばめられた音楽がオリジナリティがあるし、何よりメンデルスゾーンの叡智の目が光っているからなのでしょう…。「真夏の夜の夢」はメンデルスゾーンの個性が最高に発揮された贅沢な名曲と言えるでしょう!

演奏はクレンペラーがフィルハーモニア管弦楽団を指揮したスタジオ録音(EMI)が非常に内容豊かな名演です。どこをとってもゆったりしたテンポで細部を彫琢しており、その表現が曲にぴったりで格調高く美しいのです!