限られた時間で……。親子の絆
映画「海洋天堂」
これは久しぶりに見た、静かに感動が迫ってくる映画です。驚いたのは主役のジェット・リー(父シンチョン役)があまりにも地味で、最初に画面に登場した時は誰なのかわからなかったことです。ハリウッドのアクションスターとして、眼光鋭く精悍な風貌が持ち味のジェット・リーのイメージはここにはありません。生気がなく、とても何かに疲れた表情をしているのです。でもそれは無理もないことなのです。なにせ医者から末期癌で、あと数か月の命と告知されているのですから……。
でもシンチョンにはそれ以上にずっと大きな問題がありました。息子のターフー(ウェン・ジャン)が自閉症で障害があるために人の手を借りないと生きていけないことです……。ターフーの母親は幼い時に亡くなってしまい、「自分が死んでしまうと、ターフーは間違いなく路頭に迷ってしまう……」そのことを恐れていたのです。子を想う不憫で切ない親の気持ちが、限られた時間や我が子を取り巻く難しい環境の中で強烈に浮かび上がってきます。映像は極端な演出や描写がなく、ある意味淡々とクールに流れていきます。しかし説明過多ではないぶん、かえってこの映画に詩的な広がりや余韻を与えているように思うのです。
この映画を支えているのは主役の二人(ジェット・リー、ウェン・ジャン)の素晴らしい演技でしょう。とにかく役柄への入れ込みようが凄いです。どこからどこまでが演技なのかわからなくなるぐらい自然で迫真の演技を展開しています。ジェット・リーはこの脚本に大いに感銘を受け、ノーギャラでいいからやりたいと語ったといいます。その名演技もなるほどという感じです。
また障害を抱えながらもピュアでおちゃめなターフーを演じるウェン・ジャンの演技も素晴らしいです!ターフーは自分で感情を表現できなかったり、時に感情をコントロールできなかったりするのですが、一方で泳いだり、イルカと戯れたりするときに天性の輝きを放ち始めるのです。
現実的な問題、親子の絆、人と人とのかかわり、生命の大きさとさまざまなことを考えさせながら静かに映画は幕を閉じます。脚本の素晴らしさとともに、撮影のクリストファー・ドイル、音楽の久石譲も映画に彩りを添えていることを申し上げておきたいと思います。この夏、多くの人に見ていただきたいおすすめの一本です。
公式サイト http://kaiyoutendo.com/index.html
上映映画館・公開日(公開予定日)
【関東・東京】
銀座 シネスイッチ銀座 7月9日
横浜 シネマ・ジャック&ベティ 9月3日
川崎 川崎市アートセンター 10月22日
千葉 千葉劇場 9月24日
伊勢崎 プレビ劇場ISESAKI 8月20日
那須塩原 フォーラム那須塩原 調整中
【北海道・東北】
札幌 シアターキノ 9月10日
八戸 フォーラム八戸 9月17日
秋田 シアター・プレイタウン 9月23日
盛岡 フォーラム盛岡 8月27日
山形 フォーラム山形 8月27日
鶴岡 鶴岡まちなかキネマ 10月29日
仙台 フォーラム仙台 8月27日
福島 フォーラム福島 10月8日
【信 越】
長野 長野ロキシー 11月19日
新潟 シネ・ウインド 10月1日
【北 陸】
金沢 シネモンド 9月10日
富山 フォルツァ総曲輪 9月24日
【東 海】
名古屋 名演小劇場 7月30日
静岡 静岡シネ・ギャラリー 9月17日
静岡 ジョイランドシネマ沼津 10月22日
浜松 シネマe_ra 9月17日
伊勢 進富座 9月3日
【近 畿】
大阪 梅田ガーデンシネマ 7月16日
京都 京都シネマ 9月
神戸 シネ・リーブル神戸 7月23日
【中国・四国】
広島 サロンシネマ 秋
福山 CINEFUKU大黒座/シネマモード 10月
尾道 シネマ尾道 11月
岡山 シネマ・クレール 11月
松山 シネマルナティック 12月
【九州・沖縄】
福岡 KBCシネマ 7月30日
大分 シネマ5 10月
長崎 セントラル劇場 8月20日
宮崎 宮崎キネマ館 10月1日
熊本 Denkikan 秋
鹿児島 ガーデンズシネマ 8月20日
那覇 桜坂劇場