2012年2月17日金曜日

ALWAYS 三丁目の夕日'64


人情とユーモア、映像で昭和の空気を巧みに描き出す








 先日、「ALWAYS三丁目の夕日'64」を観てきました。1作目からすると、約7年の歳月が経ったことになるのですが、相変わらず期待を裏切らない良い作品でした。
この作品を観て「失敗だった」と思う方はまずいないのではないでしょうか。それくらい誰もが気軽に親しめる娯楽性があるし、昔のアルバムを紐解いて古き良き時代を回想し懐かしむような特別な雰囲気があるんですね!ストーリーも非常にわかりやすく、消化不良な感じもほとんどありません!帰る時にはあったかな気持ちで映画館を後にできるのが何よりいいと思います。

 前2作のようにミニチュアを使った撮影やCGを巧みに駆使して古き良き昭和の時代を再現しているのですが、当時の空気感や詩的なイメージもよく出ており、この時代に青春時代を送ったという人にはたまらない作品でしょう!1964年は東京オリンピックの開催や新幹線が開通した年で、いわば高度経済成長のピークともいうべき年でした。希望と夢にあふれていた時代でもあったことが伝わってくるようですね…。

 前作から茶川(吉岡秀隆)と淳之介(須賀健太)の関係がこの映画の大きな柱になっているように思いますが、今回も雑誌の連載小説をめぐって様々な問題が勃発します。他にも様々なエピソードがおさまりがいいところに落ち着いて、あまりにも話が出来すぎでは…と思うこともありますが…。でもこの映画なら許せそうです。
 今回からは3D版の上映もされました。それでどんな感じに見えるのだろうかと思って3Dにしたのですが、結果としては別に無理して3Dを観なくても良かったかなという感じでしたね。個人的には3Dメガネは圧迫感があって、最後まで装着するのがとてもつらい。ただ、オープニングで東京タワーがクローズアップされ、タワーのてっぺんまでグングン上がってタイトルが現れるあたりは3Dの醍醐味充分という感じでした。

 ストーリーの展開からすると、どうやら次作もありそうですね…。時代としてはやはり70年の大阪万博あたりまで進んでしまうのかもしれません。



2012年2月14日火曜日

生誕100年ジャクソン・ポロック展



「生誕100周年ジャクソン・ポロック展」

月日が経つのは早いもので、アメリカの抽象表現主義絵画の巨匠、ジャクソン・ポロックの生誕100周年ということらしいです。それを記念して国立近代美術館では「生誕100周年ジャクソン・ポロック展」が始まりました。ポロックの作品は今も絵画の概念を覆す独自性と圧倒的な存在感で際立っています!
絵のキャンバスを「フィールド」と銘打って、さまざまな線や色彩、縦横無尽のタッチで汲めども尽きないメッセージを刻印したのでした。わずか44年の生涯でしたが、密度の濃い数々の作品は彼の生きざまをそのまま伝えているのかも知れません。この回顧展はポロックの作品の魅力を探るにはまたとない機会になるのではないでしょうか!





本展は、ポロックの生誕100年を記念して開催する日本初の回顧展です。ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、テートをはじめ、世界の名立たる美術館からポロックの重要な作品がやってきます。絵画を中心に、素描、版画を含めて約70点の出品を予定しており、初期から晩期に至るまでのポロックの仕事の全貌を紹介します。さらに、制作中のポロックを捉えた貴重な映像や写真、ポロックのアトリエの原寸大モデルや彼が使用していた特殊な画材なども併せて展示し、ポロックの制作の秘密に迫ります。このような本格的なポロックの個展は世界的に見ても稀有で、本展はジャクソン・ポロックという20世紀の伝説的画家の偉業を振り返る絶好の機会となります。[公式サイトより]

会場     東京国立近代美術館 
       東京都千代田区北の丸公園3-1
会期     2012210日(金)~56日(日)
入場料    一般=150013001200)円
       大学生=12001000900)円
       高校生=800600500)円
       *( )内は前売/20人以上の団体料金
       *中学生以下は無料
       *障害者とその介護者1名は無料(要障害者手帳)
       *24月の日曜日と祝日(211日(土)、320日(火)、430日(月))は
       高校生の観覧料が無料
休館日    月曜日(ただし3/19264/230は開館)
開館時間   10001700(金曜日は20時まで開館)
       *入館は閉館の30分前まで
問い合わせ先 tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
主催     東京国立近代美術館、読売新聞社、日本テレビ放送網
公式サイト  http://pollock100.com/



2012年2月13日月曜日

ハイドン 交響曲第103番変ホ長調「太鼓連打」







ハイドン演奏の条件を備えたミンコフスキ


 先日、マルク・ミンコフスキがハイドン交響曲集を収録した記事をアップさせていただきましたが、詳細にはあまり触れることができませんでした。ですから、今回は追加でミンコフスキのハイドン交響曲集から1曲のみ取り上げさせていただきたいと思います! 

 曲は交響曲第103番「太鼓連打」です。この曲はハイドン晩年期の傑作なのですが、104番「ロンドン」、101番「軍隊」と比べると地味であまり目立たない存在の作品です。スケール雄大で骨太な造型を持っていることはザロモンセット共通の特徴です。しかも細部の充実度は満点で、ベートーヴェンにはないユーモアとウイットに富み、あらゆる部分が生き生きと訴えかけます。

 ミンコフスキのCDでは第1楽章の最初に出てくる太鼓の入魂な演奏に驚かされます!交響曲の部分的なパートだからといって一切遠慮せず、ズシンとお腹の底に伝わるような存在感充分な響きを生み出しているのです。これぞ交響曲の真骨頂と言いたくなるような素晴らしい開始だと思います!!
 次いで主部に入ると流れるような旋律のフレージングの心地良さと楽器のみずみずしい響きに心がワクワクしてくるのを感じます。ミンコフスキはさらっと流しているようでも実は心憎いまでにツボを心得ていて、肝心のところでは雄弁に音楽が語りかけてくるように心がけているのです。

 第2、第3楽章も第1楽章と同じようにソロの響きが清澄で豊か。次々に現れる主題は様々な形に装いを変えてうれしい驚きをもたらしてくれます。

 第4楽章のフィナーレに入るとホルンの晴朗極めた響きに胸の高鳴りを覚えます!そして主部に入ると喜びにあふれた音楽が一気にとどろき渡ります!格調高く最高に洗練された形で聴き手に迫ってくるその音楽はとても幸福なひとときを届けてくれるのです。

 ミンコフスキの演奏はハイドンを演奏する上で必要な諸々の条件をすべてといっていいくらい満たしていることに驚かされます!そのひとつはユーモアとウイットに富んだ感性の表現です。それぞれの楽器の響きの持ち味を最大限に生かしたミンコフスキのセンス満点の指揮ぶりにはため息が出ます!二つめは透明感のある響きです。これは楽器のソロの澄んだ響きに如実に現れているといって言いでしょう。
 最後に「パパハイドン」の男性的なスケール感と迫力でしょう!オリジナル楽器のハイドン演奏ではこれが著しく欠けている演奏が多かったように思います。しかしミンコフスキの場合は曲に対する共感が強いのか、無意味なフレーズは見当たらなく、あらゆる部分に熱いパッションが渦巻いていることがひしひしと伝わってくるのです!