管楽器と弦楽器の響きが
ブレンドされた絶妙な味わい
作品のタイトルである二重協奏曲というのは一体どういう意味なのでしょう?
ネーミングからすると、分かるような分からないような……、きっと釈然としない方も多いのではないでしょうか。実はこれ、同じ2台の独奏楽器を使用しているという形態の協奏曲なのです。たとえばチェロ2台と、オーボエ2台で、あとは弦楽器という形式ですね…。「これじゃ、ますますイメージしにくいじゃないか」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
おっと!? 曲のタイトルで揉めていても先には進みません…。それでは本題に入っていくことにしましょう♩
ヘンデルの二重協奏曲は3曲あって、そのどれもがオラトリオの幕間に演奏される音楽として作曲されています。
二重協奏曲はヘンデルならではの独特の響きと味わいがありますね。
それは水上の音楽や王宮の花火の音楽で聴かれる管楽器と弦楽器をうまくブレンドした響きといっていいでしょう。ファゴットやホルンが奏でるスケール雄大な響きが弦楽器の格調高く繊細な響きと相まって、絶妙な味わいを醸し出すのです!
中でも第2番は豊かなメロディやソロの魅力、多彩な曲調の変化があって、私が最も愛する作品です。これだけ音楽が充実していると、もはや間奏曲というカテゴリーに置くのは勿体ない作品ですね……。
実際、第三楽章のア・テンポ・ジュストは『メサイア』の第30曲の合唱曲「門よ、お前たちのかしらを上げよ」に転用されていて、その充実度が伺われます。
この第2番で特に魅力的なのは第6楽章ア・テンポ・オルディナリオでしょう。長調と短調を行き来する陰影に満ちたテーマをオーボエとホルンが巧みに歌い交わしながら、音楽に華を添えるのが印象的です。全体として何か大きいものに包み込まれるような安心感があり、ぐんぐんと音楽が拡がっていくのはヘンデルならではの魅力と言えるでしょう。
太陽の煌めきのように強いエネルギーを発散し、美しい情感が自然に湧き上がる第二楽章アレグロも見事です!
オリジナル楽器演奏の美感を
最大限に生かしたピノック
演奏はトレヴァー・ピノック指揮イングリッシュコンサート(アルヒーフ)が音楽の美しさをとことん堪能できる名演奏です。
これはオリジナル楽器演奏によくありがちなスッと流したような演奏ではありません。
まず楽器の音色、響きのバランスが抜群です。それぞれの楽器の織りなすハーモニーの美しさが極上ですし、しかも音楽の流れが軽快そのものなのです。
それだけではなく、音楽の本質をしっかりと捉えて、深い呼吸で旋律を歌わせているため、オリジナル楽器演奏の弱点でもある楽器の響きが淡泊になることがありません。特にホルンやオーボエのソロはセンス抜群で、弦楽器の響きと美しく溶けあう情感は最高ですし、至福の時を約束してくれることでしょう!