2011年10月17日月曜日

モーツァルト 交響曲第40番ト短調K.550




カザルス晩年の魂の記録




 モーツァルトの40番(交響曲)と言えば、クラシックにあまり関心のない方でも「ああ、あの曲か!」とすぐに頭にメロディが浮かんでくることと思います。
 おそらく、この曲ほど様々なジャンルの音楽に編曲され、愛され続けるクラシック音楽はないのではないでしょうか?もちろんそれは有名な第1楽章冒頭の第1主題のことなのですが、それは音楽があまりにもよくかけているからなのでしょう!第1楽章のみ極端に有名になってしまった感じはありますが、他の楽章も魅力満載で内容の濃い名曲中の名曲です。

 特に第2楽章の深さは並大抵ではありません。しっとりとした情感で進行する変ホ長長調の楽章ですが、晩年のモーツァルトの音楽に特有の澄みきった心境や諦観が色濃く流れているのです。また、中間部で現れる心の動揺を表わすようなリズムや調性は哀愁を帯びた音楽を更に豊かにしてやみません。
  いい知れぬ哀しみをいっぱい湛えながら「辛いこと、悲しいことはあまりにも多いけれど、きっとそれも人生なんだよね…」と無邪気に微笑むモーツァルトの姿が浮かんでくるようです。

 第3楽章の厳しく立体的に練り上げられた音楽の美しさも最高です。中間部の光が射し込むような明るい音色は哀しみに彩られたこの音楽の中にあって、一時の希望の道筋のようです。

 第4楽章の壮絶な音のドラマも凄く、中間部での立体的な音の拡がりは心の葛藤と戦いながら立ちあがっていくモーツァルトを彷彿とさせます。純音楽としての美しさも格別で、どこにも隙がなく無駄のない構成は聴く人の耳を捉えて離しません。

 この曲はパブロ・カザルスがマールボロ音楽祭管弦楽団を指揮した1968年のライブ録音が最高です‼古いライブですがステレオ録音で、充分に鑑賞に耐えうる良い音質です。この時、カザルスは既に90歳を超えていたというのですから、何と言う情熱、気迫でしょうか!
 演奏は第1楽章の冒頭から嵐のような壮絶な演奏が展開されます。あまりにも厳しく甘さの一切ない表現なので、もう少し歌うところがあってもと思ってしまいますが、ツボをしっかりと押さえたこの演奏はすこぶる格調が高く思わず身が引き締まる思いがします。第2楽章のしっとりとした哀愁美も抜群で、この楽章の意味を深い感情表現で解き明かしてくれます。第3、第4楽章も魂を鼓舞するような表現が圧倒的な感動を伝えてくれます。





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