2013年4月20日土曜日

ダヴィッド「皇帝ナポレオン1世と皇后ジョゼフィーヌの戴冠式」






 この絵、とにかく凄い絵だという噂は前から聞いておりました!
 何が凄いのかというとまず最初に挙げられるのが桁違いの大きさでしょう!横が約9メートル30センチで縦が約6メートル30センチもあるというのですから、一体人間何人分に相当するのでしょうか…!?。一度目の当たりにすれば誰もがその壮大なスケールに圧倒されるといいます。この絵があるパリのルーブル美術館の中でも屈指の巨大な絵なのです。

 二番目としてはフランスの運命を変えた「ナポレオンの戴冠式」という歴史的な瞬間を描いた絵であることです。もちろん当時は写真などありませんから、歴史の重大な史実を記録するにはダヴィッドのような力量のある画家がとても重宝されたのでしょう。これだけでも、この絵は充分に価値があるといっていいでしょう。
 ナポレオンの生涯を辿るテレビのドキュメンタリー放送では必ずといっていいほどこの絵が出てきます。いわばナポレオンといえば“これ”というくらいの定番なのです!

 ただ本来であれば皇帝の戴冠式なのですからローマ教皇からナポレオンに冠が授けられるはずなのです……。しかしよく見ると、あれれ?戴冠しているのはローマ教皇ではなくナポレオンではないですか!? しかも冠を授けようとしているのは何と妻のジョセフィーヌなんですね……。つまりナポレオンはいかに皇帝としての権威が絶対的であって、それに対してはローマ教皇も口を出せないということを絵で演出したかったのでしょう。(ダヴィッドはナポレオンのお抱えの画家だったそうです)

 さまざまなエピソードに彩られたこの絵ですが、純粋に絵として鑑賞してももちろん素晴らしいです。たとえば宮殿に整然と並んだ人々の姿を浮かび上がらせる厳かな光と影のコントラストは大変美しいですし、得も言えぬ威厳と気品が伝わってきます。まさにこの一大イベントを最高にドラマチックに演出した作品であり、ナポレオン自身もこの絵には最大限の賛辞を惜しまなかったといいます……。


2013年4月18日木曜日

映画「舟を編む」


地味でマニアックだが面白い映画




 先日、映画「舟を編む」を見てきました。原作は三浦しをんさんの同名の小説です。 
 この小説は2012年の本屋大賞を受賞したということですが、映画を見ると「なるほどね!」と思わず納得してしまいます…。
 辞書編纂に没頭する人たちの物語で、とにかく一風変わった面白い映画でした。ここには凄腕の編集者やディレクターという類いの方々は出てきません。皆ちょっと個性的な愛すべき変人たちの集まりなのです。しかし、彼らは三度の飯より辞書の言葉集めや用語の注釈をすることが好きでたまらない人たちなのです!

 辞書の発刊は大変だということは漠然と分かっていたつもりだったのですが、その気が遠くなるような長期の作業期間には正直驚きました。映画の中でも出てきますが、「少なく見積もっても10年、長ければ30年もかかる」という発刊までの作業工程はおそらく常人ではできる作業ではないでしょう。要するにそこまで念入りな作業を経ないと世には出せないということなのかもしれません。この映画はいわゆる感動的とか人間の深い心の交流を描いたものではありませんが、地道に作業に没頭する姿からはこんな生き方もあるんだなと別の意味で感心させられる不思議な映画ですね。

 現代もこのような超アナログ的な作業が脈々と受け継がれていることへの新鮮な驚き……。もしかしたらこういう人たちこそ、文化の底流を支え絶やさないように苦心惨憺される方々なのかもしれないと思うことしきりでした。

 キャストはとてもいいですね!コミュニュケーション能力がなく営業をクビになり、辞書編纂部に配属された真面目一徹の馬締光也に扮する松田龍平がいい味を出しています。それを取り巻く配役も魅力的で、ベテランの編集者で辞書をライフワークのようにしてきた荒木役の小林薫、先輩で軽いノリだが渉外がうまい西岡役のオダギリ・ジョー、片時も用例採集カードを手放さない学者役の加藤剛、それぞれが本当に役にハマっていて、いささかも違和感が無く見事に演じきっているのに驚かされました。