2012年11月2日金曜日

野生のエルザ






 ずいぶん前のことになりますが、かつてテレビで大自然や動物の生態を描いた「野生の王国」や「驚異の世界」等のドキュメンタリー番組がたくさん放映されていました。これらの番組はどれも面白くて、毎回胸をワクワクしながらテレビに釘付けになって見ていたのを思い出します!考えてみればあの時代は今ほど簡単に情報を手に入れることなどできなかったし、ましてや遠い異境の地の映像を見るなど簡単ではなかったのでした……。
 それだけに毎回放映される自然の出で立ちはとても新鮮かつ驚きの連続で、「人間の常識を超えた世界が確実にあるんだな」ということをひしひしと感じたりもしたのです!

 野生のエルザ(1966年制作)はちょうどそのような動物の生態系に関心が注がれる時代に封切りされた作品でした。この映画はジョイ・アダムソンの自伝「Born Free」に基づく人間とライオンの心の交流を描いた作品で、リアリティあふれる映像は深い感動を呼び起こします。動物と人間の交流を描いた映画はたくさんありますが、「野生のエルザ」は今もって最高の感動作と言ってもいいでしょう。

 この映画の成功は全編ケニアロケを決行し、作り物ではない真実味にあふれた映像を獲得できたことが大きいのではないかと思います。特に子ライオンのエルザを育てたあげく、「自然の中で生まれたものは自然に帰すのが一番」と決心するところは大きな苦悩を伴い胸をうちます。その後、何度も挫折しながら野生に帰す試みをするアダムソン夫妻の姿はまるで実の子どもを一人立ちさせる親の姿のようです。エルザを野性に戻すことが成功し、数年後にアフリカを訪れた二人は感動の再会を果たすのでした……。

 この映画で何よりも印象に残るのは主演のビル・トラヴァースとヴァージニア・マッケナの自然な演技でしょう。二人はライオンを抱っこしたり撫でたりするのですが、どのシーンもスタントマン無しでやりきっており、その役者魂には感服いたします!
 彼らは実生活においても夫婦で、この映画を機に野生動物保護運動を精力的に始めたというのですから、役作りやアダムソン夫妻の生き方への共感の度合いも並大抵ではなかったということなのでしょう。

 ジョンバリーの音楽も壮大かつ余情の伝わってくる音楽で画面を暖かく満たします。この映画にこそふさわしい最高のスタンダードナンバーと言えるでしょう。


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