いつの頃からなのか覚えていませんが、ニューエイジ・ミュージックという音楽のジャンルをこの20年あまりの間、頻繁に耳にするようになりました。 ニューエイジ・ミュージックとは自然や宇宙の調和を促す環境音楽的なイメージであったり、聴く人を癒やすヒーリング効果のある音楽を指すのだそうですね。おそらく、それだけ多くの人が癒やしを求めているということにもなるのでしょう……。
しかしニューエイジミュージックに明確な音楽スタイルの定義があるわけでもなく、ポップス、クラシック、フュージョン、ボサノバ、ジャズ等、どんなジャンルであっても人を癒やす音楽であるならば、それが即ちニューエイジミュージックということになるのかもしれません……。
ともすれば、ニューエイジで時代を築いたジョージ・ウィンストンやウィリアム・アッカーマン、エンヤといった洋楽のアーティストばかりに目が向けられることが多いのですが、日本にも加古隆、倉本裕基、久石譲、西村由紀江、中村由利子等…、素晴らしいアーティストはたくさんいます。
今回取り挙げたいのは、写真家の前田真三さんの北海道・美瑛の自然をテーマにした映像作品『四季の丘』に曲を提供したことで話題になった中村由利子さんです。中村さんは最近では韓流ドラマに曲を提供したり、作曲で大変に好評を博しているようです。中村さんの作品には少しウエットな味わいがあり、心のひだに直接触れるような情緒が印象的です。『四季の丘』でも日本人の感性にピッタリな繊細で四季折々の移ろいゆく情感が最高でした。とにかく映像との相性がいいんですよね……。何か映像から詩が生まれてくるような独特の雰囲気を持っているんです。
中村さんの作品との出会いは20年も前のことになると思います。テレビのCMのイメージ映像が流れてきたのですが、その時流れていたのが「パストラル」だったのです…。何てピュアな世界なんだろう……。そう思いました。眼をつぶっているだけで様々な情景が浮かんできますし、瞑想や回想のシーンが音楽によってゆるやかに心に描き出される体験をしたのです!
時にヨーロッパ的な洗練された感覚の楽曲があったり、クラシカルなモチーフを使ったりするのですが、それらが何の違和感もなく曲と溶け合っているところに抜群の音楽センスを感じます。
今回推薦したいCD「ディア・グリーン・フィールド」は彼女の作品のベストチョイスをピアノのソロをメインに構成しアルバム化したもので、いわゆるアレンジによるベストアルバムと言っていいでしょう。
驚かされるのは、心の洗われるようなピアノソロの素晴らしさです。ピアノでこれ以上ないくらいに歌っているために、展開部でオーボエやチェロ等の伴奏が出てくると懐かしさや音楽の素晴らしさを実感できるのです!
もう1枚、「アトリエの休日」のラストに収録されている「賛歌」が本当に見事な出来栄えです。オルガンをバックに幻想的な雰囲気で導き出されるピアノのタッチは時間が止まったような感覚と自分の内面を見つめるような瞬間を与えてくれるのです。そして至福の時を約束してくれることでしょう……。
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