2014年4月19日土曜日

<山岳映画 特集上映>  -黎明期のドイツ映画から日本映画の名作まで-




日本やドイツの山岳映画の傑作や隠れた秀作を公開



「モンブランの嵐」(1930・トーキー版) ドイツ/白黒/スタンダード/93分
「新しき土」(1937) 日本・ドイツ合作/白黒/スタンダード/106分










 最近、富士山が世界遺産として正式に登録されましたね。富士山はますます日本を代表する名峰として訪れる人も増えていくことでしょうし、その存在価値も高まっていくことでしょう。
 さて、富士山登頂というのは今や一つのブームにもなってきていますが、その昔から登山家ならずとも、人は山に魅せられ、様々な山の難所に挑み、登頂を繰り返してきました。
 東京都写真美術館では「山」をテーマにした日本やドイツの山岳映画の傑作や隠れた秀作を2週間に渡ってお送りします。 人が山に寄せる一途な想い……、画面から伝わるドラマや人と山との切っても切り離せない関わり……。
 なぜ人は山に登るのか?なぜ人は山を見ると無性に登頂したくなるのか…。そのことに想いを馳せる意味でも大変に興味深い2週間となりそうですね。








人は何故、山に登るのか? 永遠の問いに挑む二週間!
今春3/4~5/6に開催される写真展 「黒部と槍 冠松次郎 と穂苅三寿雄」に関連した企画として、二十世紀初頭の黎明期から現在に至る《山岳映画》 の系譜を俯瞰し、回顧する特集上映を行います。
時代を超えてバトンが受け継がれ脈々と作られてきた《山岳映画》の数々を、空前の 規模のラインナップで、一挙にお楽しみいただきます。(東京都写真美術館サイトより)



<山岳映画 特集上映> 
-黎明期のドイツ映画から日本映画の名作まで-
公式ホームページ → http://www.yamaeiga.com
お問い合せ : ティアンドケイテレフィルム 03-3486-6881

上映期間 :2014年4月19日(土)~5月2日(金)
休映日 : 2014年4月21日(月)
上映時間 : 下記の【上映スケジュール】でご確認ください。

■東京都写真美術館1階ホール
 〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 
 恵比寿ガーデンプレイス内
Tel.03-3280-0099/Fax.03-3280-0033

■料金:【当日券(1プログラムにつき)】

 一般1,500円/シニア・学生・高校生・中学生・小学生・障害者手帳をお持ちの方1,000円
■各種割引: 以下の方は当日一般料金が割引になります。 
○ 当館友の会会員(会員証提示) 1,000円 
○当館で開催の展覧会半券持参者(半券1枚につき一回の割引) 1,000円 
○当館で開催の映画(「山岳映画 特集上映」を除く)半券持参者(半券1枚につき一回の割引) 1,000円
○ 三越カード・伊勢丹カード、アトレクラブビューSuicaカード会員(会員証提示) 1,000円 
○ 夫婦50割引(どちらかが50歳以上、お二人揃ってご購入の場合) 2人で2,000円 


【上映スケジュール】 印の付いた回は、予告編はありません。本編からの上映となります。
1回目作品名2回目作品名3回目作品名4回目作品名
 4/19 
(土)
10:20銀嶺の果て13:30八甲田山
4/20
(日)
10:20聖山13:00アイガー北壁16:00ヒマラヤ運命の山
4/21
(月)
休館日
4/22
(火)
10:20モンブランの嵐13:00植村直己物語16:00新しき土
4/23
(水)
10:20銀嶺の果て13:00聖職の碑16:25山の讃歌
燃ゆる若者たち
4/24
(木)
10:20山の讃歌
燃ゆる若者たち
13:30八甲田山

18:20 剱岳 点の記
4/25
(金)
10:20ヒマラヤ運命の山13:00死の銀嶺16:00聖山18:20アイガー北壁
4/26
(土)
10:20植村直己物語14:00解説トーク付特別上映
「雪の立山、針の木越え」、
「雪の薬師、槍越え」 2作品併映
4/27
(日)
10:20黒い画集
ある遭難
13:00聖職の碑16:25氷壁
4/28
(月)
10:20氷壁13:30八甲田山
4/29
(火)
10:20モンブランの嵐13:00死の銀嶺16:00ヒマラヤ運命の山
4/30
(水)
10:20聖山13:00アイガー北壁16:00新しき土
5/1
(木)
10:20山の讃歌
燃ゆる若者たち
13:00剱岳 点の記16:10黒い画集
ある遭難
18:30氷壁
5/2
(金)
10:20新しき土13:00植村直己物語16:00モンブランの嵐18:20死の銀嶺


※「氷壁」は16mmフィルムで上映致します。 
チラシ等にて、35mmフィルムでの上映予定と告知していましたが、 映写機材の事情により変更となりました。ご了承くださいませ。

(以上、東京都写真美術館サイトより)





詳細は   
公式ホームページ       http://www.yamaeiga.com
東京都写真美術館サイト  http://www.syabi.com/contents/exhibition/movie-2271.html






2014年4月13日日曜日

ドミニク・アングル 「ドーソンヴィル伯爵夫人の肖像」





ドミニク・アングル『ドーソンヴィル伯爵夫人の肖像』






アカデミックな絵の典型?

 この絵を見ていつも思うのは、アングルは人が羨むようなデッサンの達人だったのですが、決して技術に溺れる人ではなかったということです。デッサンの技術を生かしはするけれども、必要であればいくらでも形を崩したり、表現の可能性を採り入れる等、進取の気性に富んだ画家だったのです。
 この『ドーソンヴィル伯爵夫人の肖像』も、一見アカデミックな絵の典型のようにも見えますが、たとえば18世紀フランスの代表的な画家ブーシェの『ポンパドゥール夫人の肖像』と比べてみてください。


フランソワ・ブーシェ「ポンパドゥール夫人の肖像」1758年 
油彩 カンヴァス 213x165cm ミュンヘン アルテ・ピナコテーク蔵



 比べてみると、その違いに驚かれる方も多いことでしょう。
 たとえば、プーシェの『ポンパドゥール夫人の肖像』のキラキラと輝くような気品。誰が見ても優雅で美しいこの肖像画に魅せられ、ため息が出るに違いありません……。そして写真にとって変わる理想の女性像を映しとったような美のイメージは耽美的でさえあります。
 ただ、もし長い間この絵を部屋に飾っておいたとしたら飽きないのかどうかといえば、それはまた別問題ということになるでしょう…。

 つまり見て美しい肖像画と芸術的な肖像画とは少々別物だということなのです。




肖像画の概念を変えたアングル

 極端なことを言えば、アングルは伯爵夫人の生き生きとした表情や雰囲気、仕草にはそれほど関心を向けてはいません。むしろ冷たいくらいに人間的な感情や情緒の表現を拒絶したかのような独特の描写が印象的です。
 しかし、この絵はよく見るとアングル一流の冴えた技が至る所に隠されているのです。周到に練られているのはまず構図でしょう。首をかしげ、左肘の下に右手を置き、顎の下を指でちょこんと押さえる夫人のポーズは古典的な洋式美に彩られ強い存在感を放っているのです。

 それだけではありません。たとえば、熟考された色彩の配置も芸術的な香りを漂わせ秀逸です! 彩度をできるだけ抑えた室内の空間は静寂感に漲り、比較的に彩度を抑えたドレスは格調高い雰囲気を醸し出しています。そして、このずば抜けた色彩の温度感覚や彩度の対比の的確さは夫人の頭の赤いシュシュを強烈に印象づける効果を生み出しているのです。
 そのことが伯爵夫人のこちらをジッと見つめるような強い視線と神秘的な表情に引き込まれるように感じる要因なのかもしれません。

 それにしても鏡に映った夫人の後ろ姿といい、彩度を抑えた色調といい、印象的で視線を巧みに誘導するポーズといい、憎らしいほどの仕掛けや技術の裏付けがあちらこちらに施されているのです。
 アングルによって肖像画の概念は間違いなく変えられたといえるでしょう。





2014年4月8日火曜日

シューマン 交響曲第2番ハ長調作品61









なぜか人気薄の交響曲

 シューマンは全部で4つの交響曲を作曲しましたが、1番の「春」や3番の「ライン」はテーマがはっきりしていて、主題も馴染みやすく愛されている作品です。4番も前記2曲ほどではありませんが、情熱的な雰囲気が魅力だと言われ、コンサートではたびたび採り上げられる作品ですよね。

 しかし、なぜか2番だけはコンサートのプログラムに組まれることも稀ですし、人気があまりありません。人によっては「シューマンが精神を病んだ痕跡が見られる痛々しい作品だ」と断言してしまう始末です……。
 しかし、この作品をよく味わって聴いてみると、実は大変に充実した傑作だということが分かります。しかもシューマンの内なる声が最も的確に表現された交響曲と言っていいでしょう。

 特に第3楽章アダージョは深い憂愁を帯びていて、その切なさは心に深く刻まれます。ぽっかり空いた心の空白を埋めることができないまま、冷たい冬の荒野を彷徨い歩くような雰囲気を醸し出していくのです。主題や経過句を奏でるオーボエやホルンの音色が何と痛切に胸に響くことでしょうか……。

 第2楽章スケルツォも不安を掻き立てるような同一のリズムやフレーズが連続しますが、これこそがシューマンの心の叫びであり、偽らざる心境だったのではないでしょうか! 中間部で春の穏やかな光を想わせるメロディが現れ、この個性的な音楽に彩りや変化を与えているのです。

 第4楽章では第2楽章の焦燥感や第3楽章の憂愁を振り払うように、ゆったりとした足どりでスケール雄大な音楽が展開していきます。音楽が進むにつれ、様々なエピソードが多彩な表情の中に映し出されますが、終結部ではそれらをすべて呑みこむように、勝利の凱歌をあげて堂々と進んでいくのです!




カザルスの気迫がこもった名演奏

 この交響曲は明確な主題や音楽の展開が無いため、指揮者泣かせの曲と言えるかも知れません。特に第1楽章は主題の特徴が弱く、どのように曲をアプローチしていくのか苦心するところなのでしょう。

 録音自体は決して少なくありませんが、名演奏となればたった1枚しかあげることができません。
 それはカザルスがマールボロ音楽祭管弦楽団を振ったライブ演奏(SONY)です。1970年7月の録音ですから、この時カザルス93歳!  信じられないようなオケの統率力と音色のみずみずしさ!  カザルスのこの生き生きとした演奏や若々しいエネルギーは一体どこから出てくるのでしょうか?

 シューマンの2番の演奏でありがちな、どこに向かっていくのかわからないという散漫な表現が一切なく、すべてのパートにカザルスの強い意志と気迫が注がれているのがよく分かります。
 精神的にも芸術的にも深く、また極めて完成度の高い演奏と言えるでしょう。

 第3楽章の憂愁に満ちた響きは、もはや神技と言っていいのではないでしょうか。カザルスは感情移入を込めながら音楽の意味を少しずつ掘り出していくのですが、音楽から伝わってくる人生の悲哀はあまりにも痛切で深いのです。
 第1楽章での全体の方向性をはっきりと定めた有機的な響きと展開も見事の一言ですし、激烈な響きで一貫した魂の祭典のような第2楽章も「凄い!」と唸るしかありません。
そして第4楽章のさまざまなエピソードを拾い集めながら、次第に勝利の凱歌を上げていくところの集中力や気迫は凄く、音楽は稀有の生命力に沸き立って終結するのです。






2014年4月3日木曜日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2014「熱狂の日」










10周年記念の特別イベント

 今やゴールデンウイークの目玉イベントとして定着した感がある「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」ですが、今年は記念すべき10回目という事で、いつもとはチョット違う刺激的なイベントになりそうです……。
 例年は時代や国、作曲家等のテーマを絞っていましたが、今年はズバリ「10回記念 祝祭の日」。 これまでとりあげてきた作曲家たちが一堂に会してコラボするというもの……。
 詳細はよくわかりませんが、きっと様々なサプライズが用意されているのでしょう。とにかく家族揃って楽しめる数少ないコンサートイベント「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」は今年も楽しみです!

………………………………………………………………………

10回目を迎える2014年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン(LFJ。それは、まさに記念すべき特別なLFJとなります。
10回記念 祝祭の日】のテーマのもと、これまで音楽祭を彩った10人の作曲家が東京国際フォーラムに大集合! ヴィヴァルディ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、ラヴェル、ガーシュウィン──。さらに、チャイコフスキーはラフマニノフ、ショパンならリストなど、それぞれが仲間を引き連れてくるとともに、サプライズ・ゲストも登場。まさに、クラシック音楽を代表する顔ぶれが集い、10回目を祝うにふさわしい豪華なLFJがはじまります。
 3日間で、17世紀から20世紀にいたるクラシック音楽の流れを網羅。誰もが耳にしたことのある名曲の数々から知られざる傑作、LFJならではのスペシャルなコンサートまで、注目のプログラムが勢ぞろい。そして、作曲家同士の刺激が生み出したインスピレーション、ジャンルを超越した作品など、これまで気がつかなかった音楽のつながりが展開されます。
 毎回熱狂的なパフォーマンスを見せてくれるメンバーたち、そして注目の初出演アーティストたちが、どのような祝祭を繰り広げてくれるのか、要チェックです。
 いつにも増して、特別な音楽の冒険旅行になる10回目のLFJ。エキサイティングな祝祭の日へ、みなさまをご案内します。ぜひ、ご期待ください。(公式サイトより)




2014年3月29日土曜日

ラフマニノフ 「ヴォカリーズ」














人生の翳りや望郷の想いが浮かんでくる名曲

 この曲は1913年に作曲された「14の歌曲集作品34」の終曲です。「ヴォカリーズ」とは歌詞がなく、母音のみで歌う歌唱法のことで、18世紀のフランスの作曲家たちが声楽の練習曲として用いたのが最初だと言われています。

 おそらく、あまり歌詞ばかりに心を奪われないように、もっと自由な解釈で豊かな表現が出来るように……、という意味もあったのでしょう。 
 さて、現在は「ヴォカリーズと言えばラフマニノフ」というくらい、ラフマニノフの名曲のひとつとして定着してしまった感がある「ヴォカリーズ」ですが、確かにこれはラフマニノフ一世一代の名曲・名旋律ですね。

 例によって「ア~ア~」という母音で切々と哀感を漂わせて歌われるのですが、そこに漂う奥深い情感は「ヴォカリーズ」という形式だからこそ可能だったのかもしれません。人生の翳りや望郷の想い、神秘的な色合い等、様々な情景が浮かんでは消え、また感情が芽生えてきます……。

 「ヴォカリーズ」は曲の性格上、リリックソプラノで透明感のある声の持ち主が適している事は間違いないのでしょうが、曲の哀愁や情感を出すとしたら、決してそうとも言い切れないのがこの曲の難しいところです。しかも歌詞がないため、ソリストの方は自分で表現をアプローチして組み立てていかなければならないところが最大の難所かもしれません。 

 かつての名ソプラノ、アンナ・モッフォが収録した録音は情緒・雰囲気・歌唱共に最高です。決して誇張する事のない自然な歌唱なのですが、様々な情景が次第に開けてくるような情感は他の盤からは聴けないものです。ゆるやかに聴く人の心を包みこむように流れていく歌は時の流れが止まったかのようにさえ思われます。






2014年3月22日土曜日

忘れられないアーティストたち  フルトヴェングラー(1)

           
















ベートーヴェンの唯一無二の魅力

 フルトヴェングラーがこの世を去ってから既に60年ほどの歳月が流れました。返す返すも残念なのは、彼がステレオ録音時代に入る前に世を去ってしまったということです。もしせめて、あと5年だけでも生きていてくれたならば、おそらくステレオ録音の名演奏も数多く残していてくれたのだろう……という無念な想いがいつも胸をよぎるのです。

 私にとってフルトヴェングラーという人は巨匠、天才指揮者という以上に、演奏芸術や指揮の奥深さを実感させてくれた水先案内人という印象が強いのです。彼が残した数々の名演奏の中でも圧倒的に素晴らしいのは、やはりベートーヴェンの交響曲でしょう。特に第9と第5、第3「英雄」は今もなお比較する盤がないくらい別格的な演奏と言っても過言ではありません。

 第9は有名なバイロイト盤をはじめとして、ライブ演奏も含めると何と8回も録音しており、いかにこの曲の本質を理解し、共感していたかを物語っているといえるでしょう。



第9の魅力を教えてくれたフルトヴェングラーの名演

 この曲の最大の関門は抽象的で神秘的な第1楽章です。この楽章が最初にあるため「第9は難しい」と敬遠される方も少なくないのではないかと思います。「哲学的」であるとか「形而上学的」と評されるように、理屈で音楽を表現しようとしても何も語りかけない難解な音楽で、多くの指揮者が表現に苦心惨憺するところなのです。    
 バーンスタインやカラヤンが指揮した第1楽章を聴いた時はまったく意味が理解できず、ますます第9は遠い存在になってしまったことを覚えています……(^_^;)。

 ところがフルトヴェングラーの第9の第1楽章はまったく違いました! それは今や伝説的とも評される有名なバイロイト盤との出会いでした。冒頭からまるで別世界で音が鳴っているような苦渋に満ちた重々しい響きやスケール雄大な独特の雰囲気に満たされ、一瞬にして私の心をつかんで離さなくなったのです…。
この時初めてベートーヴェンの第9の本当の偉大さを実感しましたし、また、こんなにも芸術的に第9を振る指揮者が世の中にいたのか!という驚きと感動が心の中を熱いもので満たしていったのです。

 以来、ベートーヴェンの第9の第1楽章は大好きになり、俄然フルトヴェングラーの芸術は心の奥深くに記憶されたのでした。 今なおこの第1楽章を深遠に意味深く伝えてくれた人は後にも先にもフルトヴェングラーしかいません。もちろん第2楽章のテンポの流動を伴う強靱な意志力の表出、時間の経過を忘れるような第3楽章の深い瞑想と崇高な祈り、そしてコーラスと管弦楽が渾然一体となった恐るべき第4楽章等の素晴らしさは言うまでもないでしょう! 

(第2回に続く)










2014年3月19日水曜日

「赤松陽構造と映画タイトルデザインの世界」








『東京裁判』(1983年、小林正樹監督)赤松氏によるタイトルデザイン






文字の訴求力の強さ=映画タイトルデザイン


 私たちがいつも接している大事な情報に「文字」があります。
 本の表紙には必ず書籍タイトルがありますし、展覧会や演劇のチラシにも必ずタイトル文字が使われています。最近ではWebデザインの世界でもポイントになるフォントの役割の大きさがクローズアップされています。  

 しかし「文字」は見やすい、わかりやすいだけでなく、人の心に忘れられない印象や作品の世界を植え付けることこそ大きな醍醐味なのです! 
 この文字をどう見せるか、扱うかは制作者のセンスと技量にかかってきますし、訴求効果の高い、とてもやりがいのある作業といっていいでしょう。

 さて、東京国立近代美術館で4月より開催される「赤松陽構造と映画タイトルデザインの世界」は、そのような「文字」の効果を最大限に生かした芸術をご紹介する展覧会です。映画の世界をより端的に表現したといってもいい、様々な表情を持った赤松陽構造氏の文字の世界……。
 出来上がった作品を拝見すると、制作者の息づかいが伝わってくるような気がするのですが……。
 この展覧会では無声映画時代からのタイトルデザインの歴史についても同時に紹介されるとのこと。楽しみな展覧会です。






 題名のない映画はありません。どんな映画も、題名とともに観客の記憶に刻まれてゆきます。そして、上映が始まる時、題名の文字がどのようにスクリーンに現われるかも映画の楽しみの一つでしょう。字体や大きさや色、動き方によって題字やクレジットタイトルが映画に与える効果は大きく異なりますが、それを具体的な形にし、映画の魅力を高めるのがタイトルデザインという仕事です。そのためにはデザイン力の高さだけではなく、作品世界の的確な把握、文字を描くための技術的熟練、そして鋭敏なインスピレーションが求められます。
 この展覧会「赤松陽構造と映画タイトルデザインの世界」では、現代の映画タイトルデザイン界の第一人者である赤松陽構造氏の業績を紹介するとともに、無声映画時代から華やかな字体で映画を彩ってきた日本のタイトルデザインの歴史についても解説します。『東京裁判』(1983年)のタイトルで大きく注目された赤松氏は、これまで黒木和雄・北野武・黒沢清・阪本順治・周防正行監督作など400以上の作品にタイトルを提供し、現代日本映画を支えてきました。つい忘れられがちながら、常に映画の本質を担ってきた映画文字の芸術をお楽しみください。(展覧会・公式サイトより)


赤松陽構造  あかまつ・ひこぞう
1948
年、東京都中野区生まれ。1969年に急逝した父親の跡を継いで映画タイトルデザインの仕事を始めてから、現在までに400以上の作品を担当、現代日本の映画タイトルを代表するデザイナーとなる。日本タイポグラフィ協会会員。第66回毎日映画コンクール特別賞、文化庁映画賞[映画功労部門]を受賞(いずれも2012年)。(展覧会サイトより)


展覧会構成

・映画のタイトルデザインとは
・日本の映画タイトルデザインの歴史
・赤松陽構造の映画タイトルデザイン
・赤松陽構造の仕事部屋


会期     2014415()810()
       *月曜日および527日(火)から529日(木)は休室です。
開室時間   11:00am-6:30pm(入室は6:00pmまで)
休室日    月曜日
観覧料    一般210円(100円)/大学生・シニア70円(40円)/高校生以下
       及び18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)、MOMATパスポート 
       をお持ちの方、キャンパスメンバーズは無料

       *消費税増税に伴い、201441日以降、一般(個人)の観覧料を
       210円に改定いたします。
       *料金は常設の「NFCコレクションでみる 日本映画の歴史」の
       入場料を含みます。
       *( )内は20名以上の団体料金です。
       *学生、シニア(65歳以上)、障害者、キャンパスメンバーズの
       方はそれぞれ入室の際、証明できるものをご提示ください。
       *フィルムセンターの上映企画をご覧になった方は当日に限り、
       半券のご提示により団体料金が適用されます。
協力     株式会社日映美術、宮下印刷株式会社