2012年1月14日土曜日

ラヴェル マ・メール・ロワ





 絵画のように色彩豊かで、夢のようなファンタジー溢れる作品!
 ラヴェルの「マ・メール・ロワ」はそのような瑞々しい感性が詰まった魅力いっぱいの作品と言えるでしょう!
 「マ・メール・ロワ」は「マザー・グース」等の子ども向けのおとぎ話を題材にした5つの小品から成るピアノ四手連弾の組曲です。この作品はそもそもピアノの連弾作品として発表されたわけですが、後に管弦楽曲として編曲されたヴァージョンは管弦楽の名手としてのラヴェルの手腕もあって、いっそう素晴らしい作品として蘇ったのでした。

 目を閉じて聴いていると情景が鮮やかに浮かんでくる曲ばかりで、その表現力、感性には改めて脱帽させられます。楽器の使い方もことごとく的を得ており、これほど雄弁でニュアンス豊かな作品も珍しいのではないでしょうか?そういうことで、この作品は才人ラヴェルのファンタジックな音楽絵本とでも言ったらいいのかもしれません。

 この作品はジャン・マルティノンがシカゴ交響楽団を振った演奏を推したいと思います。色彩豊かでありつつ、無垢な表情を醸し出すその音色はファンタジーそのものと言えるでしょう!楽器の存在感も充分なのですが、デリカシーあふれる叙情的な柔らかさにも不足しません。



人気ブログランキングへ

2012年1月7日土曜日

ベートーヴェン第九演奏会(NHK交響楽団)



スクロヴァチェフスキの第九演奏会


Stanislaw Skrowaczewski (© Toshiyuki Urano)








ベートーヴェン第九演奏会

昨年の12月22日、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキの指揮とNHK交響楽団によるベートーヴェンの第九演奏会に行ってきました。
実はスクロヴァチェフスキの指揮に接するのは今回が初めてで、はたしてどんな演奏を披露してくれるのだろうかと期待感で胸がワクワクし通しでした。

第1楽章は早めのテンポと快適な響きで始まりました。ツボをおさえた力感溢れる演奏が展開されるのですが、もっとティンパニが鳴り響いてほしいとかオーケストラの合奏部分に重量感がほしいとか思いながらも、「やっぱりこの神秘的な第1楽章を目一杯鳴り響かせるのは至難の技なのかな…」と思いつつ、あっという間に第一楽章は終わってしまったのでした。

しかし、第2楽章になるとその速めのテンポや快適な流れが水を得た魚のように生き生きとしてきます。随所に響くティンパニの響き、合奏部分も立体的でいよいよ意味深い響きを獲得していったのです!

第3楽章になるとますます充実した演奏が展開されていきました。この楽章のテーマは「傷ついた孤独な魂と回想」だと思うのですが、スクロヴァチェフスキの奏でる弦の響きは深く、哀愁に満ちた美しい音色を紡ぎ出し、この楽章を心ゆくまで堪能させてくれるのでした。

第4楽章は絶望から希望へと最も難しい感情の変化を表現しなければならないクライマックスの部分です。声楽も加わってくるため、複雑な要素が絡み合い指揮者の力量が試される音楽だと思います。しかし、スクロヴァチェフスキの場合は細部を磨き抜くよりは委細構わず正攻法で挑み、剛毅で雄大な響きを生み出しました!国立音楽大の合唱も素晴らしかったですね!単に合唱のパートとしてではなく、オーケストラの響き同様にエネルギッシュな森羅万象の響きとして響いていたところを評価したいと思います。独唱陣も力みすぎず、伸びやかな自然な発声を心がけていたのが印象的でした。年末にこのような素晴らしい第九にめぐりあえて本当によかったと思います。

こうしてコンサートが終わって思ったのは、数年前に公演されたスクロヴァチェフスキの「ミサ・ソレムニス」の演奏会のことでした。実際にこのコンサートを体験された方が異口同音に「良かった!」と言われているのを思い出し、今さらながらこの名曲の名演奏を聴き逃してしまったことが残念で仕方ないのでした。

人気ブログランキングへ

2012年1月3日火曜日

1960年から1970年代のイージーリスニングを振り返って3





イージーリスニング黄金期を振り返る3
(フランス編)


ポール・モーリア
(Paul Mauriat, 1925 - 2006)

 イージーリスニングと言えばまずポール・モーリアの名前が出てこなければやはり嘘でしょう。そう言っても不思議でないくらいポール・モーリアはイージーリスニング界に絶対的な足跡と存在感を残しました! 彼の名前を一躍有名にした「恋は水色」は全米ヒットチャートのトップを何週も記録し、哀愁が漂う独特のムードの「エーゲ海の真珠」はイージーリスニングの常識を決定的に変えました。
 その後も「蒼いノクターン」、「涙のトッカータ」、「薔薇色のメヌエット」、「オリーブの首飾り」、「想い出のランデブー」等ヒット曲を連発し、イージーリスニングの押しも押されぬ黄金時代を築いたのは皆さんもう充分ご存知のことと思います。
 音楽としてはビートを適度に利かせつつ、サンバ、ポップス、ロック調の曲を作ったりするものの、出来上がったものはモーリアサウンド以外の何物でもありませんでした。オリジナルの良さを生かしながらも
「色彩」や「輝き」を注入し、まったく別物のサウンドを作り上げた抜群のセンスは彼ならではのものだったのかもしれません。
 「聴いて気持ちいい」から「聴いて感動した」、「心に残った」音楽をはじめてイージーリスニング界で成し遂げた人こそ、ポール・モーリアであることに異論がある人はいないでしょう。


恋は水色

蒼いノクターン

レイモン・ルフェーブル
(Raymond Lefèvre, 1929 - 2008)


イージーリスニング系アーティストの中では最もクラシカルな雰囲気を持ち、彼の手にかかると通俗曲もポップスも格調高く洒落たイメージの曲に生まれ変わったものでした!色彩感や陰影に富む独特のサウンドは常に洗練されており、改めてフレンチイージーリスニングの奥深さを感じさせてくれたのでした。
ソロ楽器の使い方が非常にうまく、それぞれの楽曲を印象的で暖かみのあるものにしています。アレンジに関しては天才的な能力を発揮したものでした!特に「シバの女王」、「ソロモンの夢」、「哀しみの終わりに」などはルフェーブルでなければ実現不可能だったアレンジの名曲の代表格でしょう!


哀しみの終わりに

シバの女王




人気ブログランキングへ

2011年12月26日月曜日

1960年から1970年代のイージーリスニングを振り返って2



イージーリスニング黄金期を振り返る2
(イギリス編)




マントヴァーニー
(Mantovani, 1905 - 1980)

もし世の中にムード音楽の帝王という称号があるとするならば、マントヴァーニほどその名にふさわしい人はいなかったのではないでしょうか?それほどエレガントで上品、華麗でかつ美しいサウンドは彼らのためにあるのではないかと思われるほど見事な演奏を残してくれました。弦の響きの美しさを徹底的に追求した結果生まれたのが、あの輝くようなマントヴァーニサウンドだったのです。特に「シャルメーヌ」や「グリーンスリーブス」等で披露された磨き抜かれた響きは芸術的でさえありました!


…………………………………………………………………………………………


フランク・チャックスフィールド
(Frank Chacksfield, 1914 - 1995)


この人の場合も伝統的なヨーロッパサウンドを体現した人だと思います。
ライムライトのテーマ音楽をアレンジした叙情的なストリングスも美しいの一言でしたが、それ以上に忘れられないのは「ひき潮」です。カモメの鳴き声を入れた効果音は情緒たっぷりで、穏やかにゆったりと流れるメロディはロマンティックな情景を静かに導き出すのです。この名アレンジによって、彼の名前を記憶されている方も多いのではないでしょうか。


…………………………………………………………………………………………

ジョニー・ピアソン
(Johnny Pearson, 1925 - 2011 )

「朝もやの渚」、「二人の出会い」、「渚のシルエット」などのオリジナル曲や「ディアハンターのテーマ」、「妖精コマネチのテーマ」等、親しみやすく美しいアレンジで1980年代初めはフランク・ミルズ、リチャード・クレイダーマンらと並ぶ人気を博しました。際立った個性はありませんが、優しさに満ち溢れた音楽はとても魅力でした!




人気ブログランキングへ

2011年12月23日金曜日

1960年から1970年代のイージーリスニングを振り返って



イージーリスニング黄金期を振り返る
(アメリカ・カナダ編)


今回は趣向をちょっと変えて、〝イージーリスニング〟についてお話ししたいと思います。かつて「イージーリスニングなんてホテルやレストランの環境音楽だよ」とおっしゃる方がいらっしゃいました。確かに耳障りにならず、場を静かに盛り上げたり、邪魔にならないように作られているのですから、それはごもっともだと思います。
そのイージーリスニングですが1960年代の後半から1980年代にかけて、いわゆる黄金期と評されるような時代がありました。この時代は街角のあちこちから軽快で心を癒やすメロディが盛んに流れていたのをついこの間のことのように思い出します。

   しかも、その場の雰囲気に馴染むBGMとしてだけではなく、独立した音楽としてもメッセージ性を持ち、時代を反映した魅力のあるものだったのが印象的でした。  
残念ながら今ではイージーリスニング界にそのようなアーティストは現れていないのではないでしょうか。
そこで今回は、何回かに分けてイージーリスニング黄金期のアーティストたちや曲を振り返っていこうかと思います。















ビリー・ヴォーン
BILLY VAUGHN (1919-1991)


アメリカのイージーリスニングの音楽家で真っ先に思い浮かぶのはビリー・ヴォーンです。ビリー・ヴォーンは「波路はるかに」や「珊瑚礁の彼方に」に代表されるようなハワイアンムード調で有名な人でした。
彼の音楽はとても人なつっこく、いつも明るく微笑みかけてくるので知らず知らずのうちに元気をもらっていたといってもいいかもしれません。「Look for a Star」のような爽やかで構成力抜群のナンバーも素晴らしいと思います。




…………………………………………………………………………………………


パーシー・フェイス
PERCY FAITH (1908-1976)



パーシー・フェイスと言えばすぐに思い出されるのが「夏の日の恋」です。この作品は30年に1度出るかどうかというくらいのイージーリスニングの傑作ではないでしょうか?とにかく弦楽器のゴージャスな雰囲気と1950,60年代のアメリカンポップスをミックスしたような感覚がとても新鮮でした。





…………………………………………………………………………………………









フランク・ミルズ
Frank Mills (1943- )





フランク・ミルズと言えば、「愛のオルゴール」がとても有名ですね。この人の場合はリチャード・クレイダーマンのようにピアノを中心にした音楽が印象的でした。気軽に口ずさめるメロディが多いのですが、なぜか心に引っかかるエモーショナルな音菜が魅力でしたね。
 「街角のカフェ」「詩人と私」、「夢見るピアニスト」などいろんなところで曲が流れていたのを覚えています!自然に場の雰囲気に溶け混む音楽だったんですよね!心のどこかで記憶に残る…そういう音楽だったのだと思います。




人気ブログランキングへ

2011年12月20日火曜日

ハイドン 交響曲第96番ニ長調 Hob.I:96「奇蹟」



ミンコフスキのワクワクするハイドン!




 ミンコフスキと言えばバロックオペラやモーツァルトのオペラ等にすこぶる相性の良さを示していますが、もちろん管弦楽曲もツボにはまれば素晴らしい名演奏を披露しています。
 さて、早速ハイドンの交響曲を聴いての感想ですが、結論から言うとどれもこれもそれぞれに素晴らしい名演奏になっています。全体的にチャーミングな表情付けとオリジナル楽器特有の澄んだ響きが高い次元で融合していますし、胸がワクワクするような新鮮な響きが随所に聴かれるのです。
 何より、ミンコフスキのパワフルで豪放な表現やスッキリした造形がいい意味でプラスに作用し、ハイドンにピッタリの音楽を奏でているのかもしれません。少し前まではハイドンの交響曲の演奏と言えば、「つまらない」、「型にはまっている」というのが通説のようになっていましたが、このミンコフスキの演奏を聴けばもう過去の話になるのかもしれませんね。

 今回はその中で割合に地味で、比較的に演奏される機会の少ない第96番「奇蹟」をとりあげてみようと思います。
 第1楽章は強烈な個性はないものの、何度聴いても飽きないよく練られた構成と音楽の充実感が目を見張らせます。第2楽章でヴァイオリンに導かれて展開される人懐っこい主題や再現部の生きる喜びを謳歌するかのようなメロディは純粋無垢な世界の極みといったらいいのでしょうか!?第3楽章、第4楽章ともに単純なリズムや和音から充実した音楽を生み出し、驚くほどの効果を引き出しています!

 これまで96番の名演奏と言うとワルターが振ったCBS盤くらいしか浮かんできませんでした。しかし、この演奏はそれに肩を並べるか、みずみずしい表情、新鮮さではワルター盤を上回る名演奏となったのです。ミンコフスキの演奏の特徴は特に緩徐楽章で顕著に表れています!たとえば弦楽器が柔らかい響きで瞑想を奏で、ヴァイオリンやファゴット等の独奏部分を引き立てていることです。つまり心地よい楽器の対話がなされているということなのでしょう!もちろん全体の造型も格調高く、あいまいなところ、通り一辺倒なところがありません。

 オリジナル楽器の透明な響きを生かしつつも、音楽性に満ち溢れ、モダン楽器の演奏以上に雄弁な響きを獲得したミンコフスキのハイドンはこれからハイドン演奏のひとつの標準になっていくのでしょうか?
 





人気ブログランキングへ

2011年12月19日月曜日

フェルメールからのラブレター展




ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer
《手紙を読む青衣の女》"Girl Reading a Letter"
1663-64年頃 油彩・キャンヴァス
アムステルダム国立美術館、アムステルダム市寄託
© Rijksmuseum, Amsterdam. On loan from the City of Amsterdam (A. van der Hoop Bequest)


フェルメールの作品が最近頻繁に日本で公開されるようになりました!他の絵画ではなかなか見られない静謐で気品に満ちた画風はやはり大きな魅力です。今回は手紙をモチーフにした三部作が公開されるとのこと……。本当に楽しみです!フェルメールが絵に託したメッセージを数百年という時を超えて感じることが出来ればうれしいですね…。

………………………………………………………………………………………

2011年、未だかつて観ることのできなかったフェルメール作品が初めて来日。 
現在、アムステルダム国立美術館で修復作業が行われている≪手紙を読む青衣の女≫が修復後、本国オランダより先駆けてこの日本で世界初公開。
フェルメール・ブルーとも言われる、当時としても大変貴重なラピスラズリを砕いた顔料ウルトラマリンの青の輝きが、フェルメールのこだわった当時の光と色彩の世界とともに、長い時を経て蘇り・・・私達の前に姿をあらわします。
 またとないこの歴史的来日にご期待ください。
更に、日常描写を美しく描きとることを得意としたフェルメール作品の中で、とりわけ重要なモチーフとなっている「手紙」作品の中から、ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵≪手紙を書く女≫と、アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵 ≪手紙を書く女と召使い≫の2作品が満を持して再来日。
 30数点の数少ない作品の中で、フェルメールは「手紙」をテーマにした作品を数多く残しています。彼自身がこだわりを持ったこの「手紙」というモチーフに隠されたメッセージを、是非会場で感じて頂ければと思います。(公式サイトより)

………………………………………………………………………………………

【開催概要】
会期    2011年12月23日(金・祝)~2012年3月14日(水)
会場    Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横)
〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1-B1F
開催時間  午前10時~午後7時(入場は各閉館の30分前まで)
※毎週金・土曜日は午後9時まで(12月30日、31日を除く)
休館日   1月1日(日)のみ
お問合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)
主催    Bunkamura、テレビ朝日、朝日放送、
                  博報堂DYメディアパートナーズ
特別協力  朝日新聞社
特別協賛  大和ハウス工業株式会社
後援    オランダ王国大使館
協力    KLMオランダ航空
公式サイト http://vermeer-message.com/




人気ブログランキングへ