2011年4月8日金曜日

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」





  以前、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」はベームがウィーンフィルを指揮した演奏が素晴らしいと書いたことがありました。もちろん、この演奏は文句なしに素晴らしい演奏であることに違いはないのですが、「この名曲をこの演奏だけに限定していいものだろうか?」という疑問が頭をもたげて仕方なかったのです……

 そこで今回は改めて田園交響曲で忘れられない演奏を別の観点からもう少しとりあげていきたいと思います。

 田園交響曲は自然の描写にとどまらない懐の深い曲なので、実は様々な解釈が可能なのです。たとえば、ブルーノ・ワルターがコロンビア交響楽団を振った1958年の演奏はさわやかで個々の楽器の味わいを最大限に曲調に生かしたオーソドックスな名演奏だと思います。雄弁で温もりのある響きを生み出しているのに、重々しくならないところが素晴らしく、多くの人がこの曲に抱いているイメージはほぼ包括していると言っても間違いないと思います。

 また奇数番号の交響曲の圧倒的な素晴らしさに比べ、あまり評価されていない嫌いがあるフルトヴェングラーの演奏ですが、実はこれが素晴らしい!
 特に1952年のウィーンフィルとのスタジオ録音は忘れられません。第1楽章のどこまでも深く奥行きのある響き!決して楽しい雰囲気をイメージしているわけではありませんし、光が燦燦と照らすような情景を表現しているわけでもありません。フルトヴェングラーは瞑想に浸るように、ある時は大気の流れに身を任せながら自分自身を見つめるように内省的な響きを生み出しているのです。
 それでもスケールが大きく、彫りの深い響きは最高で、「田園」にはこんなに深い精神性が眠っていたのか?と改めて驚かされるのです。

 むしろ、大自然の叡智や偉大さを伝えるという意味ではこれが本当の「田園」なのでは?と思うところも少なくありません。ともすれば「田園交響曲」=さわやかというイメージを連想しがちなのですが、ここで聴かれる田園は自然に宿る神の崇高なメッセージを描いているのです。そして自然への感謝と祈りが随所に顔を覗かせているのです。





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2011年3月21日月曜日

公共広告機構のCM



  11日に突然発生した東日本大震災は、信じられないような被害を東北各地にもたらしてしまいました。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。ご家族、ご親族、ご友人等を亡くされた方、連絡が取れない方、まだ安否が確認されない方におかれましては大変辛く不安な日々をお過ごしのことと思います。一刻も早く、ご無事が確認されますことを深くお祈りする次第です。そして、何よりも早く平穏な日常が戻り、1日も早く地域の復興がなされることを願ってやみません。

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公共広告機構CM

  現在、テレビでは今回の震災の情報を伝える番組がほとんどですが、CMのほうは自粛するという意味もあって一般の企業のCMはあまり流されておりません。
 その代わりに震災の情報とともに、絶えず目にするのが公共広告機構のCMです。何度も見ているうちに次のフレーズがとても気になってしまいました。


見える気持ちに。

「心はみえないけど心使いはみえる」
「思いはみえないけど思いやりはみえる」



 じっくり見ると、とても考えさせられるCMです。公共広告機構(AC)のCMはかつてTVで度々放映されていましたが、最近は以前に比べると放送が減少気味のような気がします。
出来映えが素晴らしいものもたくさんありますが、中には???と思うものも決して無いわけではありません。

しかし、以前放映されたこのCMはとても印象に残っています。


命を大切に 






命は大切だ。
命を大切に。
そんなこと、何千何万回、言われるより、
「あなたが大切だ」
誰かが、そう言ってくれたら、
それだけで、生きていける。



このキャッチフレーズがとても印象に残ったのを覚えています。

「あなたが大切だ」という一言の重さ、一人の人間のかけがえのない価値を愛情を込めて表現した素晴らしいフレーズだと思いますし、教育の現場にも一石を投じるような意味のある作品だと思います。(栗山千明さんの訴えるような表情も凄い!)
このようなCMを見るとACが広告を作る価値は充分あるのではないでしょうか。

さらに今後も素晴らしいキャッチコピーや映像で、心に響くCMを作り続けてほしいと願うばかりです。

2011年3月11日金曜日

クロード・ドビュッシー ベルガマスク組曲







ドビュッシーの初期の名曲


 今回も前回に引き続きドビュッシーのピアノ作品について書きたいと思います。「ベルガマスク組曲」もドビュッシーの初期のピアノ作品ですが、この作品も魅力いっぱいです。作品の構成は4つの曲(プレリュード、メヌエット、月の光、パスピエ)から成り立っていますが、それぞれ性格のまったく違う単独の曲を集めて組曲としたものなのです。
 19世紀ロマン派の影響を受けながらも既に自分のスタイルを確立しているドビュッシーの当時のスタイルは非常に親しみやすいのではないでしょうか? ですから、ドビュッシーをこれから聴き始めようという方にとってはこの曲はうってつけかもしれません。

 中でも「月の光」は組曲というよりは単独で演奏されることの多い、誰もが知っている名曲中の名曲です。優雅で癒しを感じさせる曲調と神秘的で無限に情景が広がっていくイメージがとても印象的ですよね!中間部では美しい旋律に郷愁と哀しみが絡み、さらに曲の情緒が深まっていくのです。
 「プレリュード」はドビュッシーにしては珍しく、空一面に虹が掛かったように輝かしくも決然とした出だしで始まります。多彩で陰影に富んだ瑞々しい音のハーモニーは希望と夢の世界が膨らんでいくようで胸がワクワクします!それにしても何という卓抜な感性でしょう!クラシック音楽から重苦しく堅い鉄条網のようなものを取り去った柔軟な音楽性には頭が下がります。
 「メヌエット」、「パスピエ」も夢に見るような美しく可愛らしい主題が連続し、洒落たリズムと共にどこまでも曲を堪能させてくれます。割合に初期の曲(完成には15年の歳月がかかっている)とは言え、どこにも押しつけがましさがなく、余分な力が入っていない自然で透明感あふれる作風はやはりとても魅力的ですね。

 この「ベルガマスク組曲」もモニク・アースが1970年に録音した演奏を推したいと思います。素直な弾き方と飾り気のない透明なアプローチがこの作品にはぴったりで、特別なことはしていませんが気品と愉悦感が音のあちこちから香り立つようです。
 パスカル・ロジェの演奏はとにかく音が美しく、澄んだ清涼な響きは心の栄養となって染み込んでくるようです。あらゆる部分の造形やリズム感も抜群で、ドビュッシーの音楽を安心して聴くことができます。









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2011年3月9日水曜日

クロード・ドビュッシー 2つのアラベスク



詩的なメッセージの素晴らしさ


ドビュッシーはピアノのための作品を数多く残しています。中でも「ベルガマスク組曲」、「亜麻色の髪の乙女」、「版画」、「映像」、「子供の領分」等とても感覚的で情景が湧き上がるような作品ですよね。
ピアノ作品の初期に作られた「アラベスク」も短いですが、なかなかの名曲です。
この曲を聴くととても心が穏やかになります……。きっと多くの皆さんもそのように感じられたことがあるのではないでしょうか。


 「アラベスク1番」はわずか3分足らずの曲ですが、その中に込められている詩的なメッセージの素晴らしさはピアノを弾いたことのある人ならば、誰もが納得することでしょう!おそらく曲を弾く人にも、聴く人にも同じような幸福感を与えてくれるはずです。
ドビュッシーは印象派の作曲家と言われ、音色に色彩的なパレットがあるとも言われています。しかしこの曲では後年のような多様で深い色彩の色調ではなく、さわやかで優しいパステルカラーの音色で統一されているのです。

 アルペジオのリズムを伴奏として流れるように開始される印象的な出だし。空気のように漂い、さわやかに風が舞っている様子であったり、穏やかな水面に照らされる光のイメージであったりと叙情的で美しい旋律が心をとらえます。
 中でも心に刻まれるのは、中間部の静寂で穏やかな光と風に満ちた日常で、ふと物思いにふけるように弾かれる心象風景的な旋律でしょう。これが何ともいえない詩的な美しさを湛えるのです。ドビュッシーの天才的な音楽センスが光った瞬間かもしれません。
 第2番の可憐で洒落たリズムの連続も聴いていてとても楽しく、自在な表情と色彩感とともに次第次第に胸が膨らんでいきます……。

 この曲はフランスの女流ピアニスト、モニク・アースが1970年に録音した演奏を推したいと思います。変に気負わずアラベスクの良さを奥ゆかしい響きの中に歪みなく伝えてくれます。しかも音は極めて上品で繊細、タッチは柔らかく、聴く人はすんなりとドビュッシーの心と結ばれていくでしょう。





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2011年3月3日木曜日

リクライニング・コンサート


あなたは聴きますか、それとも眠りますか?






リクライニング・コンサートシリーズ(10回/年)

コンサートホール初のリクライニング・シートを導入し、音楽をリラックスして聴いていただく、全く新しいタイプのコンサートシリーズです。経営母体の株式会社白寿生科学研究所がうたう健康のトータルプロデュースの一環である"ゆとりの時間"を具現化し、心地よいリラックスにより、自然に音楽の世界の没入していただけます。曲目、アーティスト名などをご存知ない方でも気軽に楽しんでいただけるよう、タイトルを楽器名などで表示し、公演時間を休憩なしの60分としました。くつろいだお席で、一流の演奏家たちによる贅沢でユニークなコンサートをお楽しみください。お席は前7列(125席)を普通席、後5列(90席)をリクライニング席としました。お好きなお席をお選びください。(HAKUJU HALL HPより)

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『リクライニング・コンサートシリーズ』これは本当に1度は体験したいコンサートです!なにせ価格がリーズナブル(2000円)な上に、演奏家が1流!ときています。時間も60分と通常のコンサートに比べると短く、クラシックコンサートにあまり馴染みがない方でも気軽に聴きにいけそうです。そして何よりもリクライニングシートでの音楽鑑賞!ゆったりと後方に背もたれを寝かせて聴くことが可能な贅沢なひととき……。もしかしたら、くせになってしまうかもしれませんね……!?


〒151-0063 東京都渋谷区富ヶ谷1-37-5 (株)白寿生科学研究所本社ビル
       Tel 03-5478-8867 Fax 03-5478-9821 
       E-mail hall@hakuju.co.jp

◯最寄駅:代々木公園駅(千代田線)徒歩5分
     代々木八幡駅(小田急線)徒歩5分
◯バス: 富ヶ谷」下車徒歩1分 渋谷駅南口下車 西口バスターミナルより10分
     渋61(初台駅行) 渋63(中野行) 渋64(中野行) 
     渋66(阿佐ヶ谷行) 渋67(笹塚循環)



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2011年3月2日水曜日

モーツァルト ヴァイオリンソナタ第21番ホ短調








 モーツァルトは生涯、さまざまなジャンルでたくさんの名曲を世に輩出してきました。そのような中でもヴァイオリンソナタはモーツァルトの作品の中では最も親しみやすく、明るい幸福感に満ちた良い作品だと思います。

 しかし、ヴァイオリンソナタの中で唯一、21番のホ短調K.304だけは、「鼻歌交じりに演奏♩」というわけには中々ならない曲です。なぜなら、この曲は遊びやのりしろのようなものがほとんど無く、モーツァルトの純粋で屈託のない気持ちが素直に表れているからなのです。
 K.304は2つの楽章のコンパクトな作りです。曲は深い悲しみの表現が印象的ですが、非常に透明感に溢れ、真実味に溢れています。特に第2楽章は美しく、みずみずしい感性がキラキラ光っており、優美なメロディに心が洗われるようですね。

 中でも印象的なのは第2楽章の中間部。ここはモーツァルトが頬を涙に濡らしながら、心に鬱積したものを静かに洗い流す場面でもあります。さまざまな映像が走馬灯のように流れる中で、安らぎや祈り、不変の愛を信じて疑わないひたむきな感情がゆるやかに交わされます。そのやりとりが何と深く心に突き刺さることでしょうか!「モーツァルトは心に天国を持っていたんだ!」と……。そう思わせられる瞬間でもあります。
 この第2楽章はヴァイオリンとピアノのリサイタルでも演奏される機会がよくあるようですね。決して難度の高い曲ではありませんが、曲の間のとり方、表情の付け方によっては演奏が生きも死にもする典型的な作品といっていいでしょう。演奏自体は苦にならないけれども、感動的な演奏をすることは難しく、それだけに演奏家冥利に尽きる曲でもあります。

 演奏はヴァイオリンのシモン・ゴールドベルクとピアノのラドゥ・ルプーによる演奏が曲の本質をピタリと捉え、情感豊かでありながら最高に息のあった演奏を展開しています。もちろんK.304以外の曲も素晴らしく、お互いが良さを引き出し合っているのが素晴らしいですね!




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2011年2月25日金曜日

ブラームス クラリネット五重奏曲ロ短調作品115






 ブラームスのクラリネット五重奏曲は昔からモーツァルトのクラリネット五重奏曲と並び、不朽の名作と言われてきました。それにしても何という弦楽器とクラリネットの柔らかくロマンティックな響きでしょうか……。

 全編を通じ、深い悲哀に満ちたメロディが続くのですが、まるで晩秋の落ち葉のように枯れた味わいは陰影を伴って心にぐんぐん溶け込んできます。、寂寥感漂う独特の雰囲気は静かに深く心に沁み、心の中の情景をも変えてしまうかのようです。

 この曲はできれば一人で聴きたい曲ですね……。あくまでも肩の力を抜き、時間を忘れ、自分を見つめなおす……。そのよう自分の心を解き放つゆとりが持てる、プライヴェートな魅力を持った曲といったらいいかも知れません。
 この作品でのブラームスの内省的な円熟の境地は凄く、誰もが一人で別世界に浸る喜びを味わえるのではないでしょうか。

 短調の曲でありながらも、アンサンブルの構成力の高さ、抜け切った崇高な旋律は重苦しく、暗いイメージを払拭しているのです。クラリネットも終始叫ばず、効果を狙った跡も皆無ですが、どこまでもまろやかで哀愁漂う響きがとても心地良く感じられるのです。

 それぞれの楽章で印象的な部分を挙げるとしたら、まず第1楽章ではクラリネットのつぶやきのような物悲しい旋律を弦楽器が優しく包むあたりでしょう。第2楽章では穏やかな木漏れ日を浴びながら安らかに平和を謳歌しています。しかし、突如として忍び寄る絶望と失意……。やがては涙をぬぐってその事実を受けとめ、また元の安らかな笑みを取り戻す……。曲が穏やかに開始されるぶん、中間部での深い慟哭は忘れられない印象を残します。
 第3楽章は小気味よいテンポと印象的な主題の登場で、ワクワクし、胸が高まっててきます。第4楽章のクラリネット、ヴァイオリン、チェロがフーガのようにテーマを変えながら美しく歌い交わす部分は非常に格調高く、ドラマチックで詩的な雰囲気を高めます。

 演奏はフックスがウイーンコンツェルトハウスを率いて、1963年に東京文化会館で録音したものを挙げたいと思います。ウイーン風の昔懐かしい響きはしっとりとしており、弦のポルタメントがかかった演奏は、このブラームスにぴったりです。とにかく、ロマンティックで哀愁に満ちた曲の雰囲気をよく伝えてくれます。






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