2011年3月9日水曜日

クロード・ドビュッシー 2つのアラベスク



詩的なメッセージの素晴らしさ


ドビュッシーはピアノのための作品を数多く残しています。中でも「ベルガマスク組曲」、「亜麻色の髪の乙女」、「版画」、「映像」、「子供の領分」等とても感覚的で情景が湧き上がるような作品ですよね。
ピアノ作品の初期に作られた「アラベスク」も短いですが、なかなかの名曲です。
この曲を聴くととても心が穏やかになります……。きっと多くの皆さんもそのように感じられたことがあるのではないでしょうか。


 「アラベスク1番」はわずか3分足らずの曲ですが、その中に込められている詩的なメッセージの素晴らしさはピアノを弾いたことのある人ならば、誰もが納得することでしょう!おそらく曲を弾く人にも、聴く人にも同じような幸福感を与えてくれるはずです。
ドビュッシーは印象派の作曲家と言われ、音色に色彩的なパレットがあるとも言われています。しかしこの曲では後年のような多様で深い色彩の色調ではなく、さわやかで優しいパステルカラーの音色で統一されているのです。

 アルペジオのリズムを伴奏として流れるように開始される印象的な出だし。空気のように漂い、さわやかに風が舞っている様子であったり、穏やかな水面に照らされる光のイメージであったりと叙情的で美しい旋律が心をとらえます。
 中でも心に刻まれるのは、中間部の静寂で穏やかな光と風に満ちた日常で、ふと物思いにふけるように弾かれる心象風景的な旋律でしょう。これが何ともいえない詩的な美しさを湛えるのです。ドビュッシーの天才的な音楽センスが光った瞬間かもしれません。
 第2番の可憐で洒落たリズムの連続も聴いていてとても楽しく、自在な表情と色彩感とともに次第次第に胸が膨らんでいきます……。

 この曲はフランスの女流ピアニスト、モニク・アースが1970年に録音した演奏を推したいと思います。変に気負わずアラベスクの良さを奥ゆかしい響きの中に歪みなく伝えてくれます。しかも音は極めて上品で繊細、タッチは柔らかく、聴く人はすんなりとドビュッシーの心と結ばれていくでしょう。





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