2013年12月5日木曜日

クロード・モネ  「グランド・ジャット島」










   印象派の画家は色彩の明度や光の表現に関しては敏感だが、マチエールの扱い方や構図、精神的な深さが今ひとつ……。という意見を聴くことがたまにあります。もちろん、印象派の画家の良さを充分に認めつつあえて苦言を呈したのでしょうが、確かにそのような傾向がまったくないわけでもありません。しかし、このモネの絵はそのような不満も払拭する大変密度の濃い絵です。 印象派というとモネ、モネ=印象派、印象派=モネのように扱われることが多い画家ですが、彼が美術史に与えた影響はとてつもなく大きいことは言うまでもありません。 
  グランド・ジャット島はパリのセーヌ川河畔の約2キロに及ぶ中州です。印象派の画家たちが風光明媚な行楽地としてこよなく愛した場所で、絵の題材としても度々扱われています。特に点描画の代名詞とも言われるスーラの「グランド・ジャット島の日曜日の午後」は有名ですね!
  モネが描いた「グランド・ジャット島」の絵からはコローのような樹々を揺らす風を感じますし、刻一刻と表情を変えつつある雲の存在感が印象的です。そして辺りを覆う空気感が素晴らしく、その時の状況が視覚だけでなく、心や身体的な感覚としてビビッドに伝わってくる感じです! これはモネ自身がいかに風景の中に入り込んでいるかの証拠ですし、描かれたタッチの見事さが画家の生気や息吹を伝えていますね!

  また遠くの工場の煙が雲と重なるような形で描かれているのが特徴ですが、モネはこの絵を通して失われつつある自然の姿を告発したかったのでしょうか……?いずれにしてもその真意は明らかではありませんし、その理由いかんによって価値を失う絵でないことは間違いないでしょう。








2013年12月2日月曜日

印象派を超えて―点描の画家たち ゴッホ、スーラからモンドリアンまで 



印象派から抽象絵画への変容




フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》 1888年 油彩/カンヴァス 64.2×80.3cm
クレラー=ミュラー美術館 © Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands




 六本木の国立新美術館で「印象派を超えて―点描の画家たち―ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」を見てきましたが、なかなか興味深い展覧会でしたね。なぜ光と色彩にあふれた印象派の絵画からクールな抽象絵画の表現様式が誕生するようになったのか、その背景が垣間見られたような気がします。
 中でも印象派の画家たちの色彩の明るさに触発され、自らの作品で技法として点描画を採り入れてみるものの、精神的にははるか彼方を見据えていたゴッホの情熱。また、スーラの分割主義に触発されたモンドリアンがその画風を模索するうちに生まれた絵の魅力。余分なものを排し、対比や連続的なリズムが織りなす緊張感や調和が美しい抽象絵画の見事さといったら……。

 時代背景や影響力、画家のポリシーのようなものを再確認しながら観ると不思議なくらい一枚一枚の絵が心に刻み込まれるものですね……。大変面白い展覧会でした。








 19世紀末から20世紀前半のヨーロッパ絵画において色彩は、外界の事物を再現するという役割から次第に解放され、ひとつの表現として自立していきます。色彩の独立は、印象派の筆触分割に、その萌芽を見出すことができます。新印象派の代表的な画家であるスーラは、印象派の感覚的な筆触分割には飽きたらず、科学的な知識をもとに独自の点描技法を開拓しました。色彩を純色の小さな点に分解して描く分割主義は、フランスを超えてヨーロッパ各地に瞬く間に広がります。そして、シニャックによる理論化にも後押しされて、抽象絵画の創設にも大きく貢献しました。オランダからパリに出たファン・ゴッホは、新印象派の技法に大きな着想を得て色彩を探求し、やはり点描を通過したモンドリアンは後年、三原色に分割された宇宙的な調和に満ちた抽象絵画へと到達したのです...国内の所蔵機関の協力も得て一堂に展示される、油彩画、水彩画、素描、約90点にも及ぶ珠玉の作品を通じ、絵画の真髄ともいえる色彩の輝きを新たな目で捉えなおします。[公式サイトより]


 

会場     国立新美術館 東京都港区六本木7-22-2
会期     2013年10月4日(金)~12月23日(月)
入場料    一般=1500(1300)円
       大学生=1200(1000)円
       高校生=800(600)円
       *( )内は前売/20人以上の団体料金
       *中学生以下は無料
       *障害者手帳をお持ちの方とその介護者1名は無料
開館時間   10:00~18:00(金曜日は20時まで)
       *入館は閉館の30分前まで
問い合わせ先 tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
主催     国立新美術館、東京新聞、NHK、NHKプロモーション
公式サイト  http://km2013.jp/





2013年11月30日土曜日

2013年ベートーヴェン 第九演奏会(東京編)




多種多彩な第九演奏会




 今年もいよいよ12月。年末にかけて全国各地でベートーヴェンの第九演奏会が頻繁に開催される季節になってきましたね。それにしてもこの1年、本当に早かったな……という思い(それだけ年をとったということなのかもしれませんが)でいっぱいです。
  いつの頃からなのか記憶が定かではありませんが、今や第九を聴いて新年を迎えようという習慣は日本の年末の風物詩として完全に定着した感があります。自分自身を見つめ整理し、新しい年に向けてスタートを切るという意味ではベートーヴェンの第九は深いですし、多くの人と感動を共有できる最適な曲なのかもしれません。いずれベートーヴェンの第九はこのブログでも取り上げたいと思っております。
  私も今年は何カ所かの第九演奏会に行ってみたいと思います。参考になるかどうかわかりませんが、東京近郊の主要な演奏会のスケジュールのみ(すみません…^_^;)、ざっとですがあげさせていただきました。






ベートーヴェン『第九』特別演奏会
曲目:ベートーヴェン / 序曲「コリオラン」 作品62
2013年12月19日(木)19:00

指揮:尾高 忠明
ソプラノ : 安井 陽子
アルト : 山下 牧子
テノール : 小原 啓楼
バリトン : 萩原 潤
合唱:東京オペラシンガーズ



サムスンスペシャル
ベートーヴェン『第九』特別演奏会
曲目:ベートーヴェン / 序曲「コリオラン」 作品62
2013年12月21日(土)14:00

指揮:尾高 忠明
ソプラノ : 安井 陽子
アルト : 山下 牧子
テノール : 小原 啓楼
バリトン : 萩原 潤
合唱:東京オペラシンガーズ



東京エレクトロン 創立50周年記念
ベートーヴェン『第九』特別演奏会
曲目:ベートーヴェン / 序曲「コリオラン」 作品62
2013年12月22日(日)15:00

指揮:尾高 忠明
ソプラノ : 安井 陽子
アルト : 山下 牧子
テノール : 小原 啓楼
バリトン : 萩原 潤
合唱:東京オペラシンガーズ




ベートーヴェン「第9」演奏会
2013年12月21日(土) 6:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学




ベートーヴェン「第9」演奏会
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
2013年12月22日(日)3:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学


ベートーヴェン「第9」演奏会
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
2013年12月23日(月・祝) 3:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学


ベートーヴェン「第9」演奏会
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
2013年12月25日(水)7:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学


FUJITSU Presents N響「第九」 Special Concert
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
2013年12月26日(木) 7:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学
オルガン:勝山雅世


バッハ/トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
ディストラー/コラール前奏曲「輝く暁の星の麗しさよ」
ヴィエルヌ/オルガンのための交響曲 第1番 ニ短調 作品14から 第6楽章
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」



都響スペシャル「第九」
ベートーヴェン(交響曲第9番ニ短調「合唱付」、他)
2013/12/24(火) 19:00開演
会場 東京文化会館大ホール (東京都) 

[指揮]エリアフ・インバル 
澤畑恵美(S) / 竹本節子(Ms) / 福井敬(T) / 福島明也(Br) 
[演奏]東京都交響楽団 [合唱]二期会合唱団
注意事項
未就学児童は入場不可。
公演などに関する
問い合わせ先
都響ガイド:03-3822-0727

都響スペシャル「第九」
ベートーヴェン(交響曲第9番ニ短調「合唱付」、他)
2013/12/25(水) 19:00開演
会場 サントリーホール大ホール (東京都) 

[指揮]エリアフ・インバル  
澤畑恵美(S) / 竹本節子(Ms) / 福井敬(T) / 福島明也(Br) 
[演奏]東京都交響楽団 [合唱]二期会合唱団
注意事項
未就学児童は入場不可。
公演などに関する
問い合わせ先
都響ガイド:03-3822-0727


都響スペシャル「第九」
ベートーヴェン(交響曲第9番ニ短調「合唱付」、他)
2013/12/26(木) 19:00開演

[指揮]エリアフ・インバル  
澤畑恵美(S) / 竹本節子(Ms) / 福井敬(T) / 福島明也(Br) 
[演奏]東京都交響楽団 [合唱]二期会合唱団
注意事項
未就学児童は入場不可。
公演などに関する
問い合わせ先
都響ガイド:03-3822-0727



【読売日本交響楽団】

久石譲 第九スペシャル
2013年12月13日(金) 19:00 NHKホール

指揮:久石譲
ソプラノ:林正子
メゾ・ソプラノ:谷口睦美
テノール:村上敏明
バス:妻屋秀和
オルガン:ジャン=フィリップ・メルカールト
合唱:栗友会と一般公募による
  
【曲目】
久石譲:バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」小組曲
久石譲:「かぐや姫の物語」より
久石譲:「Orbis」~混声合唱、オルガンとオーケストラのための
べートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」

【オフィシャルホームページ】 http://hisaishi-daiku.com 


第566回サントリーホール名曲シリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月18日(水) 19:00 サントリーホール

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 



「第九」特別演奏会
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月19日(木) 19:00 サントリーホール

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス
ソプラノ=木下美穂子
メゾ・ソプラノ=林美智子
テノール=高橋淳
バリトン=与那城敬
合唱=新国立劇場合唱団
合唱指揮=三澤洋史
【主催】読売新聞社、日本テレビ放送網、読売テレビ、読売日本交響楽団

第4回読響メトロポリタン・シリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月20日(金) 19:00 東京芸術劇場

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 

 

第161回東京芸術劇場マチネーシリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月21日(土) 14:00 東京芸術劇場

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 

 

第68回みなとみらいホリデー名曲シリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月23日(月・祝) 14:00 横浜みなとみらいホール

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 


第4回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」

会場:東京オペラシティコンサートホール 
指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 

【第1部】 
読響メンバーによる室内楽 
【第2部】 
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」 


 

第293回横浜定期演奏会<秋季>
2013年12月14日(土)

指揮:広上淳一
ソプラノ:佐藤亜希子
メゾソプラノ:金子美香
テノール:錦織健
バス:ベンノ・ショルム
他
プログラム
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》


第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月15日(日)

指揮:広上淳一
ソプラノ:佐藤亜希子
メゾソプラノ:金子美香
テノール:錦織健
バス:ベンノ・ショルム
他
プログラム
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》
 


第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月19日(木)

指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:市原愛
アルト:清水華澄
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
他
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》



ソニックシティ第九演奏会2013
2013年12月20日(金)

指揮:広上淳一
ソプラノ:森麻季
アルト:金子美香
テノール:錦織健
バリトン:ベンノ・ショルム
他
プログラム
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱付》 
 


第33回宇都宮第九合唱団演奏会
2013年12月21日(土)

指揮:高関健
ソプラノ:森麻季
アルト:金子美香
テノール:錦織健
バス:福島明也
合唱:宇都宮第九合唱団
プログラム
ベートーヴェン:オペラ《フィデリオ》序曲
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》


第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月23日(月)

指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:市原愛
アルト:清水華澄
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
他
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》



第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月26日(木)

指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:菅英三子
アルト:栗林朋子
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
他
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》
 


第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月27日(金)

指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:菅英三子
アルト:栗林朋子
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
他
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》




第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月28日(土)
指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:菅英三子
アルト:栗林朋子
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
他
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》







2013年11月22日金曜日

「ねむの木の子守歌」







優しく美しい詩

「ねむの木の子守歌」
(美智子皇后陛下作詞・山本正美作曲)

ねんねの ねむの木 眠りの木
そっとゆすった その枝に
遠い昔の 夜(よ)の調べ
ねんねの ねむの木 子守歌

薄紅の 花の咲く
ねむの木蔭で ふと聞いた
小さなささやき ねむの声
ねんね ねんねと 歌ってた

故里(ふるさと)の夜の ねむの木は
今日も歌って いるでしょか
あの日の夜の ささやきを
ねむの木 ねんねの木 子守歌



 この詩は美智子皇后様が高校時代に作られたということですが、それに山本正美さん(指揮者の故・山本直純さんの奥様で作曲家)が秋篠宮様がお生まれになった1966年に音楽をつけて話題になったのでした。歌詞を見ると情景がすーっと拡がっていくようでとても感動的です。リズミカルな美しい日本語の表現が心地よく、普通に読むだけでも心慰められますね。

 「ねむの木の子守歌」は歌詞と音楽が一つとなり、幸福なコラボレーションが成された良い例だと思います。それにしても何と優しく深い愛情に彩られた曲でしょうか。慎ましやかで女性らしい豊かな感性が光る詩と音楽だと思います。



ヘイリーの名唱

 最近この曲の素晴らしいCDが出ました。ヘイリーがシングル盤として2009年にリリースしたCDがそれです。「ねむの木の子守歌」のリリースは40数年ぶりということですが、おそらく今までのどの録音よりも素晴らしいのではないでしょうか。
 彼女の高音の澄んだ美しさは定評がありますが、驚いたのはその細やかな情感の表現です。むやみにヴィブラートをつけたり、技巧に走ったりせず、素直にさらりと歌う歌唱法がこの曲にピッタリなのです。自然な表情の変化…、言葉の端々に現れる安らぎを感じさせる声の響き、余韻……。音楽は途切れることなく乾いた地面に水がしみ込むように心を満たしていくのです。当然、少し片言の日本語なのですが、それさえも魅力に転じており、まったく嫌味がありません。ひとときの至福の時間を与えてくれる名唱だと思います。




2013年11月11日月曜日

ジョージ・キューカー マイ・フェア・レディ













1960年代のミュージカル映画の傑作


 このところ、かつてのようなミュージカル映画の傑作にお目にかかれる機会がめっきり少なくなってしまいました。「かつてのような」というのはあまりにも乱暴な言い方かもしれませんが、1950年代、1960年代のミュージカル映画黄金時代の頃に比べると輝きやオリジナリティ、演出力等、決定的な何かが足らなくなっているように思うのです…。
 「踊る大紐育」、「巴里のアメリカ人」、「ウエストサイド物語」、「雨に唄えば」、「南太平洋」、「屋根の上のヴァイオリン弾き」「サウンドオブミュージック」……。今思えば1950、60年代はミュージカル映画の傑作が目白押しでした。映像と音楽とストーリーが一体となり、見る者に強いメッセージを送っていたのでした。ミュージカル作品と言えど、芸術的な香りが強く漂っていたことを思い出します。
最近では「レミゼラブル」が話題になりましたが、残念ながらストーリー、エンターテイメント性、キャスティング等々、過去の名作とは比べるべくもありませんでした。

さて1964年に公開された「マイフェアレディ」ですが、一般的にはいろいろな評価があるのでしょうが、私にとって大変見ごたえのある楽しい映画でした。まず、映像と音楽が美しく、その芸術的な演出や流れの良さは一級品だと思います。
粗野で下品な言葉づかいが特徴の花売り娘を社交界のプリンセスへと変貌させるシンデレラストーリーなのですが、何と言ってもヒギンズ教授(レックス・ハリスン)とイライザ(オードリー・ヘップバーン)のやりとりがコミカルで味があって面白いのですよね!


ケーキのフルコースを味わうような楽しさと豪華さ


 本編は色彩が鮮やかで、オープニングから有名なナンバーが次々と流れてきます。すでにこのオープニングからしてオペラのタイトルバックを想わせて感動的! 劇中でオードリー・ヘップバーンが着る衣装や「素敵じゃない」「スペインの雨」、「踊り明かそう」、「君住む街で」等のこれぞミュージカル!と言いたいような名曲の数々、エレガントで洒落た雰囲気…と、まるでケーキのフルコースを味わうような楽しさと豪華さ……。

 そして印象的な名シーンも随所にあり、何度見ても胸がワクワクしてくるのですね。特に忘れられないのはイライザがなまりを克服した時の喜びを歌う「スペインの雨」での溌剌としたシーンや社交界デビューを果たしたイライザ(ヘップバーン)が着飾ってヒギンズ教授らの前に現れた時の澄みきった表情の美しさ…。また映画の終盤にイライザはヒギンズ教授のもとを離れるのですが、強がって外を歩く教授の心の中を行き来するのはイライザとの思い出ばかり…。いかに教授にとって彼女が自分の心の大切な位置を占めていたかを痛感させられるシーン。

 この映画は1980年代に今はない銀座のテアトル東京ヘ(リバイバル上映)二度も観に行ったことを覚えています。あの頃の感激はもはや古き良き思い出として心の中にしまっておくしかないのでしょうか……。