1960年代のミュージカル映画の傑作
このところ、かつてのようなミュージカル映画の傑作にお目にかかれる機会がめっきり少なくなってしまいました。「かつてのような」というのはあまりにも乱暴な言い方かもしれませんが、1950年代、1960年代のミュージカル映画黄金時代の頃に比べると輝きやオリジナリティ、演出力等、決定的な何かが足らなくなっているように思うのです…。
「踊る大紐育」、「巴里のアメリカ人」、「ウエストサイド物語」、「雨に唄えば」、「南太平洋」、「屋根の上のヴァイオリン弾き」「サウンドオブミュージック」……。今思えば1950、60年代はミュージカル映画の傑作が目白押しでした。映像と音楽とストーリーが一体となり、見る者に強いメッセージを送っていたのでした。ミュージカル作品と言えど、芸術的な香りが強く漂っていたことを思い出します。
最近では「レミゼラブル」が話題になりましたが、残念ながらストーリー、エンターテイメント性、キャスティング等々、過去の名作とは比べるべくもありませんでした。
粗野で下品な言葉づかいが特徴の花売り娘を社交界のプリンセスへと変貌させるシンデレラストーリーなのですが、何と言ってもヒギンズ教授(レックス・ハリスン)とイライザ(オードリー・ヘップバーン)のやりとりがコミカルで味があって面白いのですよね!
ケーキのフルコースを味わうような楽しさと豪華さ
本編は色彩が鮮やかで、オープニングから有名なナンバーが次々と流れてきます。すでにこのオープニングからしてオペラのタイトルバックを想わせて感動的! 劇中でオードリー・ヘップバーンが着る衣装や「素敵じゃない」「スペインの雨」、「踊り明かそう」、「君住む街で」等のこれぞミュージカル!と言いたいような名曲の数々、エレガントで洒落た雰囲気…と、まるでケーキのフルコースを味わうような楽しさと豪華さ……。
そして印象的な名シーンも随所にあり、何度見ても胸がワクワクしてくるのですね。特に忘れられないのはイライザがなまりを克服した時の喜びを歌う「スペインの雨」での溌剌としたシーンや社交界デビューを果たしたイライザ(ヘップバーン)が着飾ってヒギンズ教授らの前に現れた時の澄みきった表情の美しさ…。また映画の終盤にイライザはヒギンズ教授のもとを離れるのですが、強がって外を歩く教授の心の中を行き来するのはイライザとの思い出ばかり…。いかに教授にとって彼女が自分の心の大切な位置を占めていたかを痛感させられるシーン。
この映画は1980年代に今はない銀座のテアトル東京ヘ(リバイバル上映)二度も観に行ったことを覚えています。あの頃の感激はもはや古き良き思い出として心の中にしまっておくしかないのでしょうか……。
0 件のコメント:
コメントを投稿