2011年12月23日金曜日

1960年から1970年代のイージーリスニングを振り返って



イージーリスニング黄金期を振り返る
(アメリカ・カナダ編)


今回は趣向をちょっと変えて、〝イージーリスニング〟についてお話ししたいと思います。かつて「イージーリスニングなんてホテルやレストランの環境音楽だよ」とおっしゃる方がいらっしゃいました。確かに耳障りにならず、場を静かに盛り上げたり、邪魔にならないように作られているのですから、それはごもっともだと思います。
そのイージーリスニングですが1960年代の後半から1980年代にかけて、いわゆる黄金期と評されるような時代がありました。この時代は街角のあちこちから軽快で心を癒やすメロディが盛んに流れていたのをついこの間のことのように思い出します。

   しかも、その場の雰囲気に馴染むBGMとしてだけではなく、独立した音楽としてもメッセージ性を持ち、時代を反映した魅力のあるものだったのが印象的でした。  
残念ながら今ではイージーリスニング界にそのようなアーティストは現れていないのではないでしょうか。
そこで今回は、何回かに分けてイージーリスニング黄金期のアーティストたちや曲を振り返っていこうかと思います。















ビリー・ヴォーン
BILLY VAUGHN (1919-1991)


アメリカのイージーリスニングの音楽家で真っ先に思い浮かぶのはビリー・ヴォーンです。ビリー・ヴォーンは「波路はるかに」や「珊瑚礁の彼方に」に代表されるようなハワイアンムード調で有名な人でした。
彼の音楽はとても人なつっこく、いつも明るく微笑みかけてくるので知らず知らずのうちに元気をもらっていたといってもいいかもしれません。「Look for a Star」のような爽やかで構成力抜群のナンバーも素晴らしいと思います。




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パーシー・フェイス
PERCY FAITH (1908-1976)



パーシー・フェイスと言えばすぐに思い出されるのが「夏の日の恋」です。この作品は30年に1度出るかどうかというくらいのイージーリスニングの傑作ではないでしょうか?とにかく弦楽器のゴージャスな雰囲気と1950,60年代のアメリカンポップスをミックスしたような感覚がとても新鮮でした。





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フランク・ミルズ
Frank Mills (1943- )





フランク・ミルズと言えば、「愛のオルゴール」がとても有名ですね。この人の場合はリチャード・クレイダーマンのようにピアノを中心にした音楽が印象的でした。気軽に口ずさめるメロディが多いのですが、なぜか心に引っかかるエモーショナルな音菜が魅力でしたね。
 「街角のカフェ」「詩人と私」、「夢見るピアニスト」などいろんなところで曲が流れていたのを覚えています!自然に場の雰囲気に溶け混む音楽だったんですよね!心のどこかで記憶に残る…そういう音楽だったのだと思います。




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2011年12月20日火曜日

ハイドン 交響曲第96番ニ長調 Hob.I:96「奇蹟」



ミンコフスキのワクワクするハイドン!




 ミンコフスキと言えばバロックオペラやモーツァルトのオペラ等にすこぶる相性の良さを示していますが、もちろん管弦楽曲もツボにはまれば素晴らしい名演奏を披露しています。
 さて、早速ハイドンの交響曲を聴いての感想ですが、結論から言うとどれもこれもそれぞれに素晴らしい名演奏になっています。全体的にチャーミングな表情付けとオリジナル楽器特有の澄んだ響きが高い次元で融合していますし、胸がワクワクするような新鮮な響きが随所に聴かれるのです。
 何より、ミンコフスキのパワフルで豪放な表現やスッキリした造形がいい意味でプラスに作用し、ハイドンにピッタリの音楽を奏でているのかもしれません。少し前まではハイドンの交響曲の演奏と言えば、「つまらない」、「型にはまっている」というのが通説のようになっていましたが、このミンコフスキの演奏を聴けばもう過去の話になるのかもしれませんね。

 今回はその中で割合に地味で、比較的に演奏される機会の少ない第96番「奇蹟」をとりあげてみようと思います。
 第1楽章は強烈な個性はないものの、何度聴いても飽きないよく練られた構成と音楽の充実感が目を見張らせます。第2楽章でヴァイオリンに導かれて展開される人懐っこい主題や再現部の生きる喜びを謳歌するかのようなメロディは純粋無垢な世界の極みといったらいいのでしょうか!?第3楽章、第4楽章ともに単純なリズムや和音から充実した音楽を生み出し、驚くほどの効果を引き出しています!

 これまで96番の名演奏と言うとワルターが振ったCBS盤くらいしか浮かんできませんでした。しかし、この演奏はそれに肩を並べるか、みずみずしい表情、新鮮さではワルター盤を上回る名演奏となったのです。ミンコフスキの演奏の特徴は特に緩徐楽章で顕著に表れています!たとえば弦楽器が柔らかい響きで瞑想を奏で、ヴァイオリンやファゴット等の独奏部分を引き立てていることです。つまり心地よい楽器の対話がなされているということなのでしょう!もちろん全体の造型も格調高く、あいまいなところ、通り一辺倒なところがありません。

 オリジナル楽器の透明な響きを生かしつつも、音楽性に満ち溢れ、モダン楽器の演奏以上に雄弁な響きを獲得したミンコフスキのハイドンはこれからハイドン演奏のひとつの標準になっていくのでしょうか?
 





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2011年12月19日月曜日

フェルメールからのラブレター展




ヨハネス・フェルメール Johannes Vermeer
《手紙を読む青衣の女》"Girl Reading a Letter"
1663-64年頃 油彩・キャンヴァス
アムステルダム国立美術館、アムステルダム市寄託
© Rijksmuseum, Amsterdam. On loan from the City of Amsterdam (A. van der Hoop Bequest)


フェルメールの作品が最近頻繁に日本で公開されるようになりました!他の絵画ではなかなか見られない静謐で気品に満ちた画風はやはり大きな魅力です。今回は手紙をモチーフにした三部作が公開されるとのこと……。本当に楽しみです!フェルメールが絵に託したメッセージを数百年という時を超えて感じることが出来ればうれしいですね…。

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2011年、未だかつて観ることのできなかったフェルメール作品が初めて来日。 
現在、アムステルダム国立美術館で修復作業が行われている≪手紙を読む青衣の女≫が修復後、本国オランダより先駆けてこの日本で世界初公開。
フェルメール・ブルーとも言われる、当時としても大変貴重なラピスラズリを砕いた顔料ウルトラマリンの青の輝きが、フェルメールのこだわった当時の光と色彩の世界とともに、長い時を経て蘇り・・・私達の前に姿をあらわします。
 またとないこの歴史的来日にご期待ください。
更に、日常描写を美しく描きとることを得意としたフェルメール作品の中で、とりわけ重要なモチーフとなっている「手紙」作品の中から、ワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵≪手紙を書く女≫と、アイルランド・ナショナル・ギャラリー所蔵 ≪手紙を書く女と召使い≫の2作品が満を持して再来日。
 30数点の数少ない作品の中で、フェルメールは「手紙」をテーマにした作品を数多く残しています。彼自身がこだわりを持ったこの「手紙」というモチーフに隠されたメッセージを、是非会場で感じて頂ければと思います。(公式サイトより)

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【開催概要】
会期    2011年12月23日(金・祝)~2012年3月14日(水)
会場    Bunkamura ザ・ミュージアム(渋谷・東急本店横)
〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1-B1F
開催時間  午前10時~午後7時(入場は各閉館の30分前まで)
※毎週金・土曜日は午後9時まで(12月30日、31日を除く)
休館日   1月1日(日)のみ
お問合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)
主催    Bunkamura、テレビ朝日、朝日放送、
                  博報堂DYメディアパートナーズ
特別協力  朝日新聞社
特別協賛  大和ハウス工業株式会社
後援    オランダ王国大使館
協力    KLMオランダ航空
公式サイト http://vermeer-message.com/




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2011年12月16日金曜日

シューベルト 4つの即興曲 D. 899 & D. 935







 シューベルトのピアノ作品の後期の名作と言えば何と言っても2つの即興曲が挙げられるでしょう。ピアノソナタも21曲作っているのですが、シューベルトは型にはまらない変奏曲等に相性の良さを発揮するようです。
 ピアノソナタで時折見られる窮屈さはここでは微塵も見られません。創造の翼が生き生きと羽ばたいているからなのでしょう。

 どれもこれも美しい詩情に満ちた珠玉の一篇と言っていいのではないでしょうか。ピアノソナタのように全曲を無理して弾かなくても良く、それぞれが音楽として完成しているためコンサートでも1曲だけ取り出して演奏されることが多いのです。

 即興曲の中でも特に印象的なのは、D90の第1曲です。この運命的な主題は心の起伏のように美しい表情を醸し出し、多彩な変化を見せます。調と調の間を繊細に移行するのですが、それにしてもシューベルトらしい自然で理屈っぽくない、しかも心を揺さぶる音楽ですね。D90の第2曲も異国情緒溢れる三連符のリズムが印象的ですが、中間部では魔法にかけられたように神秘の国を旅し、望郷の想いにかられるのです。
 D140の第3曲は変奏曲風のメロディに幼い頃の回想が暖かい眼差しの中で鮮やかに蘇ります。甘え、憧れ、はにかみ、悲しみ、寂しさ、安らぎと数々の幼い感性が叙情詩人シューベルトの腕によって色彩豊かに展開されます。
 他にもキラキラと輝くような旋律と転調が心に染みるD140の第2曲、永遠を見つめるような緩やかで真摯なテーマが六連符のリズムに乗って流れるD90の第3曲の見事さも忘れられません。

 演奏はリリー・クラウスの1967年のヴァンガード盤が最高の1枚でしょう。これほどまでに音楽の意味を深く、愛情豊かに表現し尽くした演奏は他にはありません。もちろん作品に対する共感の度合いも並大抵のものではないのでしょうが、明らかに他のピアニストの演奏とは一味も二味も違って聴こえるのです。即興曲のような作品は聴かせるテクニックもある程度必要でしょうし、独自の表現力も大いに要求されます。そういう意味でクラウスの感性、表現力は最高と言っていいのではないでしょうか。


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2011年12月9日金曜日

ベートーヴェン ピアノソナタ第23番ヘ短調作品57「熱情」








 ベートーヴェンの数あるピアノソナタの中で最も有名で人気のある作品は「月光」ですが、最も演奏が難しいのはおそらく「ハンマークラヴィーアソナタ」でしょう。では最もベートーヴェンらしい魅力が充満している作品と言えば、皆さんはどの作品を思い出されますか?
 ある人は、有名なアダージョを持つ「悲愴」ソナタという方もいらっしゃるでしょうし、ある方は勇壮な「ワルトシュタイン」とか、ドラマティックな「テンペスト」のソナタという方もいらっしゃるに違いありません。

 しかし、私は断然「熱情」ソナタを挙げたいと思います!おそらく熱情ソナタほどドラマティックで緊密な構成を持つ作品はないでしょう。
 音の背後にある途轍もなく深い魂、一音たりともおろそかにできない切迫感はピアニストには極度の集中力と感情移入を要求します!ありとあらゆる悲壮な曲想を駆使しながらも少しも感傷的な雰囲気には陥らず、なおかつ、無類のエネルギーと真実性に満ちた音のドラマを表出しているのは見事というほかありません。曲の意味を理解すればするほど生半可な気持ちでは弾けなくなる曲ですが、それだけに曲に没頭して弾けた時の喜びや達成感は並大抵のものではないでしょう。

 この頃になるとテンペストソナタ(ピアノソナタ17番)のような明確なテーマやメロディはほとんどなくなってしまいます。
 「熱情」は交響曲第5番と同様に作品に盛り込まれた内容は、既に古典の枠を大きくはみ出しています。「さらに美しいためならば破り得ない法則は何一つない」というベートーヴェンの言葉がこれを見事に実証しているのです。
ベートーヴェンは生きている証としてどうしてもこの作品を完成させなければならなかったのです。それ位、彼の作品の中では大きな意味を持つ作品だったのでしょう!

 この作品にどことなく良く似た作品って聴いたことありませんか?そう、ショパンの「革命」のエチュードです‼ 特に主旋律の伴奏テーマは瓜二つで、かなり「熱情」の第3楽章の構成を意識していることがわかります‼
 ショパンも激しく淀みない力強いテーマを書くために、きっとベートーヴェンのピアノソナタを大いに参考にしたのでしょう!

 「熱情」はバックハウスのステレオ録音(Decca)が他を大きく引き離す圧倒的な名演奏です。ともすれば機械的になりやすい第3楽章のリズムも自信と確信に満ちて弾ききっています!第1楽章の次第に曲が盛り上がっていくところの緊張感も抜群です。揺るぎない作品への共感と理解があってこそ可能な演奏だったと言えるのではないでしょうか!





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2011年12月4日日曜日

METライヴビューィング 2011-2012シリーズ


新しいオペラの鑑賞スタイル

「METライヴビューィング2011-2012シリーズ」が始まりました。何度も申しますが、このシリーズはライブには敵わないものの音質や映像の臨場感が素晴らしく、出演歌手の表情や感情移入が見事に伝わってくる等、貴重な映像体験となるに違いありません。既にオペラの新しい鑑賞スタイルとして定着しつつあります!
これまでオペラはなかなか日本では上演されず、上演されたとしてもチケットがかなり高額で足踏みをしていた方も多かったことと思います。でもご安心ください。このライヴィングビューは気軽に映画館でオペラを楽しめるかなりいい方法かもしれません。ここでは2011年から2012年のシリーズの今後の予定をご紹介します。上映劇場、チケット料は下記のサイトでご確認ください。


Handel : Rodelinda




【第4作】
グラス / サティアグラハ
上映期間|2011年12月10日(土)~12月16日(金)
上映時間|4時間8分/休憩2回

【第5作】
ヘンデル / ロデリンダ
上映期間|2012年1月7日(土)~1月13日(金)
上映時間|4時間15分/休憩2回

【第6作】
グノー / ファウスト(新演出)
上映期間|2012年1月14日(土)~1月20日(金)
上映時間|4時間20分/休憩2回

【第7作】
ヘンデル、ヴィヴァルディ、ラモー他 / 魔法の島(世界初演)
上映期間|2012年2月11日(土)~2月17日(金)
上映時間|3時間35分/休憩1回

【第8作】
ワーグナー / ニーベルングの指環・神々の黄昏(新演出)
上映期間|2012年3月3日(土)~3月9日(金)
上映時間|6時24分/休憩2回

【第9作】
ヴェルディ / エルナーニ
上映期間|2012年3月17日(土)~3月23日(金)
上映時間|3時間49分/休憩2回

【第10作】
マスネ / マノン
上映期間|2012年5月5日(土)~5月11日(金)
上映時間|4時間8分/休憩2回

【第11作】
ヴェルディ / 椿姫
上映期間|2012年5月12日(土)~5月18日(金)
上映時間|3時間7分/休憩1回

【第12作】
ワーグナー / ニーベルングの指環 第1夜『ワルキューレ』
上映期間|2011年6月11日(土)~6月17日(金)
上映時間|5時間20分/休憩2回

すべて日本語字幕付きです。
キャストおよび作品、上映時間、スケジュールは余儀なく変更されることがございます。

MET ライブビューイング http://www.shochiku.co.jp/met/


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2011年11月28日月曜日

ヴィクトリア朝の子どもの本:イングラムコレクションより


ヴィクトリア朝の子どもの本
イングラムコレクションより


Alice’s In Wonderland (1886)

 ヴィクトリア女王がイギリスを統治していた19世紀中期から20世紀初頭は産業革命による経済発展により、国民の生活が安定し豊かな精神文化が花開いた時代でした。小説、詩、絵画においても質量ともにイギリス史上類を見ないほど充実したものだったのです。そのような中、絵と言葉を融合し、互いの長所を引き出した絵本もエポックメイキングとして誕生していきました。当時の英国作家や画家たちが本に注入した創造の鼓動はきっと現代においてもさまざまなインスピレーションを少なからず与えてくれることでしょう!

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 この展示会では、18世紀から20世紀にかけてのイギリスの児童書を中心とする当館の特別コレクション「イングラムコレクション」から、近代児童文学の黎明期にあたる19世紀の代表的な作品を中心に紹介し、現在に連なる児童文学の源流を探ります。
 この展示会では、19世紀に生まれた多様なジャンルの作品約60点を展示し、近代イギリス児童文学の成立過程を辿るとともに、ヴィクトリア朝を彩った子どもの本の魅力を紹介します。想像力にあふれた「子どものための文学」が生まれたヴィクトリア朝の子どもの本の魅力をお楽しみください。(公式サイトより)








【開催概要】
主催       国立国会図書館 国際子ども図書館
開催期間     平成23年10月5日(水)~12月25日(日)
                             ※イベント開催日(12/3(土)12時以降)も
                             展示会はご覧いただけません。
開催時間     午前9時30分〜午後5時
会場       国際子ども図書館 ホール〔3階〕 [MAP]
入場料      無料

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