2013年11月30日土曜日

2013年ベートーヴェン 第九演奏会(東京編)




多種多彩な第九演奏会




 今年もいよいよ12月。年末にかけて全国各地でベートーヴェンの第九演奏会が頻繁に開催される季節になってきましたね。それにしてもこの1年、本当に早かったな……という思い(それだけ年をとったということなのかもしれませんが)でいっぱいです。
  いつの頃からなのか記憶が定かではありませんが、今や第九を聴いて新年を迎えようという習慣は日本の年末の風物詩として完全に定着した感があります。自分自身を見つめ整理し、新しい年に向けてスタートを切るという意味ではベートーヴェンの第九は深いですし、多くの人と感動を共有できる最適な曲なのかもしれません。いずれベートーヴェンの第九はこのブログでも取り上げたいと思っております。
  私も今年は何カ所かの第九演奏会に行ってみたいと思います。参考になるかどうかわかりませんが、東京近郊の主要な演奏会のスケジュールのみ(すみません…^_^;)、ざっとですがあげさせていただきました。






ベートーヴェン『第九』特別演奏会
曲目:ベートーヴェン / 序曲「コリオラン」 作品62
2013年12月19日(木)19:00

指揮:尾高 忠明
ソプラノ : 安井 陽子
アルト : 山下 牧子
テノール : 小原 啓楼
バリトン : 萩原 潤
合唱:東京オペラシンガーズ



サムスンスペシャル
ベートーヴェン『第九』特別演奏会
曲目:ベートーヴェン / 序曲「コリオラン」 作品62
2013年12月21日(土)14:00

指揮:尾高 忠明
ソプラノ : 安井 陽子
アルト : 山下 牧子
テノール : 小原 啓楼
バリトン : 萩原 潤
合唱:東京オペラシンガーズ



東京エレクトロン 創立50周年記念
ベートーヴェン『第九』特別演奏会
曲目:ベートーヴェン / 序曲「コリオラン」 作品62
2013年12月22日(日)15:00

指揮:尾高 忠明
ソプラノ : 安井 陽子
アルト : 山下 牧子
テノール : 小原 啓楼
バリトン : 萩原 潤
合唱:東京オペラシンガーズ




ベートーヴェン「第9」演奏会
2013年12月21日(土) 6:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学




ベートーヴェン「第9」演奏会
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
2013年12月22日(日)3:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学


ベートーヴェン「第9」演奏会
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
2013年12月23日(月・祝) 3:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学


ベートーヴェン「第9」演奏会
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
2013年12月25日(水)7:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学


FUJITSU Presents N響「第九」 Special Concert
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
2013年12月26日(木) 7:00pm

指揮:エド・デ・ワールト
ソプラノ:中村恵理
アルト:加納悦子
テノール:望月哲也
バリトン:甲斐栄次郎
合唱:国立音楽大学
オルガン:勝山雅世


バッハ/トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
ディストラー/コラール前奏曲「輝く暁の星の麗しさよ」
ヴィエルヌ/オルガンのための交響曲 第1番 ニ短調 作品14から 第6楽章
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」



都響スペシャル「第九」
ベートーヴェン(交響曲第9番ニ短調「合唱付」、他)
2013/12/24(火) 19:00開演
会場 東京文化会館大ホール (東京都) 

[指揮]エリアフ・インバル 
澤畑恵美(S) / 竹本節子(Ms) / 福井敬(T) / 福島明也(Br) 
[演奏]東京都交響楽団 [合唱]二期会合唱団
注意事項
未就学児童は入場不可。
公演などに関する
問い合わせ先
都響ガイド:03-3822-0727

都響スペシャル「第九」
ベートーヴェン(交響曲第9番ニ短調「合唱付」、他)
2013/12/25(水) 19:00開演
会場 サントリーホール大ホール (東京都) 

[指揮]エリアフ・インバル  
澤畑恵美(S) / 竹本節子(Ms) / 福井敬(T) / 福島明也(Br) 
[演奏]東京都交響楽団 [合唱]二期会合唱団
注意事項
未就学児童は入場不可。
公演などに関する
問い合わせ先
都響ガイド:03-3822-0727


都響スペシャル「第九」
ベートーヴェン(交響曲第9番ニ短調「合唱付」、他)
2013/12/26(木) 19:00開演

[指揮]エリアフ・インバル  
澤畑恵美(S) / 竹本節子(Ms) / 福井敬(T) / 福島明也(Br) 
[演奏]東京都交響楽団 [合唱]二期会合唱団
注意事項
未就学児童は入場不可。
公演などに関する
問い合わせ先
都響ガイド:03-3822-0727



【読売日本交響楽団】

久石譲 第九スペシャル
2013年12月13日(金) 19:00 NHKホール

指揮:久石譲
ソプラノ:林正子
メゾ・ソプラノ:谷口睦美
テノール:村上敏明
バス:妻屋秀和
オルガン:ジャン=フィリップ・メルカールト
合唱:栗友会と一般公募による
  
【曲目】
久石譲:バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」小組曲
久石譲:「かぐや姫の物語」より
久石譲:「Orbis」~混声合唱、オルガンとオーケストラのための
べートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」

【オフィシャルホームページ】 http://hisaishi-daiku.com 


第566回サントリーホール名曲シリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月18日(水) 19:00 サントリーホール

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 



「第九」特別演奏会
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月19日(木) 19:00 サントリーホール

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス
ソプラノ=木下美穂子
メゾ・ソプラノ=林美智子
テノール=高橋淳
バリトン=与那城敬
合唱=新国立劇場合唱団
合唱指揮=三澤洋史
【主催】読売新聞社、日本テレビ放送網、読売テレビ、読売日本交響楽団

第4回読響メトロポリタン・シリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月20日(金) 19:00 東京芸術劇場

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 

 

第161回東京芸術劇場マチネーシリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月21日(土) 14:00 東京芸術劇場

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 

 

第68回みなとみらいホリデー名曲シリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」
2013年12月23日(月・祝) 14:00 横浜みなとみらいホール

指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 


第4回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」

会場:東京オペラシティコンサートホール 
指揮=デニス・ラッセル・デイヴィス 
ソプラノ=木下美穂子 
メゾ・ソプラノ=林美智子 
テノール=高橋淳 
バリトン=与那城敬 
合唱=新国立劇場合唱団 
合唱指揮=三澤洋史 

【第1部】 
読響メンバーによる室内楽 
【第2部】 
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱付き」 


 

第293回横浜定期演奏会<秋季>
2013年12月14日(土)

指揮:広上淳一
ソプラノ:佐藤亜希子
メゾソプラノ:金子美香
テノール:錦織健
バス:ベンノ・ショルム
プログラム
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》


第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月15日(日)

指揮:広上淳一
ソプラノ:佐藤亜希子
メゾソプラノ:金子美香
テノール:錦織健
バス:ベンノ・ショルム
プログラム
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》
 


第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月19日(木)

指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:市原愛
アルト:清水華澄
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》



ソニックシティ第九演奏会2013
2013年12月20日(金)

指揮:広上淳一
ソプラノ:森麻季
アルト:金子美香
テノール:錦織健
バリトン:ベンノ・ショルム
プログラム
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱付》 
 


第33回宇都宮第九合唱団演奏会
2013年12月21日(土)

指揮:高関健
ソプラノ:森麻季
アルト:金子美香
テノール:錦織健
バス:福島明也
合唱:宇都宮第九合唱団
プログラム
ベートーヴェン:オペラ《フィデリオ》序曲
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》


第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月23日(月)

指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:市原愛
アルト:清水華澄
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》



第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月26日(木)

指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:菅英三子
アルト:栗林朋子
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》
 


第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月27日(金)

指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:菅英三子
アルト:栗林朋子
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》




第九交響曲 特別演奏会2013
2013年12月28日(土)
指揮:小林研一郎[桂冠指揮者]
オルガン:長井浩美
ソプラノ:菅英三子
アルト:栗林朋子
テノール:錦織健
バリトン:青戸知
プログラム
J.S.バッハ:G線上のアリア(オルガン・ソロ)
J.S.バッハ:トッカータとフーガBWV565(オルガン・ソロ)
ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》







2013年11月22日金曜日

「ねむの木の子守歌」







優しく美しい詩

「ねむの木の子守歌」
(美智子皇后陛下作詞・山本正美作曲)

ねんねの ねむの木 眠りの木
そっとゆすった その枝に
遠い昔の 夜(よ)の調べ
ねんねの ねむの木 子守歌

薄紅の 花の咲く
ねむの木蔭で ふと聞いた
小さなささやき ねむの声
ねんね ねんねと 歌ってた

故里(ふるさと)の夜の ねむの木は
今日も歌って いるでしょか
あの日の夜の ささやきを
ねむの木 ねんねの木 子守歌



 この詩は美智子皇后様が高校時代に作られたということですが、それに山本正美さん(指揮者の故・山本直純さんの奥様で作曲家)が秋篠宮様がお生まれになった1966年に音楽をつけて話題になったのでした。歌詞を見ると情景がすーっと拡がっていくようでとても感動的です。リズミカルな美しい日本語の表現が心地よく、普通に読むだけでも心慰められますね。

 「ねむの木の子守歌」は歌詞と音楽が一つとなり、幸福なコラボレーションが成された良い例だと思います。それにしても何と優しく深い愛情に彩られた曲でしょうか。慎ましやかで女性らしい豊かな感性が光る詩と音楽だと思います。



ヘイリーの名唱

 最近この曲の素晴らしいCDが出ました。ヘイリーがシングル盤として2009年にリリースしたCDがそれです。「ねむの木の子守歌」のリリースは40数年ぶりということですが、おそらく今までのどの録音よりも素晴らしいのではないでしょうか。
 彼女の高音の澄んだ美しさは定評がありますが、驚いたのはその細やかな情感の表現です。むやみにヴィブラートをつけたり、技巧に走ったりせず、素直にさらりと歌う歌唱法がこの曲にピッタリなのです。自然な表情の変化…、言葉の端々に現れる安らぎを感じさせる声の響き、余韻……。音楽は途切れることなく乾いた地面に水がしみ込むように心を満たしていくのです。当然、少し片言の日本語なのですが、それさえも魅力に転じており、まったく嫌味がありません。ひとときの至福の時間を与えてくれる名唱だと思います。




2013年11月11日月曜日

ジョージ・キューカー マイ・フェア・レディ













1960年代のミュージカル映画の傑作


 このところ、かつてのようなミュージカル映画の傑作にお目にかかれる機会がめっきり少なくなってしまいました。「かつてのような」というのはあまりにも乱暴な言い方かもしれませんが、1950年代、1960年代のミュージカル映画黄金時代の頃に比べると輝きやオリジナリティ、演出力等、決定的な何かが足らなくなっているように思うのです…。
 「踊る大紐育」、「巴里のアメリカ人」、「ウエストサイド物語」、「雨に唄えば」、「南太平洋」、「屋根の上のヴァイオリン弾き」「サウンドオブミュージック」……。今思えば1950、60年代はミュージカル映画の傑作が目白押しでした。映像と音楽とストーリーが一体となり、見る者に強いメッセージを送っていたのでした。ミュージカル作品と言えど、芸術的な香りが強く漂っていたことを思い出します。
最近では「レミゼラブル」が話題になりましたが、残念ながらストーリー、エンターテイメント性、キャスティング等々、過去の名作とは比べるべくもありませんでした。

さて1964年に公開された「マイフェアレディ」ですが、一般的にはいろいろな評価があるのでしょうが、私にとって大変見ごたえのある楽しい映画でした。まず、映像と音楽が美しく、その芸術的な演出や流れの良さは一級品だと思います。
粗野で下品な言葉づかいが特徴の花売り娘を社交界のプリンセスへと変貌させるシンデレラストーリーなのですが、何と言ってもヒギンズ教授(レックス・ハリスン)とイライザ(オードリー・ヘップバーン)のやりとりがコミカルで味があって面白いのですよね!


ケーキのフルコースを味わうような楽しさと豪華さ


 本編は色彩が鮮やかで、オープニングから有名なナンバーが次々と流れてきます。すでにこのオープニングからしてオペラのタイトルバックを想わせて感動的! 劇中でオードリー・ヘップバーンが着る衣装や「素敵じゃない」「スペインの雨」、「踊り明かそう」、「君住む街で」等のこれぞミュージカル!と言いたいような名曲の数々、エレガントで洒落た雰囲気…と、まるでケーキのフルコースを味わうような楽しさと豪華さ……。

 そして印象的な名シーンも随所にあり、何度見ても胸がワクワクしてくるのですね。特に忘れられないのはイライザがなまりを克服した時の喜びを歌う「スペインの雨」での溌剌としたシーンや社交界デビューを果たしたイライザ(ヘップバーン)が着飾ってヒギンズ教授らの前に現れた時の澄みきった表情の美しさ…。また映画の終盤にイライザはヒギンズ教授のもとを離れるのですが、強がって外を歩く教授の心の中を行き来するのはイライザとの思い出ばかり…。いかに教授にとって彼女が自分の心の大切な位置を占めていたかを痛感させられるシーン。

 この映画は1980年代に今はない銀座のテアトル東京ヘ(リバイバル上映)二度も観に行ったことを覚えています。あの頃の感激はもはや古き良き思い出として心の中にしまっておくしかないのでしょうか……。



2013年11月4日月曜日

ラフマニノフ 交響曲第2番ホ短調作品27(2)
















最高の癒しの音楽・第3楽章アダージョ

 ラフマニノフの交響曲第2番は以前このブログでも取り上げた作品ですが、最近第3楽章がCMやBGMにイメージ音楽として使用されることが多く、改めてこの第3楽章をテーマに書いてみるのも決して無意味ではないと思いとりあげてみました。

 それにしてもこの第3楽章は素晴らしいですね。時間にして約15分ほど。単独で聴くのにもちょうどいい長さで、時間を忘れさせるような雰囲気と魅力に溢れているのです。

 真の癒しの音楽とはこういう音楽を指していうのではないかとさえ思います。「ロシアの広大な大地を思わせる…」とはよく音楽雑誌に書かれる表現ですが、それだけではなく、ここには忘れかけていた時間や記憶の名残りが自然のみずみずしい姿とともに静かに心の中に蘇るのです。
 序奏でメインテーマを吹くクラリネットの響きや遠くでこだますホルンやオーボエの響きは瞑想のように優しく奏でられ、雄大なスケール感を表出していくのです。
言ってみれば、夕映えに佇む美しい瞬間が絶えず音楽として鳴り響いているような感覚になるのです……。

 第3楽章だけでなく、他の楽章もなかなか魅力的です。特に第1楽章第1主題の淡い儚さや悲しみが次第に高潮していく情感は素晴らしく、続く第2主題の雲の隙間から光が顔を覗かせるような清々しい表情も印象的です。


ザンデルリングの真摯な演奏
美しいプレヴィンの演奏

 演奏ですが、やはり前回もご紹介したクルト・ザンデルリング指揮フィルハーモニア交響楽団の演奏が断然素晴らしいです。
 特に第3楽章から受けた様々な感動や印象はほとんどがザンデルリング盤から受けたものです。全編を通じて部分部分をデフォルメしたり、必要以上に歌わせることはなく、ゆったりとした息の長いフレーズや深い呼吸と強固な造型で貫かれていることに驚かされます。スローテンポ過ぎるという声もありますが、真摯に作品と向き合っていることが格調高く深い表情を引き出していることは間違いありません。

 ザンデルリンク盤があまりにも素晴らしいために、どうしても他の盤はそのイメージを追ってしまいがちですが、ザンデルリンク盤のようなスローテンポについていけない方やこれから聴いてみようと思われる方にはアンドレ・プレヴィン指揮ロイヤルフィルハーモニー(テラーク)の演奏が安心してお勧めできます。
 ロマンティックな表情、みずみずしい弦の響きはザンデルリンク盤以上でその響きの美しさに魅了される方も多いことでしょう。プレヴィン自身もラフマニノフ2番の録音は3回目で、いかにこの曲を愛し、共感しているかがご理解いただけるのではないでしょうか。
 映画音楽で磨かれた聴かせる表現やテクニックが見事に生かされている感じです。





2013年11月1日金曜日

劇団四季「Song & Dance 60 ようこそ劇場へ」







 先日、四季劇場(秋)で開催された劇団四季60周年記念「ソングズ&ダンスようこそ劇場へ」を観てきました。華麗なダンスはもとより、安定した歌や演出の絶妙のコンビネーションが素晴らしかったですね。特に休憩前の1部はアグレッシブでそれぞれの演目のメッセージがよく伝わってきました。
 これだけ様々な演目のミュージカルナンバーを拾ってくるということになると、全体の流れが散漫になったり、場つなぎ的になったりするものですが、そこはさすが四季だけあっていろんな趣向が凝らされていて見ていて飽きません。ただし、それは四季の演目をある程度観てきた人に言えることであって、四季の演目が初めてという方にとっては、何が出てくるのかわからない歌や踊りの玉手箱的な感覚で観ることになるでしょう。

 余計なことかもしれませんが、できれば、それぞれ違うナンバーでありながらも一つのストーリー性を持った作品として仕上げていただければ(歌やダンスは多少アレンジしたとしても…)もっともっとエキサイティングで感動的なプログラムになるのでは……と思ったりもするのですが、いかがでしょうか?
 なぜならばプログラムの曲目や演目が変わるたびに、自分の頭の中で微妙に観るモードを変えるというのは意外に疲れるし、どうも違和感があるのですね……。

 とはいうものの、踊りにはキレがあるし、歌を絡めた見せ場も多く、流れるように次々と展開される舞台の設定や演出にはやはり魅了されました。しかも要所要所での見せ方が本当にうまいです……。ハイライトを集めたプログラムですが、これならお客様は満足して家路につくことでしょう。

 感心したのはいくつかのボーカルナンバーのメインを務めた佐渡寧子さんの終始安定した歌のうまさでしょう。歌のうまさだけではなく、情感がスーッと染み込んでくるような味わい深い歌唱は圧巻でした。今後も四季にはなくてはならないボーカリストとして、その存在感は増すばかりでしょう。
 また、しなやかなダンスや透明感のある歌声が可愛らしい宮田愛さんが印象的でしたね。特にリトルマーメイドの「どんな夢より」は宮田さんのキュートな魅力が歌と踊りの中で見事に発揮されたナンバーだったように思います!
 
 公演終了後には出演された役者さんたちとの握手があり、グッと距離感が近くなった感じがしてうれしかったですね! この親近感こそが四季の真骨頂なのでしょう。






2013年10月22日火曜日

ショパン ピアノソナタ第3番ロ短調 作品58













ショパンの魅力満載の作品

 「ショパンのピアノ曲で一番魅力的な曲って何?」という声をたまに耳にします。これはなかなか難しい質問ですね……。小犬のワルツや英雄ポロネーズ、夜想曲第3番、革命エチュード……。とショパンの有名曲は枚挙にいとまがないくらいですが、上記の諸曲もすべて各作品集のいいところどりで作品としてまとまったものではないし……。
 
 でもいろいろ考えると、ショパンの魅力満載の作品がありました! それがピアノソナタ第3番です。ピアノソナタ第3番は美しいメロディや詩情、流麗なパッセージ、情熱的なパッション等、ショパンらしさが最良の形で表現された傑作なのです。「ワルツ、バラードは少々短いし、エチュードは結構難解だし、ピアノ協奏曲はロマンチック過ぎるし……」と思われている方、ご安心ください!ピアノソナタ第3番にはショパンのすべてがあると言っても決して過言ではありません。
 特に第1楽章の颯爽とした主題の提示や第四楽章の情熱の煌めきは、これぞショパンというにふさわしい聴き応え充分の音楽といっていいでしょう。

 第1楽章の主題の提示は彼の他のどの曲よりも決然として堂々とした足どりで音楽が開始されます。微動だにしないテンポとリズム、強い主張を持った第1主題は雄大なスケールを伴いドラマティックな展開がなされていきます! 続く第2主題は優美で叙情的な旋律が音楽にさらに豊かな彩りを添えます。その後も次々とあふれ出る楽想と刻一刻と表情を変える経過句が即興的な閃きの中で炸裂していくのです! 

 第2楽章スケルツォは短い音楽ですが、ここにはショパンの驚くべき才能が結集されていると言っていいでしょう。華麗でイマージネーション豊かな調べはそれだけで身体が自然と動き出しそうですし、それに続く瞑想のような中間部の転調も見事です。
 
 第3楽章は特徴のない音楽に聴こえるかもしれませんが、美しい記憶に想いを馳せるように奏でられるノクターン調の音楽がとても印象的です。透明感のある詩情がまるで移りゆく心の風景を奏でていくようで、何とも言えない余情が伝わってくるのです……。
 
 第4楽章はこの才気あふれるピアノソナタを終結するのにふさわしい音楽と言っていいでしょう。ヴィルトゥオーゾ的な華麗なテクニックや即興的な曲の構成は聴く者を興奮のるつぼに誘っていきます!まさにピアニスト冥利に尽きる最高の音楽と言えるかもしれません!

 演奏でまず選ばれるべきは、アルゲリッチ盤でしょう! これはショパンコンクールで優勝した年からまだ日が浅い1967年にグラモフォンに録音された演奏です。即興的な閃きが素晴らしく、デリカシーにみちた表情や流れるように息づく音楽の生命力が聴く者をとりこにしてしまいます。
 これに対してアシュケナージのピアノ(DECCA)は正統的かつ誰にでもその良さが伝わるようなスタンダードな名演奏と言っていいでしょう! 第1楽章のドラマチックな展開も急がず慌てず、じっくりと自分の音楽を奏でているところがいいですね。みずみずしい水晶のようなタッチはこの曲にピッタリで、奥に潜む美しさと情熱を存分に引き出しています!



2013年10月10日木曜日

ハイドン ミサ曲第3番 ハ長調 「聖チェチリア・ミサ」










型にはまらないハイドンのミサ曲

 ハイドンは生涯ミサ曲や宗教曲をたくさん作りましたが、どれをとっても型にはまらないハイドン独自の個性が光る名曲揃いと言っていいでしょう。聖チェチーリアミサはネルソンミサやテレジアミサのような有名曲に比べれば認知度で一歩譲るものの、とびきりの名曲であることに変わりありません。
 ミサ曲といえば、カトリックの典礼に従い、神の意思にかなった神聖ものでなければならないという一般的な認識があるようです。しかし、創造的な作曲家であればあるほどミサ曲に求められる最低限の制約を満たしつつも、驚くほど自由なインスピレーションに満ちた創作をしていることがわかりますね!ミサ曲を純粋な音楽作品として捉えるならば宗教的な雰囲気や体裁は二の次と言ってもいいからなのでしょう。
 その代表格がベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」、そしてハイドンの諸々の作品なのです。ハイドンのミサ曲に聴かれる屈託の無いメロディ! 絶えず笑みを絶やさない無垢な響きには心がウキウキしてきます。それだけでなく、いざという時の生命力に満ちたフーガや雄渾で輝かしい主題の展開は聴く人の心を釘付けにしてしまいます。

 聖チェチーリアミサはこのようなハイドンのミサの魅力をそのまま凝縮したような傑作です。特にグロリアは所要時間の半分を要する核心部分と言っていいでしょう。中でもドミネ・デウス(主なる神よ)はアルト、テノール、バスが順を追って歌い、最後は輪唱と重唱で歌い交わす魅力に富んだ一篇で、声が織りなす器楽的な美しい効果や陰影が存分に表現されているのです!
 またグロリアの終曲クム・サンクト・スピリトゥ(われ聖霊とともに)も晴れやかで虹がかかったような光景を描き出すテーマが印象的です。心の躍動感や永遠への想いがフーガとなって展開されるのですが、そのような中にも憂いの心や慈悲の心が滲んでおり、決して単調に流れることはないのです。


プレストン盤の美しい演奏

 この作品には素晴らしい名盤があります。それがサイモン・プレストン指揮エンシェント室内管弦楽団、オックスフォードクライストチャーチ聖歌隊、ジュディス・ネルソン、デビッド・トーマスらによる演奏(オワリゾール)なのです。1978年のデジタル録音に突入した最初の頃の録音で、音がいいのも魅力です。
 とにかく、オリジナル楽器のメリットを最大限に生かした演奏と言っていいでしょう。透明感に満ちた晴朗な響きは抜群で、クドさがなく、乾いた土に水が染み込むような潤いのある表情を引き出しています。オックスフォードクライストチャーチ聖歌隊の合唱もこの作品にぴったりで、美しく無垢な声の響きが最高です。
また、ドミネ・デウスのアルト、テノール、バスによるケレン味のない声の饗宴はきっと至福の時を約束してくれることでしょう!「ハイドンはどうも苦手だな……」という方もこの録音を聴けば、きっとハイドンを聴く喜びで満たされるに違いありません。