2018年3月7日水曜日

ラフォルジュルネTOKYO 2018










ゴールデンウイーク恒例のクラシックイベント、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」が、今年は「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」と名称を変えて華々しく開催されます! テーマは「UN MONDE NOUVEAU(モンド・ヌーヴォー)-新しい世界へ-」。

例年、様々な趣向を凝らして、クラシック音楽ファンの裾野を拡げ続けてきたこのイベント。14回目となる今回は東京国際フォーラム(125公演)以外に池袋の東京芸術劇場(53公演)でプログラムが組まれています。

公式サイトではラ・フォル・ジュルネ TOKYOの5つの魅力として、以下のポイントを掲げていますが、まったくそのとおりだと思いますね!

  • いつも新しい発見が!毎年異なる独自テーマで展開される音楽祭
  • 出演アーティストは2000人以上、300以上のコンサートを開催
  • 1公演は約45分、朝から夜までコンサートをはしごして音楽三昧
  • 一流の演奏を1500円からのリーズナブルなプライスでご提供
  • エリアコンサートなど関連プログラムも充実!街中が音楽に包まれます


今年も乞うご期待です!



2018年2月28日水曜日

ドガ 「踊りの花形」








一瞬の動きを
シャッターチャンスのように
見事に捉える

ドガほど色彩やタッチに洗練された品格を感じさせる画家は少ないかもしれません。彼もドミニク・アングルのような卓越したデッサン力の持ち主だったのでした。

ドガといえば、真っ先に連想されるのがバレリーナと競馬場の絵ではないでしょうか。
そのバレリーナの絵の代表格が「踊りの花形」です。おそらく美術の教科書やチラシやポストカード等、あらゆる媒体で目に触れる機会も多いし、ご存知の方も少なくないでしょう。
この絵の素晴らしいところは、バレリーナの最も美しいと思われる一瞬の動きをカメラのシャッターチャンスのように捉えていて、それが絵全体に躍動感を漲らせていることです!

しかも斜め上から見下ろしたバレリーナの姿態は、絵のポーズとして表現するのが、なかなか難しい位置にもかかわらず、しっかりと動きを捉えていますね……。構図の素晴らしさもありますが、それをこともなげにあっさり実現させているところに、ドガの並々ならないデッサン力と観察眼の鋭さを感じます。
光を意識した色彩やスピーディなタッチも冴えに冴えており、そのことが絵に華麗でリズミカルな流れを生み出しているのです。

また、もう一つの魅力としてあげなければならないのが、どことなく哀愁の影を漂わせているところでしょうか。色彩もタッチも洗練されているのですが、華やかな舞台の陰からはうっすらと寂寥感が伝わってきます……。スポットライトを浴びるバレリーナと舞台の裾に佇む人々との間には様々なドラマがありそうですね。そのコントラストが絵に映し出しされているような感じもするし、何とも興味深い表現です…。


2018年2月17日土曜日

「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」











ブリューゲル一族の
偉業を辿る

異空間へと誘う「雪中の狩人」やスケール雄大でありながら緻密な「バベルの塔」等、一度見たら忘れられないメッセージ性豊かな名画を残したバロック絵画の大巨匠ピーテル・ブリューゲル1世。

その偉大なブリューゲル1世を筆頭にブリューゲル家の絵画史を紐解くような展覧会、「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」が現在、東京都美術館で開催されています。

ブリューゲル1世があまりにも偉大だったため、息子たちの絵も瓜二つのようになってしまうのは致しかたないことなのかもしれません。
しかし、彼らが絵に込める思いは父の絵の絶対的な魅力や本質を後世に伝えようという高い志しの中で生まれたものであることも間違いないのです。

プライベートコレクションを中心にしたおよそ100点の絵画には、父の絵に深い共感を寄せる彼らの熱いメッセージが脈々と受け継がれているのかもしれません。






会 期   2018123()41()
会 場   企画棟 企画展示室
      休室日月曜日、213()
      夜間開室金曜日は9:3020:00
     (入室は閉室の30分前まで)
観覧料   一般 1,600 大学生・専門学校生1,300  
      高校生 800 65歳以上 1,000




2018年2月10日土曜日

モーツァルト ピアノ協奏曲第9番変ホ長調K271「ジュノーム」

















モーツァルト初期の名作

モーツァルトはあらゆる楽器の中でもピアノを愛し、ピアノに自分のありったけの想いを込めて作曲したことで有名ですが、初期の名作、ピアノ協奏曲第第9番「ジュノーム」もその好例と言えるでしょう!

特に、涙に彩られたメロディが印象的な第二楽章アンダンティーノはピアノの音色だけでなく、オーケストラにも哀しみの心が深く滲み出ていて、心を揺さぶられます。音楽が進むにつれて、その表情は幾重にも変化し、ますます憂いの想いが募っていくのです。そんな哀愁を帯びた旋律であるにもかかわらず、中間部でさり気なく無邪気な微笑みを見せるところもモーツァルトらしいですね……。

しかも、決して暗くなったり、重苦しくならないのは、モーツァルトの音楽がどこまでも澄み切っているからなのでしょう!

澄み切ったと音楽という意味では、ピアノのソロで始まる主題が印象的な第三楽章ロンド-アレグロもそうかもしれません! まるで青空にぐんぐん舞い上がっていくような、この透明感、飛翔感は一体何なのでしょうか。

この二つの楽章に対して対照的なのが、肩の力を抜いて口ずさむように音楽が開始される第一楽章です。平凡で何でもないように聴こえたりもするのですが、全体的に聴く人の心と耳を拒まず、水が土に染みこむような受容度の高い音楽になっているのです。また、随所に光と風を感じさせる音楽性の高さも魅力と言えるでしょう!


解釈や演奏が難しい
第一楽章、第三楽章

「ジュノーム」は第二楽章が素晴らしくよく書けているため、よほど平凡な演奏でない限り、大抵は音楽の美しさが伝わってくることでしょう。しかし、第一楽章や第三楽章はそうはいきません…。ここはピアニストや指揮者の解釈、センスが大いに要求されるところで、ツボにはまれば作品の隠れた美しさや愉しさを引き出せるでしょうが、失敗すると退屈でつまらない演奏になりかねません…。

その点、リチャード・グード(ピアノ)、オルフェウス室内管弦楽団(Nonesuch)は自然なスタイルながら、曲の美しさを充分に堪能させてくれる演奏です。グードは表現の幅が広く、深い解釈をするのがモットーのピアニストですが、この曲ではモーツァルトらしい愉悦に溢れた響きが心地よく、一小節ごとに変わる表情も豊かで生き生きしています。
オルフェウス室内管弦楽団との息もピッタリで、特に第一楽章の中間部、ピアノとオケが言葉を交わすように展開するあたりは音楽を聴く喜びでいっぱいに満たされます。


有名な第二楽章の素晴らしさが際立っているのが内田光子(ピアノ)、ジェフリー・テイト指揮イギリス室内管弦楽団(DECCA)です。第二楽章はオケの出だしからして寂寥感が漂っているし、ピアノの音色も秋の深さと哀しみの情をひたすら伝えていきます。第一、第三楽章も安定感抜群で、内田のカデンツァも魅力いっぱいです。「ジュノーム」の美しさを再認識させてくれる名演奏と言っても過言ではありません。


2018年1月27日土曜日

ヘンデル 二重協奏曲第2番 ヘ長調 HWV.333










管楽器と弦楽器の響きが
ブレンドされた絶妙な味わい

作品のタイトルである二重協奏曲というのは一体どういう意味なのでしょう?

ネーミングからすると、分かるような分からないような……、きっと釈然としない方も多いのではないでしょうか。実はこれ、同じ2台の独奏楽器を使用しているという形態の協奏曲なのです。たとえばチェロ2台と、オーボエ2台で、あとは弦楽器という形式ですね…。「これじゃ、ますますイメージしにくいじゃないか」という方もいらっしゃるかもしれませんね。

おっと!? 曲のタイトルで揉めていても先には進みません…。それでは本題に入っていくことにしましょう♩ 
ヘンデルの二重協奏曲は3曲あって、そのどれもがオラトリオの幕間に演奏される音楽として作曲されています。

二重協奏曲はヘンデルならではの独特の響きと味わいがありますね。
それは水上の音楽や王宮の花火の音楽で聴かれる管楽器と弦楽器をうまくブレンドした響きといっていいでしょう。ファゴットやホルンが奏でるスケール雄大な響きが弦楽器の格調高く繊細な響きと相まって、絶妙な味わいを醸し出すのです!

中でも第2番は豊かなメロディやソロの魅力、多彩な曲調の変化があって、私が最も愛する作品です。これだけ音楽が充実していると、もはや間奏曲というカテゴリーに置くのは勿体ない作品ですね……。

実際、第三楽章のア・テンポ・ジュストは『メサイア』の第30曲の合唱曲「門よ、お前たちのかしらを上げよ」に転用されていて、その充実度が伺われます。

この第2番で特に魅力的なのは第6楽章ア・テンポ・オルディナリオでしょう。長調と短調を行き来する陰影に満ちたテーマをオーボエとホルンが巧みに歌い交わしながら、音楽に華を添えるのが印象的です。全体として何か大きいものに包み込まれるような安心感があり、ぐんぐんと音楽が拡がっていくのはヘンデルならではの魅力と言えるでしょう。

太陽の煌めきのように強いエネルギーを発散し、美しい情感が自然に湧き上がる第二楽章アレグロも見事です!


オリジナル楽器演奏の美感を
最大限に生かしたピノック

演奏はトレヴァー・ピノック指揮イングリッシュコンサート(アルヒーフ)が音楽の美しさをとことん堪能できる名演奏です。
これはオリジナル楽器演奏によくありがちなスッと流したような演奏ではありません。
まず楽器の音色、響きのバランスが抜群です。それぞれの楽器の織りなすハーモニーの美しさが極上ですし、しかも音楽の流れが軽快そのものなのです。

それだけではなく、音楽の本質をしっかりと捉えて、深い呼吸で旋律を歌わせているため、オリジナル楽器演奏の弱点でもある楽器の響きが淡泊になることがありません。特にホルンやオーボエのソロはセンス抜群で、弦楽器の響きと美しく溶けあう情感は最高ですし、至福の時を約束してくれることでしょう!



2018年1月20日土曜日

写真展『伝説の映画スターたち、オードリーなど』





Audrey Hepburn / Monte Carlo Baby, 1953
© Paramount Pictures Photo by Bildarchiv Peter W.Engelmeier / G.I.P.Tokyo



Anthony Pakins
© Photo by Xavier Lambours / G.I.P.Tokyo



映画が伝説だった時代の
スターたちの肖像

1月29日より、銀座4丁目のArt Gallery M84で『伝説の映画スターたち、オードリーなど』が開催されます。
かつて銀幕のスターたちが伝説の存在として君臨した映画黄金時代。映画が活況を呈し、俳優たちに人々の憧れと羨望の眼差しが向けられていた20世紀に数々の名ショットを残した写真家たちの作品を紹介する写真展です。
ポートレイトで有名なジョージ・ハーレル(George Hurrell)、クラレンス・シンクレア・ブル(Clarence Sinclair Bull)、ジェームス・ディーンをはじめとする何気ない日常のようすを撮影したデニス・ストック(Dennis Stock)等、選りすぐりの写真家の作品が揃います。
お買い物の後や休憩時間にでもふらっと立ち寄って、過ぎ去りし日の記憶に想いを馳せるのも悪くないかもしれませんね……。




【開催概要】
写真展 「伝説の映画スターたち、オードリーなど」
期 間  2018年1月29日(月)~3月17日(土) 休館日を除く
場 所  Art Gallery M84
住 所  東京都中央区銀座4-11-3 ウインド銀座ビル5階
T E L   03-3248-8454
時 間  10:30~20:00(最終日17:00まで)
休館日  日曜日
入場料  500円

2018年1月13日土曜日

ラヴェル ボレロ











メロディとリズムが
互いの良さを引き立てあう

皆様お久しぶりです。ご無沙汰しておりました……。
そして今さらながらですが、明けましておめでとうございます。今年も何卒よろしくお願いいたします。

さて、新年の幕開けを飾るにふさわしい作品として、私はラヴェルのボレロをとりあげたいと思います!
ボレロとは元々3分の4拍子によるスペインの舞曲の一種で、一定のリズムが絶えず繰り返されるテーマは底知れぬエネルギーと興奮を与えてくれますね。

ラヴェルの着眼点の良さは、このビクともしない強靭なリズムの音型をバックに個性的で色彩豊かなメロディをつけたことです。まさにベストマッチと言ったらいいかもしれません……。メロディとリズムがお互いの良さを最大限に引き立てあっていることが実感できるのではないでしょうか!
フィナーレに向かって次第にめくるめく興奮と熱狂を与える音楽の構成は巧みで見事です。これは管弦楽の名手ラヴェルだからこそ成せる業と言えるかもしれません。



マルティノンの
しなやかで格調高い名演

ボレロは誰が振ってもある程度の演奏が約束される音楽です。これはボレロが作品として良く書けていることもありますが、どのようなパフォーマンスにも左右されない受容度の高さも挙げられるでしょう。そこがラヴェルの音楽の柔軟な感性のあかしとも言えるでしょう。

あえて挙げるならば、ジャン・マルティノンがパリ管弦楽団を振った録音(Warner Classics)がしなやかで色彩豊かな音色が素晴らしく、繊細な情感が根底に息づいている管弦楽の見事さと併せてベストかもしれません。フィナーレに向かって段々と曲が高揚し、興奮のるつぼと化していく様子が格調高い表現の中に生きています!