一瞬の動きを
シャッターチャンスのように
見事に捉える
ドガほど色彩やタッチに洗練された品格を感じさせる画家は少ないかもしれません。彼もドミニク・アングルのような卓越したデッサン力の持ち主だったのでした。
ドガといえば、真っ先に連想されるのがバレリーナと競馬場の絵ではないでしょうか。
そのバレリーナの絵の代表格が「踊りの花形」です。おそらく美術の教科書やチラシやポストカード等、あらゆる媒体で目に触れる機会も多いし、ご存知の方も少なくないでしょう。
この絵の素晴らしいところは、バレリーナの最も美しいと思われる一瞬の動きをカメラのシャッターチャンスのように捉えていて、それが絵全体に躍動感を漲らせていることです!
しかも斜め上から見下ろしたバレリーナの姿態は、絵のポーズとして表現するのが、なかなか難しい位置にもかかわらず、しっかりと動きを捉えていますね……。構図の素晴らしさもありますが、それをこともなげにあっさり実現させているところに、ドガの並々ならないデッサン力と観察眼の鋭さを感じます。
光を意識した色彩やスピーディなタッチも冴えに冴えており、そのことが絵に華麗でリズミカルな流れを生み出しているのです。
また、もう一つの魅力としてあげなければならないのが、どことなく哀愁の影を漂わせているところでしょうか。色彩もタッチも洗練されているのですが、華やかな舞台の陰からはうっすらと寂寥感が伝わってきます……。スポットライトを浴びるバレリーナと舞台の裾に佇む人々との間には様々なドラマがありそうですね。そのコントラストが絵に映し出しされているような感じもするし、何とも興味深い表現です…。
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