2016年9月17日土曜日

ゴッホとゴーギャン展










切削琢磨しながら
最高の作品を生み出そうとした


 ゴッホとゴーギャン、画風も性格もまったく違う19世紀を代表する画家の二人‥‥‥。

 なぜこの二人がフランス・アルルの地で共同生活をしながら創作に励んだのかは今もって謎です。またいろいろ詮索してもあまり意味のないことなのかもしれません。
  ただ一つ言えるのはお互いに自分にはない世界を共有しつつ、切削琢磨しながら生涯最高の作品を生み出そうとしていたことでしょう。
 そんな二人を同時公開する展覧会が『ゴッホとゴーギャン展』(2016年10月8日~12月18日、東京都美術館)です。
 なにもかもが違う二人ですが、様々な角度から見ることで不思議と浮かび上がってくる何かがあるのかもしれません。
 


展覧会基本情報

会期    2016年10月8日(土)~12月18日(日)
会場    東京都美術館・企画棟 企画展示室
休室日   月曜日、10月11日(火)
      ※ただし、10月10日(月・祝)は開室
開室時間  9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開室  金曜日、10月22日(土)、11月2日(水)、3日(木・祝)、
      5日(土)は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
観覧料   前売券 | 一般 1,300円 / 大学生・専門学校生1,100円
       / 高校生 600円 / 65歳以上800円
      ※前売券等の詳細は特設WEBサイトへ
      当日券 | 一般 1,600円 / 大学生・専門学校生1,300円 
      / 高校生 800円 / 65歳以上1,000円
      団体券 | 一般 1,300円 / 大学生・専門学校生1,100円
       / 高校生 600円 / 65歳以上800円
      
      ※団体割引の対象は20名以上
      ※中学生以下は無料
      ※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳
      精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と
      その付添いの方(1名まで)は無料
      ※いずれも証明できるものをご持参ください
特設サイト http://www.g-g2016.com     

2016年9月8日木曜日

ヘンデル 組曲HWV426











日々の生活の中で吸収する
自然のエネルギー

 皆様は日々の生活の中で、自然の営みがもたらす恵みやその影響について関心を寄せられたことがありますでしょうか……。普段は気づかないかもしれませんが、それは私たちにとって確実に心の重要な部分を占めていて、知らず知らずに心の養分として吸収されていることは間違いないでしょう。

  たとえば、太陽が大地をくまなく照らすようすに無限の希望を感じたり、温かな陽射しや涼やかな風が心をなごませるように、ごく当たり前のように展開される自然の営みが私たちにとっては心の成長や発展、精神的な回復を促すきっかけになっていたりするのです。このことからも私たちの心を刺激する重要な要素が自然のエネルギーにあるといってもいいでしょう。
 私たちは自然が放つ汚れのない美しさや気高さ、愛らしさ、無限のインスピレーションを日々受けながら、それに感動し、感応しているのです。 


堅実なスタイルを持った
生命力に溢れた音楽

 ヘンデルの組曲HWV426をそうした自然の美しさや気高さに見立てるのは少々無理があるかもしれません。でも、さりげなくて自己主張しない音楽なのに、創造性豊かで包容力があるところは近しい何かを感じるのです。
 その音楽の魅力をひとことで言うと「堅実なスタイルを持った生命力に溢れた音楽」といってもいいでしょう。
 何がそんなに魅力的なのかというと、飾らないスタイルもそうですが、音楽に生成と発展の要素があり、さまざまなパートに永遠の余韻を感じさせる響きがあるところでしょう。なぜなのでしょうか? ヘンデルの音には不思議と輝きと生命力が宿っていますね……。

 プレリュードは単純明快な主題から音が積み重ねられると、音楽はどんどん発展し、雄大な世界が広がっていくのを感じます!
 特に見事なのがアルマンドとクーラントです。主題やメロディに少しも誇張はないのに、音楽が開始されると光を浴びて眠っていたあらゆるものが起き上がるように、音楽は美しく気高く彩られながら様々な表情を映し出していきます!
 HWV426はチェンバロの演奏が高貴で堅実なロココ調を感じさせていいのですが、ピアノの演奏で聴くと神秘的でエレガントな雰囲気が醸し出され、時代を超えた普遍的な音楽としてさらに作品の魅力が高められるような気がします。


ハイドシェックが成し遂げた
ピアノの名演

  この作品はいかにもチェンバロにふさわしい高雅な雰囲気が支配する音色と形式を持っています。そのため演奏も圧倒的にチェンバロ版が多く、ピアノは少数派かもしれません。しかしピアノでその構造や音色を丹念に掘り下げていくと稀に見る名演奏が実現したりします。
 エリック・ハイドシェックの演奏はその代表的な名盤と言ってもいいでしょう! もぎたての果実のようにフレッシュで、しかも語り口が上手く、フランス風の様式を用いたこの曲を実に魅力的に聴かせてくれます。

 バロック音楽だからといって、一般的な演奏様式に倣って弾かないのがハイドシェックの凄いところで、この録音もヘンデルの音楽の隠れた魅力を充分に引き出していますね。一音一音に感動と発見があり、その驚くべき感性の豊かさとしなやかな演奏スタイルには唖然とさせられます。

2016年9月1日木曜日

チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調 作品36(2)








『悲愴交響曲』と並ぶ
傑作中の傑作

 この曲については以前も書いたことがあります。しかし、第1楽章と第2楽章の素晴らしさについてどうしても書き足らない内容があったので、改めて投稿させていただきました。

 4番はチャイコフスキー後期3大交響曲の中でも6番『悲愴』と並ぶ傑作中の傑作です。おそらくベートーヴェン以降の交響曲をひもといても指折りの傑作だと言っていいのではないでしょうか。

 何といっても素晴らしいのは第1、第2楽章で、この二つの楽章だけでも4番を聴く価値が充分にあるといってもいいでしょう。
 残念なのは圧倒的な二つの楽章に対して、第3、第4楽章の内容が少々物足らないことです。この交響曲が『悲愴交響曲』ほど絶大な支持を得られないのは、もしかしたらそういうところにあるのかもしれません。それにしても前半と後半の2つの楽章では差がありすぎます。 チャイコフスキーは最初の2つの楽章に心を注ぎすぎて疲れてしまったのでしょうか……!?。

 そうかといって、4番をシューベルトの未完成交響曲のように2楽章で完結させるには到底無理があるでしょう。
 なぜなら、シューベルトの2楽章めはアンダンテで、単一楽章でも充分に曲が成り立っているのに対して、4番の2楽章めはアンダンティーノで明らかに次の楽章への予感を感じさせるからです。
  

4番のすべて
第1楽章、第2楽章

 とはいうものの、この交響曲の第1楽章、第2楽章はそれを補ってあまりある内容といえるでしょう。

 特に素晴らしいのが第1楽章です。 
 出だしの金管楽器のファンファーレが奏されると、そのドラマチックで重厚な響きからただならぬ空気感が伝わってきます! その直後の不安や哀しみ、苦悩が入り混じった第一主題も忘れがたい印象を残します。劇的で、文学的な香りさえ漂わせながら音楽は進行していきます…。

 しかしさらに素晴らしいのは展開部でしょう! たとえば、おどけたメロディによる舞曲は刹那的な喜びや虚しさを強く印象づけますし、運命的な警告を表す金管楽器の強奏や息の長い悲しみのパッセージは心を震わせます。
 とにかく音楽が多彩で緻密、あらゆる手法を駆使しながら、窮屈にならずに真実味にあふれた音楽と緊迫したドラマを展開していくのです。

 第2楽章のオーボエソロと弦楽器による哀愁を帯びたロシア民謡風の主題は、大変もの悲しく心に深く刻み込まれます。それは雪に埋もれた冬の荒野が目の前に広がるようで、何とも言えない情緒が漂います……。
 これに対して展開部では雪解けを待ち望む希望と憧れの感情が次第に高まり、頂点に達します。このコントラストは絶妙で、主題が生きてるからこそ、音楽の深い味わいが生まれたのでしょう。

 先ほど物足らないと書いた第3、第4楽章もひとつの独立した曲として捉えれば、これはこれで充分に魅力的です。
 第3楽章はバレエの間奏曲のようであり、第4楽章はサーカスのテーマ音楽のように華々しく力強く鳴り響きます。全体を通してみればどのように盛り上げていくかは指揮者の適性と力量に任されるといっていいかもしれません。


ムラヴィンスキーの
圧倒的な名演奏

 前回も申し上げたようにこの交響曲はムラヴィンスキー=レニングラードフィル(現サンクトペテルブルクフィル)の独壇場で、中でも作品のすべてともいえる第1楽章が素晴らしい仕上がりです。
 ムラヴィンスキーは最初の金管楽器のファンファーレから聴く者に戦慄を覚えさせます。そして、それに続く序奏のほの暗い哀愁に満ちた美しい弦楽器の音が聴く者の胸を痛く締めつけます。

 何という音楽性でしょうか! 20分にも及ぶ楽章ですが、長さをまったく感じさせず、その圧倒的な表現力に終始心を奪われっぱなしになってしまいます。多くの指揮者が聴衆を酔わせるためにオーバーアクションになったり、個性的な表現をしたり、技巧を凝らしたりするものです。
 しかし、この人はあくまでも自然体を貫き、抜群の音学センスに裏打ちされながら深遠で格調高い音楽を生み出しているのです。第1、第2楽章ではそれが最高の形で発揮されています。

 しかし、もちろんそれだけではありません。爆発するようなパッションがあり、音符の端々からは溢れるような抒情性を表出しているのです。第4楽章の超スピードで、思うがままにオーケストラの響きをコントロールしていく爽快感がたまりません。とにかく1度耳にしたら忘れられない強烈なインパクトを植えつけられる名演奏です。





2016年8月19日金曜日

ヘンデル 「アレクサンダーの饗宴」







親しみやすく
内容の濃いオード

 ヘンデルのオラトリオというと、劇的でスケールの大きい作品を連想しがちなのですが、「アレクサンダーの饗宴」はちょっと違います。元々この作品は通常のオラトリオではなく、頌歌(オード)として作曲されたようです。

 オードとはいうものの、そこはヘンデルのことですから単に襟を正した生真面目な曲を作るはずがありません。清澄で格調高い曲調を充分に保ちながらも、やりたいことをやりつくしているのです。親しみやすく覚えやすいアリアや合唱が連続して出てくるのもヘンデルならではですし、聴く者は自然にその音楽の懐に引き寄せられるともいえるでしょう…。
 合奏協奏曲第3番にも転用されている同名のタイトル「アレクサンダーの饗宴」を第2幕の前に置いたのも当時の聴衆を飽きさせないためのヘンデルの巧みな戦略だったのでしょう。何とこの合奏協奏曲は間奏曲としては珍しい3楽章形式になっており、ヘンデルがあらかじめ合奏協奏曲に転用するのを見込んで作られたと言えなくもないですね。


ヘンデルの音楽の多彩な魅力と
構成のうまさ

 この作品を通して聴いて改めて感じるのはヘンデルの音楽の多彩な魅力と構成のうまさです。序曲にしても一度聴いた限りでは単純明快な音楽かと思いきや……、実は非常にこなれていて自然な高揚感を演出する魅力作ですし、合唱にしても立体的で様々な表情を生み出します。アリアにしても間奏曲にしても音楽は終始変化に富んでいて、生き生きとしたリズムやメロディが弾けるのです。

 印象深いのは合唱の効果的な配置とアリアや伴奏等の型にはまらない奔放な魅力にあふれていることです。ヘンデルは声や楽器の響きの特徴・性質とか、全体を俯瞰する音楽的な構成力が際立って優れていたのでしょう!それはこの「アレクサンダーの饗宴」でも充分に生きているようです。

 特に印象深いのは前述の序曲と第一幕の栄光を現す合唱「The many rend the skies with loud applause」と微笑みに満ちたソプラノのアリア「With ravish'd ears」、第2幕フィナーレの合唱「Your voices tune」の大河の流れのような壮大な叙情詩です。


ガーディナーの独特のテンポと
音楽を聴かせる術


 これは当時ヘンデルのオラトリオを続々と演奏・録音していたガーディナーの貴重な記録と言っていいでしょう。テンポが比較的速く、リズムも切れ味鋭く、従来のヘンデル像とは大きくかけ離れた演奏で随分と話題になったものでした。

 とにかく聴かせ上手で、リズムはガーディナー独特のものなのですが、音楽の本質とぴたりとはまっているために違和感がありません。合奏協奏曲での独特のテンポとリズムはガーディナーだからこそ表現できたものでしょう。
 スタイリッシュでスマートな造型は新しい時代の幕開けを告げるにふさわしいものだったでしょうし、合唱の精緻でバランスのとれた美しさ、歌手たちのガーディナーの解釈に寄り添う表現も見事です!








2016年8月9日火曜日

ドビュッシー 子供の領分


















子供たちのピュアな感性と
大人が見つめる温かな眼差しが
融合された音楽
 ドビュッシーの作品としては比較的親しみやすく、人気が高いのが『子供の領分』です。
タイトルから想像できるように、子供たちのピュアな感性をテーマにしているのですが、大人が見つめる温かな眼差しがそこにプラスされていて、極めて詩情豊かな作品として仕上がっているのです。
 これはドビュッシーの卓越した感性だからこそ作り得た作品でしょうし、その創造性に富んだユニークな音楽は大人が愛する子供に聴かせる音楽絵本と言ってもいいでしょう。
 実はこの作品、ドビュッシーが初めて授かった娘(長女クロード・エマ)への想いを込めて書かれているのです。

日常の光景が
美しく変貌する瞬間
 まず、前奏なしでいきなり主題が開始される第1曲 「グラドゥス・アド・パルナッスム博士」は何と上機嫌でユーモアたっぷりなのでしょう! もちろん音楽は楽しいだけではありません。生き生きとしていて、曲が進むと美しい表情が次々と紡ぎ出されていきます。特に中間部の虹を想わせる音色は日常の光景が美しい輝きを放っていくかのようです。
 おどけたリズムとテーマの「象の子守歌」も童心を呼び覚ますのに充分ですし。可愛らしい音色が夢の世界を描き出す「人形ヘのセレナーデ」も絶品です。どなたもよくご存知「ゴリウォーグのケークウォーク」はどういうわけかテレビで使用されるときは「ジャポニズム」を扱ったり、「浮世絵と印象派」のようなアートと日本との接点を匂わせる趣旨の番組が多いのは何故なのでしょうか? たぶん、それだけ曲が異国情緒にあふれており、様式に固執しないドビュッシーの才気があふれているからなのかもしれません。
 しかし、この作品をより魅力的にしているのは第4曲の「雪は踊っている」と第5曲の「小さな羊飼い」でしょう。「雪は踊っている」は窓辺で降りしきる雪をじっとみつめている子供たちの様子を描いているのですが、雪が舞う動的なリズムとテーマが印象的です。次第に振り続ける雪は雪の精へと変貌し幻想的な雰囲気であたりを覆っていくのです。
 「小さな羊飼い」は幼い胸に秘められた短い詩のようです。切々と弾かれるピアノの陰影や1小節ごとの間合いが何ともいえない情感を醸しだし、愛おしさや懐かしさがじんわりと漂っていきます。

ハイドシェックとベロフ
クリエイティブな名演
 このピアノ曲は曲の性質上、演奏には少なからず夢を膨らます詩情豊かな感性や創造性が要求されます。たとえどんなにテクニックが優れ、演奏が立派でも四角四面の解釈はつまらないし、似合わないのです。
 その点で優れているのはエリック・ハイドシェックとミシェル・ベロフでしょう。
ハイドシェックとベロフに共通するのはとことん音楽を愛し、愉しんで弾いてるところですね。
 ハイドシェック(キングレコード)の演奏は型にはまらない変幻自在なスタイルをとっているのですが、音色に柔らかさがあるのと音符の読みが深いため、各曲ともに新鮮な驚きと感動があります。聴く人の心に発見や様々なイメージを呼び起こす魔法のような名演奏と言えるかもしれません。
 ベロフの演奏(DENON)は音色が豊かで、リズムは弾み、造型はキリッとしていて、フレージングも自然! どこをとっても音楽性満点で、特別なことはしていないはずなのにドビュッシーを聴く喜ぶを最大限に与えてくれます。最初に「子供の領分」を聴くならベロフは絶対的にお勧めですね!

2016年7月23日土曜日

ドビュッシー ベルガマスク組曲(2)

















ドビュッシーでしか作れない
透明なハーモニー、
色彩のニュアンス
  ドビュッシーの初期の名曲といえば、何と言っても『ベルガマスク組曲』を外すわけにはいきません……。この作品の素晴らしいところは何度聴いても飽きない豊かなポエジーと自然な情感が音楽として息づいているところでしょう。
 もちろん、ベートーヴェンのような精神的な音のドラマとは無縁ですし、モーツァルトのような流麗なソナタ形式で書かれているわけでもありません。
 また、『ベルガマスク組曲』はドビュッシーが音楽スタイルを確立する以前の作品ということで、「先人たちや大作曲家からの影響が濃い作品だ」と言われたり、後年の傑作『前奏曲』や『映像』、『版画』と比べると軽視される傾向があるように思います。
 しかし、その音楽はまぎれもなくドビュッシーでしか作れないもので、透明なハーモニー、色彩的なニュアンスや洗練された音色の効果は抜群で、聴けば聴くほどに味わいが増すのも事実なのです。

さまざまな情感を映し出す
詩情豊かな音楽
 まずプレリュードの自由でとらわれのない旋律が生み出す光と影のコントラスト、そして透明な色彩のハーモニー!何という詩的な情感の美しさであり、感覚的な冴えでしょうか。
 第2楽章メヌエットの洗練されたリズムやメロディは優しく頬を撫でる風のように心地よく、聴いているうちに懐かしい子守歌のようにさえ響いてくるではありませんか……。
 有名な第3楽章「月の光」は優雅で繊細、そして哀しみを堪えて綴られるメロディにひたひたと切なさがつのってきます。
 第4楽章パスピエも神秘的な色調の音に隠れる何とも言えないエレガントな旋律の魅力に心惹かれます。そして、全編を通じて主題や展開部のつなぎの音のさり気ないセンスの良さがますますイメージを広げてくれるのです。

フランス人ピアニストが
奏でる音色の魅力
 演奏が素晴らしいのはミシェル・ベロフ(DENON)が収録した録音です。まずプレリュードから音色の柔らかさと自然なフレージングに惹きつけられます。それは全編に渡って言えることで、センス満点の表現と無理なく作品の本質を引き出した音楽性は見事です。
 パスカル・ロジェ(Onyx)の演奏もほぼ同様の事が言えるのですが、ベロフ以上にフランス的なエスプリが効いています。表現のメリハリを求める方にとってはやや物足りなく感じるかもしれませんが、フランス人作曲家ドビュッシーを聴きたい方にとってはファーストチョイスになるのでしょうか……。
 心ゆくまでメロディや雰囲気を味わいたい方にとってはモニク・アース盤(エラート)がいいかもしれません。決してあせらず急がず、魅惑のメロディを女性的なデリカシーと格調高い表現で豊かに謳い上げています。

2016年7月12日火曜日

「メアリー・カサット展」





《眠たい子どもを沐浴させる母親》
1880年 油彩・カンヴァス、ロサンゼルス郡立美術館蔵





日本で35年ぶりに開催される
懐かしい展覧会

 この人の展覧会が日本で開催されるのは35年ぶりだそうですね。
 私はその35年前の展覧会をしっかりと覚えています。実をいうと、カサットという女流画家を知ったのはこの時が初めてでした。
 東京・新宿の伊勢丹デパートの特設会場で開催されたのですが、テレビや新聞等の宣伝効果もあったのか大変な盛況ぶりでした。特に女性でしか描けないような優しさと柔和な表情の母子像は絶品と言えるでしょう。描画スタイルが変わろうとも描かれる絵に嫌味がなく、多くの人に愛されるのは生来の愛情豊かで気品あふれる人柄が作風として生きているからなのかもしれません。
 あれから35年、あの時と比べるとこの人の展覧会をめぐる周囲はずっと静かですが、印象派におけるカサットの存在は少しずつ大きくなっているような気がします。
 この機会にメアリー・カサットという人が画家としてだけでなく、女性として、母として、社会人として何を思い、どのように考えてきたのかを100点あまりの作品を鑑賞しながら、その世界に想いを馳せるのも悪くないでしょうし、味わい深いことかもしれませんね……。


【開催概要】

■横浜美術館
住  所:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
開催期間:2016年6月25日(土)~2016年9月11日(日)
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで。
休館日 :木曜日 ※8/11を除く。
入場料 :一般1,600円(1,400円)、大学・高校生 1,100円(900円)、
    中学生 600円(400円)、小学生以下無料
    ※( )内は前売り/20名以上の団体料金(要事前予約)

■京都国立近代美術館
住  所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町
開催期間:2016年9月27日(火)~2016年12月4日(日)
開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで。
休館日 :月曜日 ※ただし、10/10(月・祝)は開館。
入場料 :一般1,500円(1,300円)、大学生 1,100円(900円)、
              高校生 600円(400円)
    ※( )内は前売り/20名以上の団体料金
    ※中学生以下、心身に障がいのある方とその付添者1名は無料(要証明)
    ※本展の入場券でコレクション展も観覧可能

【問い合わせ先】
横浜美術館     TEL:045-221-0300
京都国立近代美術館 TEL:075-761-4411