2015年6月13日土曜日

エルガー ヴァイオリン協奏曲










隠れた名曲
エルガーのヴァイオリン協奏曲

 エルガーは19世紀後半から20世紀前半に活躍したイギリスの作曲家ですが、一般的によく知られているのは「愛の挨拶」や「威風堂々」などの比較的コンパクトにまとまった作品と言えるでしょう。その一方で2曲の交響曲やチェロ協奏曲、オラトリオ「ゲロンティアスの夢」などの熟成された音楽の充実度や魅力は格別で、すでに大作曲家の領域にあったと言っても過言ではありません。

 ヴァイオリン協奏曲はそのようなエルガー特有の雄弁な管弦楽と繊細な表情とが成熟した味わいとひとつとなった魅力あふれる傑作です。
 第1楽章の哀愁に満ちた濃厚なロマンは絶えず自分の内面を見つめる深さがあり、忘れられない印象を届けてくれます。第2楽章は牧歌的な主題を中心に繰り広げられる地味で渋い音楽なのですが、ヴァイオリンが奏でる懐かしい情緒と崇高な祈りが次第に心を満たしていきます。第3楽章の毅然とした管弦楽の響きとヴァイオリンの音色がぶつかりあう表情がアグレッシブな感動を巻き起こしていく様はどうでしょう!

 しかし、名曲チェロ協奏曲に似た曲調を持ち、充実した内容を誇るこの作品がチェロ協奏曲に比べるといまだにマイナーなイメージが拭えないのは何故なのでしょうか? それは3楽章構成の協奏曲としては異例の長さを持つ作品のため(通して演奏すると約45~50分位)、この作品に挑戦するヴァイオリニストが少なかったことが挙げられるでしょう。また、第1楽章に多々見られるように意外に超絶的な技巧を要する箇所が多いため、集中力を切らさず演奏するのが至難の業なのです。
 

ケネディとラトルが
魅せた名演奏!

 この作品は上記のような理由のため意外にレコーディングが少なく、往年のヴァイオリニストでもハイフェッツやメニューイン、イダ・ヘンデル以外にはめぼしい演奏がありませんでした。

 しかし、1997年に録音されたケネディ(ヴァイオリン)、サイモン・ラトル指揮バーミンガム市立交響楽団(EMI)の演奏はこれまでの不満を一気に吹き飛ばすような名演奏です。特にケネディのヴァイオリンの表情はこの曲にピッタリで、エルガーが表現しようとした感情の高まりや繊細な表情、ロマンチックな情感等があふれるように表現されています。ラトルの指揮もヴァイオリンをしっかりとサポートしつつエルガーの音楽を雄弁に打ち出しています!

 ケネディはこの曲を得意にしているらしく、1985年にもヴァーノン・ハンドリー指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(EMI)と録音しています。こちらのほうもなかなかの名演奏ですが、やはり表現の幅が一枚も二枚も深みを増し、好サポートを得た1997年盤こそ最高の名演奏といえるでしょう!




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