2015年6月24日水曜日

フェルメール 「天文学者」









職人的な絵の完成度が
醸し出す感動

 今年開催されているルーブル美術館展(東京展は終了。現在、京都展を開催中~9月27日)でレンブラントの絵と同様に大きな話題を提供しているのが、ポスターやチラシにも使用されているフェルメールの「天文学者lでしょう。
 この絵は一時ナチスが所有していたという暗い過去もあり、そういった面でも話題を呼びましたが、絵は掛け値なしに名作中の名作です。

 フェルメールの絵を引き合いに出す時、必ずといっていいほど比較されるのが同じ時代、同じオランダ出身の画家として活躍したレンブラントでしょう。
 今さら言うまでもなく、レンブラント、フェルメール共に美術史に大きな足跡を残した巨匠ですが、二人の絵を見ると感動の質はかなり違います。何が違うのかというとレンブラントの絵が総じて精神的な広がりからくる感動であるのに比べ、フェルメールの絵は職人的な絵の完成度の高さが醸し出す感動なのです。

 フェルメールのそのような特徴はこの「天文学者」にも顕著に現れています。これはただただ上手いと唸るしかない絵といってもいいでしょう。絵全体を覆う柔らかい光や落ちついた色調に魅せられますし、静寂感漂う室内の空気は一体何と表現したらいいのでしょうか! まるで時の流れが止まってしまったかのような感覚が伝わってくるではありませんか……。

 それはフェルメール自身が心のフィルターでキャッチした原像を心の眼に忠実に描いた結果なのであり、モチーフの本質を深く認識することによって生まれる時間と空間の一致点でもあるのです。



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