2014年10月7日火曜日

「コンサートホール原盤」復刻シリーズ カール・シューリヒト/モーツァルト交響曲集














過去の名盤をリニューアル販売する
路線の定着

 現在、新譜のクラシックCD売り上げが軒並み頭打ち状態(これは決してクラシックに限ったことではありません…)ですが、これに対する打開策として各レーベルでは過去の名盤をリニューアルして販売するという路線が定着しているようですね。

 昔からのクラシックファンとしてはうれしい限りなのですが、問題は中身です。せっかく名盤を再発売しても録音が良くないと興ざめです。改めて出すのなら、何らかのメリットがなければ出す意味はなくなってしまうでしょう。おそらく多くのファンが期待するのは低価格実現でしょうが、それ以上にファンが望むのはやはり録音でしょう。



デジタル至上主義時代が
終わりを告げる

 たとえば、LP時代にリリースされ録音も良かった名盤が、CDでリリースされたと同時に飛びついて購入したら、どうも様子が違っていたという話をよく耳にします。
 音がキンキンするとか、まろやかさがないとか深みがないとかそのような不満が噴出していたのを覚えています。つまり音が物理的にいい悪いというより、大切な何かが聴こえなくなってしまったということなのですね……。

 どんなにデジタル信号で音を処理するといっても、それを聴くのは生身の人間です。豊かな感性を持ち、心の音を求め続ける敏感な人間の耳を癒すには限界があったということなのでしょう。

 デジタル至上主義といわれた時代もようやく終わり、アナログとの幸福な融合がなされなければ、音楽文化が廃れてしまうと心ある人たちは感づいてきたのでしょう。制作スタッフの方々の努力により、最近リリースされた過去の名盤は以前のCD録音をはるかに凌駕し、初出のLPの音を思わせる素晴らしい録音が増えてきたことは確かですね…。



思いもよらなかった
シューリヒトの名演の復活!

 タワーレコードのサイトの解説では「今回の再発においては、日本コロムビア所蔵のアナログ・マスターより、新規でCDマスターを制作しました。アナログ・マスター・テープから入念にデジタル化(192kHz/24bit)し、さらに綿密なリマスタリングを施した上で発売いたします」とありますが、まさにその言葉どおり並々ならない音へのこだわりが素晴らしい音質のCDとなって蘇っていました。

 今回販売されたシューリヒトのモーツァルト交響曲集では38番「プラハ」(DENON)が様々なところで名演と評されて、例外的にCDショップでも購入可能でした。しかし、シューリヒトのモーツァルト交響曲集の魅力はそれだけにとどまりません。特にモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」は以前からシューリヒトのコンサートホール盤でしか味わえない独特の良さがあったために、今回このような形で音質が大きくアップして復刻されたのはうれしい限りです! 

 「ジュピター」の第4楽章フィナーレは晴朗な輝かしい曲でフーガの見事さはもちろんですが、驚くほど深い意味が盛られた音楽ですね。喜びや悲しみ、苦悩、希望等のさまざまな感情が洪水のように押しよせ、一音一音に深い意味が込められていくのですが、音楽は停滞したり冗長することなく、宇宙意思によって深化され、純化された音楽となっているのです。こんなに美しく澄みきった境地を表現した音楽が他にあるでしょうか……。

 シューリヒト盤はその音楽の本質を突いた素晴らしい名演奏と言っていいと思います。派手さは一切ないものの、楽器の響きにシューリヒトの息づかいがはっきりと伝わり、豊かな人間味を伴った音色やフレージング、高貴で厳しい音楽となって現れてくるのです。
  その他、「プラハ」はもちろん、「リンツ」、40番もシューリヒトでしか実現不可能な聴く価値が大いにある名演奏です!



【CD曲目】
モーツァルト:
DISC1
1.
交響曲 36 ハ長調 K.425《リンツ》
2.
交響曲 38 ニ長調 K.504《プラハ》

DISC2
3.
交響曲 40 ト短調 K.550
4.
交響曲 41 ハ長調 K.551《ジュピター》

【演奏】
パリ・オペラ座管弦楽団
カール・シューリヒト(指揮)

【録音】
1961
11(1)19636(2)、パリ
オリジナル記載無し(3,4) [19646月、パリ]
 


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